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構うもんか

とっても、綺麗でしたぁぁ

オレは立ったまま、大きく瑠璃子さんに拍手する

警備員に摘み出されるかもしれない

だけど何かしないわけにはいかなかった

瑠璃子さんは、舞台の上で驚いた顔をしている

観客席も、オレの蛮行に一瞬にして静まり返った

ブラボーブラボー瑠璃子さーんっ

寧さんがオレに続いて、立ち上がって拍手しながら叫んだ

オレの気持ちを判ってくれて

瑠璃子さーんっ格好良かったよぉぉぉ

次にマナが拍手しながら、立ち上がる

素敵でしたぁぁっ

堪能させていただきましたっ

美智も

オレ一人なら、変な小僧の悪ふざけのパフォーマンスみたいだったけれど

みんなが立ってくれると賞賛のスタンディング・オベーションになる

BRAVO

マルゴさんが、英語の発音で叫びながら立ち上がってくれた

ミナホ姉さんたちは、黒い森の顧客だった人たちの眼があるから動けないことは判っている

雪乃は呆れた顔をしていた

OHBRAVOBRAVOBRAVO

オレたちと全然違う場所から外人さんの賞賛の声がした

見ると外国人が集まっている座席の真ん中で、一人の白人のオッサンがスタンディング・オベーションしてくれていた

多分今日の会を観に来た、アメリカの政府の偉い人なんだろう

マルゴさんのBRAVOに反応したらしい

すぐに周囲のアメリカ人たちも席を立って、拍手する

そこから会場の空気が変わった

日本人の普通の観客たちも、みんなどんどん立ち上がって瑠璃子さんに拍手する

最後には香月閣下まで

もちろん、閣下の周囲のエリート青年団も空気を読んで立ち上がる

ついに会場全体が、スタンディング・オベーションの嵐となる

ミナホ姉さん、克子姉、渚に真緒ちゃんも立って拍手していた

座ったままなのは雪乃ぐらいだ

それと閣下の3人の警護人も

瑠璃子さんは最初は戸惑っていたようだったが、すぐに落ち着いて場内の三方に何度も礼をしていた

ご主人様、他の方よりも先に座って下さい

美智がオレに言った

こういう場合は、先に座ってしまった方が目立たずに済みます

確かに最初にスタンディング・オベーションを始めたやつがずっと立っているのは目立ちすぎる

オレが席に座るとメグやマナたちも座る

徐々に拍手が収まっていき立ち上がった観客たちが座っていく

瑠璃子さんは、にっこりと微笑んで、もう一度客席に礼をしてから舞台袖の中へ退場して行った

みすずさん、大変だねこの後じゃ

スタンディング・オベーションの後じゃ、踊りにくいかもね

しまったそういうのは、考えていなかった

大丈夫でございます

美智がオレに言う

みすず様はかえって燃えていらっしゃると思います

はいみすず様をご信頼下さい

うんそうしよう

みすず頑張ってくれ

舞台に、みすずが現れる

会場がスーッと静かになる

みすずは、舞台の真ん中に手を付いて座る

観客席の空気が完全に穏やかになったのを感じてから

三味線が、静かに鳴り響く

舞台の照明がゆっくりと明るくなっていく

ビビィィーンッ

みすずが顔を上げた

深紅の衣装を着たみすず

白く塗られた顔

紅を差した唇

美しい

オレのみすずは神々しいほど、美しかった

場内から瑠璃子さんの時と、また違った溜息が漏れる

みんな、みすずの美しさに見とれている

スッと立ち上がって舞扇を開く、みすず

みすずの踊りは恋の踊りだった

恋を知ったばかりの少女の舞

大人になろうと背伸びする17歳のみすずに相応しい、踊りだった

口惜しいわ

どうして、みすずさんはあたしより一つ年上であんなに、綺麗なのかしら

メグが、みすずの美しさに嫉妬している

あたし、敵わないわ

敵わなくていいんだよ

みすずにはみすずのメグにはメグの魅力があるんだ競い合って闘う必要なんて無いんだから

うんそれは判っているんだけど

メグは、黙り込む

舞台の上のみすずは瑠璃子さんとは違った

みすずはちゃんと、オレたちと同じ世界に居る

オレたちと同じ空間で恋を知り、恋に悶える少女を踊る

みすずの細かい心の揺れが、踊りに見える

人を愛することに戸惑う少女

それでも、少女の中で恋の炎が熱く燃えていく

熱情に焼かれるように激しく、少女は舞い踊る

みすずとのセックスを思い出していた

最初の初々しい、処女喪失から

少しずつ女として目覚めていったみすず

今ではセックスの快感に全身で喜ぶ、みすず

舞台のみすずの中にオレとのセックスが、見える

少女から女に変わっていったみすずが踊りの中で、再現されていく

オレの頭の中で

みすずの着ている豪奢な衣装が消えて行く

みすずの踊りには衣装の下のあの柔らかな肉体が、はっきりと透けて見えた

白足袋の中のピンク色の足の指先さえ、オレには判る

オレはみすずの全身を知っている

みすずの身体の中で知らない場所はない

肌の感触を抱き心地を肉体の柔軟さを知っている

みすずの中に何度も射精したオレだけが悦びに震えるみすずを知っている

見たことがある、触れたことがある、抱いたことがある

愛している女の肉体表現を観るというのはとても、不思議だ

多分この会場の中で、オレだけが違う踊りを観ている

みすずが舞う度にみすずの肉体を思い出す

いや肉体だけじゃない

心も

みすずの火の様に熱い心を感じる

言葉は丁寧で穏やかなのにみすずは、いつも燃えている

そういうみすずの熱情が踊りの中に、見えてくる

うんこれは、みすずだ

みすずにしかできないみすずの踊りだ

すごく愛おしい

この時間があの肉体があの心が

両腕で、しっかりと抱き締めてやりたい

こいつはオレの女なんだって世界中に宣言してやりたい

今日のみすず様最高です

心身ともに充実なさって踊っていらっしゃる

うんすごいよ、みすず

恋する少女の踊る姿に会場全体が、息を呑む

愛する相手を求めて舞台のみすずが、激しく舞い踊る

熱情が滴り零れるまま踊りは、クライマックスを迎える

扇の向こうに恋する相手を見上げたまま

恋の熱風の踊りが終わる

扇を閉じて客席に頭を下げる、みすず

一瞬の間

もう、オレが何かする必要は無かった

観客席は、自発的にスタンディング・オベーションの嵐となる

あたし、もっと自分を磨く

マナみすずさんに、負けてるもんこのままじゃ、お兄ちゃんを取られちゃうよ

おいおい、変な心配をするなよ

いいのっとにかく、あたしも頑張るよっみすずさんに負けたままじゃ嫌だもんっ