女性からの雪乃の評価はいつも低い
あのさあ
あなたまだ何人か、女の子を抱え込む余裕はある
まあ、実際にアニエスと瑠璃子は抱え込むんだし
はい、大丈夫です
そう、判ったわ
嬉しそうに、関さんは言った
一人予約しておいて
ちょっと寂しがりやのお姉さんが1人いるのよ予約しておいて、そんなに長くは待たせないから
誰のことを、言っているんだろう
あなたと二人きりで話せて、本当に良かったわ
本当に、あなたって真面目で、一生懸命で、優しくて
ルームミラーの中の眼が、オレに微笑む
そして可愛いわ
土曜日なのに朝から、父が具合が悪いと
動脈瘤の手術をした辺りを抑えているので、心配となり
氷雨の中、病院へ付き添う
が病院まで着くと、ケロリとしている
どうも、普通に胃腸の具合が悪かっただけらしい
帰りのバスの中で
おい、明日の午前中に新しくなった東京駅の写真を撮りに行きたいから、付き合ってくれ
年賀状に使うんだ
まだ年賀状やっていなかったのか
元気なのか、元気じゃ無いのかよく判らない
392.はたらく関さん
見えてきたわあそこよ
オレたちを乗せた車が、火葬場に近付く
でかい煙突はない
最近は、煙が出ないような仕組みになっているのよ
お葬式の会場の方は、セレブ専用の大きな施設だったから、香月家で丸まる借り切ることができたけれど火葬場の方は、そうはいかないから当然、他のお家の方もお使いになるし
うん、火葬場の貸し切りは無理だな
それでも、施設の4分の1は借り切ったわそのラインで、香月セキュリティ・サービスの私服警備員を配置しているはずよ
私服
他の人たちも使っている公共施設だから勝手に、制服の警備員を配置するわけにはいかないでしょう
施設には常駐の警備員も居るんだろうし
別会社の制服着た警備員が敷地内をうろついていたら他の家の人が、混乱する
だからこの火葬場が、今日の警備の中では一番の問題箇所なの
私服の警備員で、香月家の借りている場所だけ完全に封鎖するのは難しいものね他の家の人が、封鎖区域内に入り込もうとしてもあたしたちには食い止める権限は無いでしょ向こうのトイレをどうしても使いたいって言われたら、どうしようもないもの
なるほどいかつい制服姿での威圧はできないし
公共施設の中である以上、利用者の1人である香月家が、他の利用者に強制することは許されない
廊下部分までが共有スペースだからね本当なら、借りているお部屋の前だけで警護するしかないんだけれどでも、それじゃあ襲撃を受けた時には、間に合わないでしょ
襲撃
爆弾テロとか重火器で武装してくるとかこっちは、他の利用者の荷物検査なんてできないんだから閣下の居る部屋の前まで侵入されたら、防ぎようがないわ
じゃあどうするんです
一応、敷地と館内には、爆発物探知機を担いだ私服警備員に歩き回らせているわトイレなんかも、誰かが使った度にチェックね大きな荷物を持っている人は、老若男女構わず、マンツーマンで追うし地道にやっていくしかないのよこういうところの要人警護は
まあねもうちょっと、時間的に余裕があれば、色々対策を講じるんだけれど今回は、亡くなってすぐにお葬式だから事前準備は何もできていないわ
一昨日というか、昨日の未明に、瑠璃子の父親が死ぬことは誰も予想していなかったわけだし
ジッちゃんと、谷沢チーフを除いては
でも、香月セキュリティ・サービスが要人警護の会社だからこういうケースは、そんなに珍しいことでもないのよ仕切りが新任警備部長だっていうことだけが心配だけれど
浅見さんの力は、未知数だもんな
車が、斎場の駐車場に入る
さっきの葬祭場と違って、警備員の居るチェック・ゲートは無い
その代わり、黒い服の男たちが何人もたむろしている
肩に大きな機械を担いでいるのが爆発物探知班か
ってことはオレ、こんな格好していていいんですか
オレは今衿が黄色の、香月セキュリティ・サービスの制服を着ている
トップ・エリートのアシスタント用の服だって言うけれど
ああ、大丈夫よあなたが着ているんだもの制帽を被るのを止めましょうね制帽無しなら、一般の人たちはただのコスプレにしか見えないわよ
関さんは笑った
コスプレは言い過ぎだけれどあなた自身は、どう見ても普通の高校生なんだから、ちょっと変わった学校の制服だなぐらいにしか、廻りの人は思わないでしょうし
そそうだろうか
そのアシスタント用の制服は、階級章とか部隊章が付いてないから、特にね
確かに、飾りが無い分警備員の制服らしさは半減しているけれど
でも、衿が黄色だしなあ
最近は、突飛な制服の高校も多いから、平気よ
関さんは、平然とそう言う
むしろ、その制服はここに居る香月セキュリティ・サービスの人たちに、あなたのことを認識させるためのものだから堂々としていてあ、そうだ
関さんは、車のダッシュボードから、太い黒縁の眼鏡を取り出す
これ掛けてて少しは、理知的に見えるでしょうから
ついでに、オレの髪の毛を七三に分けた
オッケー、行きましょう
オレたちは、車から降りる
早速、体格の良い黒服の男がやって来る
ご苦労様先乗りで来たわ
香月セキュリティ・サービスの中では、誰もが顔を知っている関さんだ
ここまでは、問題無い
了解です警備部・場外担当西3班のリーダーの関口ですそちらは
案の定男は、オレを見て怪訝な顔をする
それは、あなたが気にすることでは無いと思うわよ
し、失礼致しました
トップ・エリートの権限は、一般の警備員よりも遥かに高いらしい
香月セキュリティ・サービスの制服を着せて連れ歩いているということだけで関さんは、オレの存在を現場の警備員たちに認めさせる
閣下の移動は順調何分後の到着になるかしら
葬祭場の出発が、25分遅れだそうです
あら随分、掛かったのね
車列の形成に、予想よりも時間が掛かったそうです
そうしょうがないわ浅見さん、初仕事だし
ああいう場所で、閣下やみすず様たちをお車に乗せる時は特に注意しなくてはいけないのよこれまであった要人の暗殺事件でも、車の乗り降りの瞬間を狙ったケースはとても多いから覚えておいてね
まるで講義するように、オレに語る関さん
それで関口警備員にオレを、トップ・エリート候補生か何かと思わせる作戦らしい
車列もね閣下のお車を守る様に組まないといけないし巧い人なら、最初から車列が組みやすいように、初めから護衛車を配置しておくんだけれどさっき見た感じでは、浅見さんは指示していなかったみたいね後で、谷沢チーフから大目玉を食らうことになると思うわ