ちぇっ残念
それにマナ忘れたのか
マナがへという顔で、オレを見上げる
お前は、エッチは一回休みだからな
そうださっき、そういうことにした
もうお兄ちゃんの意地悪っ
マナが怒る
だから今は我慢しろ夜には、いっぱい可愛がってやるから
オレは、一回休みの分をマナの現在のセックスへの欲求と相殺してやることにした
本当なら、今は我慢するっ
マナは機嫌を直してくれた
夜か
本当のところ、オレたちが今夜どうなるのかは想像が付かない
この発表会が終わったらホテルで、白坂家との交渉がある
香月閣下とも話をしないといけない
そしてシザーリオ・ヴァイオラとの対決もある
長い夜になることだけは覚悟している
心配しないできっと、上手くいくわよ
オレの心を察してそう言ってくれた
ああそうだな
オレは、メグにそう返事をした
いけない、いけない
オレが心配そうな顔をしたら、メグやマナの顔を暗くしてしまう
オレは、平然としていないと
そうミナホ姉さんのように
ミナホ姉さんのいつもの冷たい微笑の下にどれだけの感情が隠れているか
尊敬できる姉が身近にいることに、オレは感謝する
あもう、おしまいみたいね
そして10人の小学校低学年生による発表が終わる
最後はみんな並んで正座してススッとご挨拶
ここだけは全員、ピシッと揃った
会場全体から拍手が起こる
閣下も満足そうな顔で拍手している
みすずの婚約者の司馬貴彦も
会場のあちこちから、花束を持った人が現れ舞台前に行く
陽子ちゃん、はいっ
久実ちゃんこっちよ
みんな出演者の知り合いらしい
踊り終わった子たちに舞台下から花束を手渡す
本当は、あんまりお行儀の良いことでは無いのですがフィギュア・スケートの大会の放送を観て、こんな風に踊り終わった後に花束を手渡すのが最近流行っているんです
後ろのシートから、美智が教えてくれた
確かに、10人の子が均等にお花を貰えるわけではないから見ていてあんまり、気持ちの良いものではない
一人で3つも4つも花束を貰っている子もいるし一つも貰ってない子もいるし
そもそも、ここで花束を渡すかどうかは、それぞれ家によって意見が違うだろうし
でもまあ止めろとも言えないよな
なかなか難しい、問題だ
ひとしきり、花束贈呈が終わったところで女の子たちは、もう一度会場に礼をして退場した
次が小学校の中学年の子たちの踊りその後が、高学年合同の踊りは小学生までみたいね中学生からは、一人だけで踊る人も出てくるようね二人とか三人の踊りもあるみたいだけど
メグが、パンフレットを見て、そう言った
発表会が始まっても、客席側の明かりが暗くならないよな
こういうのって、普通、舞台だけが明るくなって観客席側は真っ暗になるもんじゃないのか
こういう発表会だと、場内の出入りが激しいですし
なるほど、最初の踊りが終わったばかりなのに、もう場外へ出て行く人がたくさんいる
今踊った10人の小学生の家族や知り合いなんだろう
早速、楽屋に会いに行くのか
逆に、慌てて入って来るのは今から踊る次の組に子供がいる家族のようだ
元々、日本舞踊は歌舞伎の踊りが独立したものですから歌舞伎は、基本的に客席を暗くしませんし
美智が言う
どうしてさ
歌舞伎というものは、お弁当を食べたり、お酒を飲みながら見るのが普通ですから暗くしてしまっては、お客様が手元が見えなくてお困りになります
そういうものなのか
ですから特別な演出効果の時以外は、客席の明かりを絞るようなことはしないんです
美智すいぶん、詳しいんだな
この子は武道一筋だと思っていた
みすず様のご教育です
みすずの
わたくしは警護役として、みすず様のご観劇にお付きしますからその時に、色々とお教え下さるんです
みすず様はわたくしが、武芸のみしか知らない偏った人間にならないように、色々とご教育下さっているんです
みすずのそういうところはミナホ姉さんに似ているな
二人とも、教育計画を立てたりするのが好きそうだし
そんなことを考えているうちに
2組目の踊りが始まった
小学校中学年の踊りもやっぱり、可愛い
そんな風に踊りのプログラムが一つずつ進行していく
中学生の踊りに差し掛かった時
事件は起きた
何か、物凄く暑いですね
新キャラは三国志でいくことにしました
閣下の護衛部隊は、大徳備(ダイトク・ソナエ)、張本益徳(ハリモト・マスノリ)、関羽(セキ・ショウ)の三人です
関さんだけ女性です意味は特にありません
ちょっと仕事のスケジュールの関係で、明日は更新できるかどうか判りません
なるべく頑張ってみますが
いつもよりも量が減るかもしれません
234.誰
中学生の女の子、二人の踊りが終わる
場内に拍手が起こり踊り手たちが礼をする
その子らの友達らしい子が、舞台下から花束を渡している時に
一人の太った初老の男性が、突然香月閣下の方へつかつかと近寄って
大声で叫ぶ
香月重孝さんよぉぅっ折り入って、あんたさんに内々で話がしたいんじゃけぇんのぉうっ
金縁眼鏡に、禿頭、でっぷりと太ったスーツ姿の男は額から汗をダラダラと流している
ガタガタと震えてただごとでは無いことが判った
つーか、ちょっとお酒が入ってるっぽい
なあにっ、絶対に損はさせねぇっわしゃあ、あんたさんにとっても良い話を持って来たんじゃ
訛りの強い男の声は、緊張の余り甲高く裏返っていた
顔は強張り眼は血走っている
あんたさんも得をする、わたしも得をする対等にWIN-WINな関係になるんじゃけぇ判りますのおうウィン・ウィンじゃ
突然起こった状況に場内は、静まり返った
場内の全ての観衆が2階席の閣下に注目する
太った初老の男は、何とか閣下に接近しようとするが
閣下とその男の間には、数列に渡って閣下の指導するエリート青年たちの層がある
だから男は2階最前列に座った閣下の背後から、座席で言うと4列分くらい後ろから必死に声を投げ掛けていた
どなたですのあの方
どこの家の人かしら
香月様に、あんな無礼を働くなんて
どういうことなんだこれは
ようやく小さな声で囁かれる、疑念
閣下は不快な顔をして決して、乱入して来た男に振り向こうとはしなかった
美智あれが誰だか判るか
父親の調査ファイルを見ているはずの美智に、尋ねてみた