すると昨夜ニュースでやっていた、白坂創介の隠れ家が全焼したというのは
はい香月様の裏の部隊の方たちに、やっていただきました
ミナホ姉さんも現場まで行って、資料に火を付けたじゃないか
では私たちは心配しないでもいいんだろうね
はい、現時点では何も問題はございません今までマスコミにリークされた中に、わたくしどもやお客様の情報が一切流れていないのは、香月様のお力です
そのミナホ姉さんの声に、何人かの紳士がホッとする
本当に、もう大丈夫なんだろうね
そのことに関しましては白坂家、特に白坂守次氏がご健在の内は何とも申し上げられません窮鼠猫を噛むの例えではございませんが追い詰められたあのお方が、どのようなことをなさるかは判りませんし
ミナホ姉さんは、わざと煽る様なことを言った
判った私は中間派を気取っていたが、香月さんに付くことにするよ
うむ白坂守次氏から、新聞とテレビを奪わないと安心はできないということだな
わたしの方でも動いてみようあそこの新聞社の株なら、そこそこ持っているからね
株を持っているのなら、急いで処分した方がいいぞこれからドンと値下がりするだろうから
値下がりしたところで香月さんが買い漁るんだろう
そうか、それなら持ったままの方がいいな
塩漬けにされるのがオチだぞ
うむ、香月さんのことだテレビ局はともかく、新聞社の方は潰すつもりかもしれん
ああ、あの方は日本の新聞社は数を減らした方がいいというご意見だものな
紳士たちの会話が活発になる
とりあえず黒い森への疑念は消えたようだ
ところで黒森くん
一人の老紳士が態度を変えて、言った
君のところはいつ、再開するんだね
私たちの様な身分になると君のところみたいに、全ての秘密を守って遊べる場所が必要なんださっきの話で、白坂創介の暴挙に対して、君が香月さんの力に縋って私たちの個人情報を死守してくれたことはよく判った感謝する
ああ昔から、白坂は信用できない男だったが黒森くんのことは信頼しておるよ
君は、お祖父さんによく似ているなあの老人も、信用のためならどんな犠牲も惜しまない人だった
ミナホ姉さんの祖父黒森公之助
オレが、今、借りて着ている背広の持ち主
名前も借りている
申し訳ございませんが今は、まだ何とも
口籠もる、ミナホ姉さん
そうか、それも香月さんのお考え次第なんだね
なら、私から香月さんにお話ししよう
僕もお話しますよ
何なら、全員で嘆願署名しますか
いいですな香月さんは、そういうのがお好きでしょう
いずれにせよ、白坂創介という不埒者が居なくなったんだこれで、昔の様な私たちが安心して楽しめる場所を取り戻すことができる
渚が、声を掛けた紳士たちがみんな年輩なのは
この人たちは、昔の黒森楼時代からの古い顧客なんだ
そしておそらく黒い森にとっては、一番大切な上客たち
そうなったらわたしはまた、克子くんにお相手して欲しいね
一人の老人が、笑ってそう言う
うん私もお願いしたい
私もです
その声に克子姉は
申し訳ございません克子は引退致します
何故だね
克子姉は一同を見渡して
ここにいらっしゃる方たちは、皆様本当に素晴らしいお客様でしたから申し上げますがあたしと渚は、白坂創介に拉致され娼婦に堕とされました
黙り込む紳士たち
家族から無理矢理引き離され学校へも行かせて貰えず、暴力と脅迫を受け、何度もレイプされ娼婦として働かされていました
知らなかったよ
ああ、私たちは君たちは、てっきり自分の意志で娼婦になったものだと
ミナホ姉さんが、口を開く
祖父が運営していました頃はそのようにしていました田舎から、親の借金のある美しい娘を連れてきて本人の意志を確認した上で、店に出していましたしかし白坂創介が運営に携わってからは、全てがメチャクチャで娼婦へはきちんとした報酬の支払いさえ行われていませんでした
それじゃあ、奴隷じゃないか
はいわたくしもかつては娼婦だったことを、どなたかご存じですか
ミナホ姉さんの問いに、数人の老紳士が
私は知っているよ
うん、わしもだ
私は、その頃は君たちの組織とは疎遠だったから
白坂が運営に入ってメチャクチャになった娼館を嫌った人も多かったんだっけ
ミナホ姉さんが運営者になってから、昔の顧客を何人も呼び戻したっていう話だからこの人は、また戻って来てくれた人なんだろう
私も拉致された一人です優花姉さんたちが、白坂の悪行に対して香月様に抗議なさって下さってわたくしが運営者に加わり、香月様の監査役も来て下さいましたそれで随分と改善したのですが
香月閣下の監査役が恭子・ドスノメッキーさんだ
あたしお嬢様と渚がいなかったら、発狂していたと思いますわ
あたしこそ克子が居てくれなかったら、自殺していたわよっ
渚が、叫ぶ
あたしなんて気が弱いからすぐにヘラヘラしちゃうし、無理にでもニコニコしちゃうでしょでも、克子は強いから克子がどっしり構えていてくれたから、あたしは絶望しないで我慢できたのよ
何言っているのよ渚の方が強いわよあたしはただ、腰が引けて怖くてぶるぶる震えていただけよ渚がいつもあいつらがどんなに酷いことをしてきたって、ニコニコ笑ってくれていたから自分から率先して、あたしを守ってくれたからだから、あたし
あたしは、そんなに強くないわよっ全部、克子のおかげなんだからっ!
違うわよっ渚がいなければ、あたしは死んでいたわよっ
そこへ真緒ちゃんが割り込む
ケンカしなーいっうーっ
メッと二人を叱る真緒ちゃん
真緒ちゃん
ママも克子ちゃんも、仲良くぅ仲良しでしょ二人はっ
渚と克子姉が顔を見合わす
うん、克子
ええ、渚
キュッと抱き締め合う二人
あの頃もよく、こうして二人で抱き合ったわね
ええそうやって、恐ろしい夜を耐えたのよね
真緒ちゃんが、ニヒッと笑う
これにて、一件落着っうひひひっ
一人の老紳士が、真緒ちゃんを見る
渚くんこの子の父親は
はい誰かは判りません
調べるつもりはないのかね
ええDNA鑑定とか、方法はあるのでしょうがそういうことは致しません
この子にはこの子の父親になってもいいと、心の底から思ってくれる男性を父と呼ばせようと思っていますわ生物学上の父親なんて、意味がありませんから