そうだね、メグお姉ちゃんここは、あたしたちの戦場なんだね
だから、マナ胸を張りなさい平然としていましょう
うんにっこり笑うよ闘うよマナっ
一人きりならさっきのメグの様に、場に呑まれてしまうだろう
だから、オレたちは寄り添い合って闘う
このセレブな空間に迷い込んでしまったことに正々堂々と
君たちは、ホント根が真面目だよねぇ
寧さんは平気なんですかこういう雰囲気
うんっ、平気っだって、あたしいつでもどこでも場違いなんだものっもう慣れたわよ
学校中で知る人の居ない、伝説の不良少女だもんな
授業出ないし
わたくしも、平気です
他人からの気を反らせるのが、工藤流の神髄ですから
美智お前は、もう少し他人と心を合わせた方がいい
周りの空気に合わせるのが普通なんだそれを、わざと外せるから工藤流はスゴイんだろうでも、お前の場合は最初の合わせることの方ができていないじゃないか
オレの説明に美智は、きょとんとした顔をしている
気を合わせるということが、そんなに重要ですか
オレが喋る前に、マナが口を開いた
美智さんも、お兄ちゃんとエッチしてみれば判るよ
あのねお兄ちゃんと一緒にイけた時が、一番気持ちいいんだよ
イケるとは
美智さんイッたことないの
マナが尋ねると
よく判りませんっ
美智は顔を赤くする
これは、本当はイッたことがあって恥ずかしくて誤魔化しているんじゃないな
本当の絶頂まで、はっきりと達した経験が無いから、判らないんだろう
とにかくさお兄ちゃんにして貰った方がいいと思うよ
マナがそう言うと
そうだねあたしもそういう経験をした方が、美智さんはもっと強くなると思うな
マルゴさんが、背後から話に加わった
黒い森の旧顧客たちとの会話は終わったらしい
ミナホ姉さんと克子姉も戻って来ている
ご主人様とのセックスが、鍛錬になると
真剣な顔で、美智は尋ねた
工藤流が敵からの気を自由に反らしたり、外したりする技ならピンポイントで、気を合わせることもできた方がいいよ合わせて外すそういうのが、自由自在になった方が良いんじゃないかな
なるほどお父様が隠しておられた秘伝書に、その様な奥義が書かれていたと思いますっ
美智は興奮気味で、マルゴさんに話す
しかもできれば、カメラのピントを絞り込む様に、瞬間的に鋭く気を合わせる技術を身に付ければ、もっと凄くなる
そんなことがセックスで身に付くと
あたしには、よく判らないよあたしは、ここ7年はセックスしていないから
マルゴさんは12歳の時に、インディアン居留地でレイプされた
それ以来セックスしていないんだ
でも確か、恭子さんが持っていた資料にそういうのがあったよセックスによる気の鍛錬についてのレポートが
拝見したいです
うん、探しておくよ
ご主人様大変申し訳ございませんが、そういうことになりましたので、わたくしの鍛錬にどうぞお付き合い下さい
美智の気の鍛錬のためにセックスするの
いいと思うよ吉田くんにとっても、いい訓練になると思うし
マルゴさんは、ニヤニヤ笑っている
マ、マナも、その訓練するっ
ヨシくん、あたしもするからねっ
当然あたしもするわよっ
えっえっえーっじゃあ、あたしもっ
寧様はいい加減にしないと怒りますよっ
克子姉が、寧さんを睨んだ
もおっ克っつんの意地悪っ
意地悪じゃありませんっ寧様に勇気が無いのがいけないんでしょっ
マナが驚いた顔で、オレに尋ねる
寧さんが処女だってことはいつ公表すればいいんだろう
あれっそう言えば、雪乃はどこへ行った
マナのクラスメイトが、来ていたんだ
雪乃の知り合いとかだって、来ているかもしれない
黒子ちゃんならあそこよ
克子姉が、指を指す
きゃははは黒子ちゃぁぁんっ
がおーっ捕まえちゃうぞぉっ
真緒、捕まらないもんっ
パクパクパクパク食べちゃうぞおっ
くふふっ負けないんだからっ
近くのソファの周りを走り回っている
真緒ちゃんと
ほぅらっ捕まえたぁぁ
きゃああんっ捕まっちゃったえへへ
何だこの、ほのぼのとした光景は
雪乃さん、昔からああなんですよねえ
余所の子供には、とっても優しいんですいっぱい遊んであげて親戚の小さな子とかが遊びに来ると、いつもあんな感じなんです
雪乃子供好きなんだ
実の妹には、昔から少しも構ってくれないんですけれど
マナが不満そうに言った
外面がいいんです妹は身内だから、相手にしなくていいって思っているんですいつも、余所の子ばっかり可愛がって
言葉に敬語が入っている
これは舞夏だマナでは無い
いや雪乃は、優しいよ
高校に入学して一人ぼっちだったオレに、最初に声を掛けてくれてたのは雪乃だったから
そうだ白坂雪乃は
あいつは本質的には、優しい女の子なんだよ
気がどうのという話は、最近の演劇のレッスンから採り入れています
人間は群がなくては生きていけない動物である以上、集団で気を作ることができます
しかしながら、人間は個として別々の意志を持ってもいますから集団の中での気から脱することもできます
90年代以降の演劇レッスンは、その技能について大きく採り上げています
232.雪乃の心
真緒、騒いじゃダメよ
渚が幼い娘に声を掛ける
はーい、ママ
真緒ちゃんが、ちょこちょこと渚に向かって走っていく
渚の足にしがみついて
黒子ちゃん、騒ぐと周りの人の迷惑になるからダメですよっにひひっ
お姉さんぶって、雪乃にそう言う真緒ちゃん
判ったわよっまた、後でね
うん、また遊んであげるからねっ黒子ちゃん
それじゃあ真緒ちゃんの方が、雪乃の面倒をみていたみたいだ
いや、ある意味そうなんだけれど
雪乃は白坂本家から命を狙われている以上、もうオレたちと一緒に居るしかない
だけど黒い森の年長組の人たちは、基本的に雪乃に冷たいし
雪乃の方も、ミナホ姉さん、克子姉、寧さんとことごとく苦手にしている
その上、実の妹のマナが、一番雪乃への対応が酷いし
メグと雪乃はお互いにコンプレックスがあるから、二人だけでは一切口を利かない
となると、雪乃がまともに話をする相手はオレしかいないってことになるんだけれど
ほら他の女たちを避けて、オレの方に寄ってきた
子供の相手をするの、好きなのか
仕方無いから、話し掛けてみる
好きじゃないわよメンドくさいしでも、少し慣れておこうかと思って
慣れるって
雪乃が太い黒縁の眼鏡越しに、オレを見る