特に渚は母性が強いから、アニエスの心を掴んだみたいだ
いよいよアニエスをオレと結びつけようというのか
渚だって、ミナホ姉さんの薫陶を受けている女だ
目的のためには手段を選ばないしタイミングを逃さない
こんにちは、アニエスちゃん
だから、オレも
先にオレから、アニエスに声をかける
こ、こんにちわですの
アニエスは、恥ずかしそうにうつむいて言った
それではダメよちゃんとお兄ちゃんの眼を見て、ご挨拶なさい真緒は、いつもちゃんとしているわよ
真緒ちゃんのママという立場を、渚は最大限に利用する
はいわたし、アニエスですのこんにちわ
アニエスは、上目遣いでオレを見てご挨拶してくれた
はい、よくできたわねっ
渚が笑顔でアニエスを抱き締める
アニエスの頭を撫で撫でしてあげる
アニエスは、とっても嬉しそうだ
ああこういう、母的な存在に、アニエスは飢えているんだな
思わずオレも真似して、美智の頭を撫で撫でする
うん可愛いね、アニエスちゃんは
日本人と白人のハーフで乳白色の金髪が美しい目の色は、濃いブルー
12歳のアニエスは、天使の様に美しい
ほら、可愛いですってアニエスちゃん、パパにありがとうって言わなきゃ
渚が、アニエスを抱き締めて言う
パパ
真緒のお姉ちゃんになってくれるんでしょ真緒が、アニエスちゃんに何度もお願いしていたものね
うんアニエス、真緒ちゃんのお姉ちゃんになりますの約束しましたの
だったら真緒のパパは、アニエスちゃんのパパでしょ
白坂創介から、アニエスを奪うということはそういうことなんだ
あたしがママでこの人が、アニエスちゃんの本当のパパなのよ
うんオレがパパだパパになるよアニエス
アニエスの心はずっと渇いたままだった
生まれてからずっと、この地下室に監禁されていたアニエスは
食事係の人間としか接触せず
友達も家族も居らずただ、白坂創介への崇拝だけを求められていた
その白坂創介だってたまにアニエスに会いに来るだけだ
そこへオレたちが乱入した
真緒ちゃんが、アニエスの心に最初の潤いを与えた
こうなってしまったらアニエスの心は、もう止まらない
渇いた砂漠に、雨が染み込むように
潤いを求めて心が加速する
はいパパありがとうですのパパ
アニエスの顔は、まだ強ばっている
オレは、アニエスに手を伸ばす
怖くないわ、怖くないからね
渚に抱き締められているからアニエスは、動けない
オレはアニエスの頭を撫でてやる
よしよし、可愛いよアニエス
頭からほっぺたを撫でる
うん、12歳の肌はぷるぷるしている
アニエスは、不思議そうにオレを見ていた
オレがアニエスのパパだ
そうなんですの
そうよ、アニエスちゃん
渚が、肯定する
はふっと、アニエスが息を吐く
明日朝になったら、この部屋から出よういいね、アニエス
オレはアニエスに言った
アニエスは、ショックを受けている
それはダメですのいけないですのパパンが
アニエスのパパは、オレだよ
オレは、アニエスの頬に触れたまままっすぐに、アニエスの眼を見て言った
だから何も心配することは無いんだ
そうよパパとママが守ってあげるからね
渚も、アニエスをギュッと抱き締める
わたしは
アニエスは混乱している
彼女の中の常識では白坂創介が神で神の命として、アニエスはこの部屋からは出られないことになっている
大丈夫だよっあたしも、一緒に行ってあげるから
わたくしも付いて行ってあげますアニエスさん
瑠璃子も微笑む
おそらく、わたくしも
美智がそう言うのはみすずの警護人としての使命があるからだろう
2人とも、今夜はここに泊まることになっているが
明日の朝、何時に帰宅するのかまだ決まっていない
アニエスの儀式には、なるべくたくさんの家族が立ち会って欲しいから
部屋から出るのは、早い時間の方がいいな
大丈夫だ全部、上手くいくオレたちが、アニエスに付いているんだからな
オレは、アニエスにそう告げた
アニエスは、まだ不安そうな顔をしている
今は、ここまでだな
はーい、じゃあアニエスのご挨拶は終了ね続いて、レイちゃんでーす
麗華は別に
今さら挨拶してくれなくてももう、よく知っているけれど
はい、レイちゃん前に来て
麗華はピンクのメイド服のまんまだ
メイド服といっても本物でなく、コスプレ用の衣装なんだろう
ちょっとスカートが短い
いや麗華が長身過ぎるんだな
スリムだから、ウエストは入っているけれど丈が足りていない
麗華がオレに言う
真っ赤な顔で
どうしたんだ麗華
オレが尋ねると麗華は
あ、主様あの
主様じゃないでしょレイちゃん
渚がジロッと麗華を見る
さっさとキメちゃいなさいそしたら、心も軽くなるわよ
麗華がオレを見る
あのお兄ちゃま
ちゃま
わわたくしのお兄ちゃまになって下さい
麗華ってオレよりも5歳以上年上のはずだよな
さっきねレイちゃんとね、いっぱいお話ししたの徹底的にカウンセリングしたわ
で結論を言うとねレイちゃん、小さいときからずっと、お兄さんが欲しかったんだってだから、あなたレイちゃんのお兄さんになってね
レイちゃん、庇護してくれる存在がずっといなかったから男装の麗人というキャラクターを作って、自分で自分を庇護していたのよでも、よくないでしょそういうのってレイちゃんも、女の子なんですものちゃんと守ってくれる男の子が必要だわ
渚は、微笑む
いやその理屈は、判ったけれど何でお兄ちゃま
別に兄でなくたっていいだろう
弟に頼ってくれたって、いいんだし
しかもちゃまって
それは仕方無いのよレイちゃん幼児期から、やり直さないとダメみたいだから昼間は、お仕事があるからダメだけれど夜の時間は、幼児言葉で喋って貰うわそこまでして、今の麗人キャラを壊さないとレイちゃん、直らないと思うわ
ああ永年、男装の麗人を演じてきたから
身体に染みついちゃっているんだな
自分のことは、レイちゃんこの人のことはお兄ちゃままずは、それから徹底して貰うわ
しかし、あの
麗華は戸惑っている
あのさ、レイちゃんよーく考えてみてねレイちゃん、今のあなたは確かに、英国スーツの男装の麗人が似合っているわよ格好いいと思うわ
だけどさこのキャラ、いつまで続けるわけ
40歳、50歳を過ぎても紳士服で通すそんなことしてたら、元気やる気***の人みたいになっちゃうわよ