ええ、1974年型のダッジ・チャージャーSE外側だけはね中身は、別物に交換しているわエンジンも、足回りもごっそりとね
関さんは、自慢げに微笑む
姉妹車のクライスラー・コルドバとどっちを買うか迷ったんだけれどこの車、昔のアメリカの有名なアクション映画に出て来るのよそれで、こっちにしたの
へえこんな、でっかい車でカー・アクションとか、迫力ありそうですね
スティーブ・マックィーンとか知らないでしょ
いいのよ、昔のスターだからマックィーンのブリットっていう映画で主人公が、初代のマスタングでこの車を追っ掛けるシーンがあるのよ追われる方だけれど、何か印象が強くて、気に入ったのよあたしは、マスタングも持っているけれど2代目のマッハ1だからしかも、レモンイエローに黒ストライプのエレノアカラーにしているから、今日みたいな場には乗ってこられないわそれにマッハ1の方は、中身もオリジナルのまんまだし
今度、実車を見せてあげるわマックィーンの映画も、ディスクを持っているから、一緒に観ましょう
そこまで言って関さんは、赤面する
あ別に二人きりでって、そういう意味じゃ無いわよ他の子も、一緒でいいから
あ、はい判りました
オレなんかと、二人きりで映画を観たって面白く無いもんな
とにかく乗って
関さんは、運転席に乗り込む
オレは、助手席に
いえ、後部座席に隠れてて毛布があるでしょ、それ被ってて
わたくしが、あなたを連れ出したところを見られたくないのここは、警備員の配置で駐車場内の死角になっているポイントだから特に、今は閣下や香月家の皆様の移動準備で制服組の人たちは、そっちにかかり切りになっているわだから、わたくしの車に、あなたが乗ったことを確認できる人はいないのよでも、駐車場の出口のゲートには、当然、警備員が立っているから
ああ、ゲートから葬祭場の外に出るまでは隠れていた方がいいのか
オレは、助手席のシートを倒して、後部座席へ
頭から毛布を被る
その上に、関さんが適当に上着なんかを被せてカムフラージュする
いいわね出るわよ
エンジンが点火される
ああ、確かに昔の車のエンジンじゃない
振動とかが、そんなに無いし音もでかくない
あーん、やっぱりアメ車は荒々しいエンジンじゃないとこういう温和しいのは、つまんないんだけどねでも、オフィシャルなお仕事用に、一台はこういう車が無いと困るし
車を始動させながら関さんは言う
まあ、ベンツとか日本車でも、レクサスなんかでもいいんだけれどね本当はでね、嫌なのよあたしだからって、わざわざ古いアメ車を大改造して乗るってのは、どうかしているって自分でも判っているんだけど
自嘲気味に、関さんは呟く
でも、そういう拘りが、関さんらしいですよ
毛布の下から、オレは言った
そうありがとう
黒塗り1973年型ダッジ・チャージャーSE(改)は広い駐車場内を抜けて、ゲートに到着する
ご苦労様次のポイントに、先乗りするわ閣下には、大徳さんと張本さんが付いていますから
了解ですっ
関さんはジッちゃんの専任警護人の1人だ
香月セキュリティ・サービスのトップ・エリートの中でも一番、顔が知られている
ゲートの警備員は車内のチェックなどせず、顔パスで通してくれる
ちょっと待っててね尾行を確認するから
外の道に出ると関さんが言った
3分ぐらい、オレは毛布の下に隠れたまま
関さんは、何度か車を左折させる
うん尾行車は、無しね
関さんが、呟く
浅見さん、やっぱりデスクワークの人なのかしら想像力が足りていないのかそれとも、まだ制服組の人たちを掌握し切れていなくて、わたくしを尾行者する人員が割けないのかああ、もう出て来て良いわよ
オレは、毛布から這い出る
そこに紙袋があるでしょ中に入っている服に着替えて
紙袋ってああ、この高島屋のか
これ香月セキュリティ・サービスの制服ですか
ええでも、衿が黄色いでしょそれ通常の警備部の制服じゃ無くって、トップ・エリートのアシスタント用の制服なの
トップ・エリートは、個人アシスタントを付けることができるから君は、今からあたしの個人アシスタントになるのよ
そういう芝居をするんですか
いいえ、谷沢チーフに申請書も出してあるわもっとも、メールじゃなくって、今朝、本社に書類で提出してきたからチーフが申請書を見るのは、夕方以降になるでしょうけれど
谷沢チーフはジッちゃんの警護があるから、今日は直接、葬儀会場に入っている
こんなの別に、急ぐ必要の無い案件だし、谷沢チーフの秘書さんが連絡してくることもないわそれに、トップ・エリートの警護人が個人アシスタントを持つことは、よくあることだしね
バック・ミラー越しに、関さんはニッと笑う
だから、わたくしがその制服を着たあなたを連れていても谷沢チーフには、通知済みですって言い切れるわけ
申請書類を見ていないのだから、まだ知らないし認可してくれるかどうか、判らないけれど
とりあえず、火葬場の警備を正面突破することはできる
谷沢チーフは、当然、閣下たちと同じ車列で移動してくるからあたしたちは、先に、火葬場に潜り込まないといけないわまあ、向こうは車数台とバス2台に分乗してだからスピードも出せないでしょうし現場の警備員たちも、閣下たちの方に注目しているから、わたくしが見知らぬ個人アシスタントを連れて来たことなんて、チーフに一々報告しないわよ
ていうか、これは新警備部長の浅見さんの仕事だし今回の葬儀の警備は、浅見さんの新部長としての初仕事でしょだから、閣下たちに直接危険が及ばないような案件は、今回は、全部、浅見さんに任せているはずよそれで、後でチェックして浅見さんの適性を確認するチーフは、そういう人だから
オレは、シートの影で着替えながら聞いている
浅見さん警備一筋の人じゃないそうですね
ええ、ちょっと異色の経歴よねでも、本質的には、前の山岡さんと変わらないわよ谷沢チーフは、香月セキュリティ・サービスの警備部門のトップは、真面目でお堅いタイプの人の方がいいって思っているから
それはやっぱり、工藤さんたちが、スチャラカだからですか
オレは、寧の言葉を思い出して言った
そうねまあ、制服組は会社の顔だから、顧客の上流階級の人たちに受けの良さそうな手堅い雰囲気の人の方が良いのよそういう意味でもタイプは違うけれど、山岡さんと浅見さんは同じよ根っからの警備畑エリート男性と高学歴、政治通エリート女子でしょ名家の人たちには受けが良さそうって意味では
ていうか谷沢さん、どうせフォローは自分がするから、浅見さんでいけるって踏んだんでしょうね参ったわね