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だから、谷沢チーフが閣下のすぐ後ろに入っていらっしゃるのよ本当だったら、今日の警備は浅見さんに任せているんだからチーフは直援警護じゃなくって、今、わたくしが立っている辺りから、全体を見ていて下さるべきなのよ

うん現場の最前線でなく、一歩退いて、状況を監視するのが谷沢チーフの本来の立ち位置だろう

そうですね、谷沢さんと浅見さんの居場所が逆なんですね

本当の現場責任者の浅見さんが、ジッちゃんたちの行列を見下ろす位置に居て

浅見さんの仕事を監視するだけのはずの谷沢さんが、ジッちゃんのすぐ脇を守っている

違うわ浅見さんみたいに閣下たちよりも高い場所に居るのは、大問題なの全体監視をするなら今、あたしが居る辺り警護対象者よりも低い場所からよ

それが要人警護の鉄則よ警備の人間が、守るべき人たちよりも目立ってしまってどうするのよ

関さんの言葉を聞いて、オレはもう一度それぞれの位置を確認する

確かに、浅見さんの位置だと、浅見さんばかりが、よく目立つ

無線機で話したり身振り手振りで、部下の黒服警備員たちに指示を出している浅見さんは誰がみても、この場のリーダーだ

一方関さんとオレの居る場所は

ジッちゃんたちの行列からは、離れているけれど行列を取り囲む、他の黒服警備員たちの配置の中に、自然に紛れていた

誰が警備のトップかなんて警備員だけが、判っていればいいのよなのに、あの人、わざと目立とうとしているから

あの人は閣下や香月グループの方たちに、自分の売り込みをしている最中だからよ

浅見さんの目的は有力者と知り合って、将来、自分が政治家として立候補する時の後援者になって貰うことだ

全然警護には向かない人なんですね

そうなのよどうして、あんな人を谷沢チーフが抜擢したのかまさか、ここまで向いていない人だとは思わなかったわ

谷沢チーフの眼が、曇っていたってことなんだろうか

そう言えば、関さん専任警護人なのに、ここに居ていいんですか

本来なら大徳さんや張本さんと一緒に、ジッちゃんの側に居なくてはいけないはずだ

さっき外されたのよ

外された

あたしがガードに入るとあなたたちに有利になるだろうからって

オレたち黒い森に

谷沢チーフもあなたたちが、何か仕掛けて来るとしたら、このポイントだって判ってらっしゃるのよあたしが、あなたたち側に付いていることもね

マルゴさんが何か仕掛けて来た時に瑠璃子のすぐ横に、関さんがいたら

誘拐はスムーズに行える

だからこの場は、見ているだけにしろって

その代わり浅見さんの手伝いもしないけどね

浅見さんの手伝いをしないということは

オレたちの瑠璃子の誘拐を黙って見過ごしてくれるということだ

オレは、みんなの位置を確認する

ジッちゃんの脇の美子さん

後ろの瑠璃子の様子を見ようと、時々振り返っている

しかし、瑠璃子と美子さんとの間には、何人もの人が居る

距離的にも離れているし何より、ジッちゃんが美子さんに瑠璃子とのコミュニケーションを禁じている

そんな瑠璃子を、みすずが抱えるように歩いている

廻りから見れば、父を失って傷心状態の従妹を、みすずが支えているようにしか見えないだろう

その後ろの美智

美智は、どんなに離れていてもオレの居場所は判るらしい

一度だけ、眼が合った

それで、あいつの心は判った

何が起きても、すぐに対応できるように準備している

それから寧は、どこだ

寧はさっきの警備員から離れて、まるで野次馬のように、オレたちの行列を眺めていた

自然な感じで

あ、オレを見てニコッと微笑む

それで、オレも覚悟を決める

ここが正念場であることは、間違いない

さてここが、ルビコン川よ

行列の先頭が通りを渡ろうとする

ここは火葬場の前閑散としいる

車の通りなんて、全然ない

信号も横断歩道も無いから香月セキュリティ・サービスの警備員が、ガードする形で行列が車道を横切る

あたしならこのタイミングを外さないわ

行列が車道に出る

ちょうどその時

来たみたいね

オレは、関さんが見ている方向に視線を向ける

バス

火葬場の駐車場から大型バスが出て来る

あれって

さっき、香月家の皆さんを乗せてきたバスよ

ああ、告別式の会場からここまでの移動に使った

精進落としのお食事会が終わった後また、皆さんを運ぶことになっているから、あっちの駐車場から、レストランの駐車場の方に移動するのは予定通りよただ

閣下の移動中に、行うべき作業ではないけれどね

全警備員がジッちゃんの移動に集中している時にわざわざ、バスを移動させたりするだろうか

でも、もう火葬場には戻らないわけだからこのタイミングで、バスがレストランの方に移動するのはおかしなことではないのよ

うん、荼毘も法要も終わっている

もう、火葬場の利用者ではないのだからいつまでも、火葬場の駐車場にバスを止めておくのは、施設側に対して迷惑だろう

次に利用する、レストランの方へ移動させるのは変ではない

ここで、どう判断するかそれが、浅見さんの適性検査になるわね

浅見新部長は

あ、気にしていない

自分たちと関係の無いバスなら警戒するんでしょうけれどあのバスも、香月セキュリティ・サービスが保有しているバスなの運転手も、当然、身内の警備員だから担当者が、自発的にやっているんだと判断したみたいね

それでも黒服の警備員の何人かが、バスを気にしている

様子を見てこようかと、警護の配置から離れようとする人もいたが

浅見さんが、無線に何か叫んでいる

すぐに、乱れた隊列は元通りになる

今は閣下の警護列が道を渡ることを最優先にするから、動くなって指令しているわ

関さんは無線機のイヤホンをしている

浅見さんの指示を、リアルタイムで聞いている

誰か、予備の人員をバスの方へ行かせましたか

それもしていないわ閣下が道を渡って、向こうのレストランの中に入ってから、確認すれば良いと思っているんでしょ

それでは遅い

なぜなら駐車場から車道へ出た観光バスは

大きくターンをして

オレたちの方へ向かって来るから

どうして、こっちに来る

警備員たちが、声を上げる

バスは、ブワッとスピードを上げる

急いで、全員、道を渡らせなさいっ

浅見さんが、絶叫する

無理ですっ

そんなこと言ったって50人を越える行列は、すでに車道を塞いでいる

ジッちゃん以外にも、高齢の人がいるし

全員が走って道を渡り切ることなんかできるはずがない