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無理にオレに襲いかかって、オレが少しでも動揺したらそれを抵抗の意志があったと見なすつもりなんだろう

それでオレを殺す気だ

それより関係の無いあなたが、どうしてわたくしの邪魔を致しますの

あれ聞いていないのかいわたくしは今、みすず様と瑠璃子様の警護を担当しているんだけれどね

その少年は関係ないじゃありませんか

藤宮さんがみすずに言う

みすず様どういたしますか

守って下さいその方は、みすずの大事な旦那様ですお願いですから、守って下さい

関さんがこの子を殺すとねみすず様のお心が傷つくんだよお心まで守ることがわたくしの警護人としてのプライドだ

藤宮さんがスッとステッキの先を、関さんに向ける

相変わらず頭が固いのね腕はいいのに、もったいないこともう少し、柔軟な思考の持ち主なら、閣下の専属警護人に推薦されたでしょうに

わたくしには、わたくしの覚悟がある君みたいな俗物には、判らないだろうけどね

二人が距離を詰める

まずい、まずいぞ

オレを助けてくれるのは、ありがたいけれど

それで、藤宮さんと関さんが殺し合いをするのは、本末転倒だ

下手をすれば、ミナホ姉さんたちにも迷惑を掛けることになるだろうし

藤宮さん、下がって下さい

君どういうことだい

驚く藤宮さん

抵抗はしません約束します

オレはつかつかと、関さんの方へ行く

旦那様、危険です

みすずが叫ぶが

大丈夫だよ関さんだって、香月セキュリティ・サービスのトップにいる人だろ一流の警護人なんだから

オレは藤宮さんの前へ出た

抵抗しませんから試して下さい

1日ぐったり寝てしまいました

先週の熱波は、やっぱり身体にきていますね

眼が覚めたら、夕方5時でした

238.仲の悪い二人

本気で言っているの君

関さんが、不機嫌そうに言った

どんな人間でも、恐怖を感じた瞬間は身が竦みますそれを抵抗したと受けとめられたら、ご主人様の破滅です

オレを信じろ美智

オレは関さんを見る

オレは関さんを信じるから

ギョッとする関さん

わたくしを信じる

みすずや瑠璃子さんや藤宮さんの眼の前で無抵抗なオレを殺すほど、恥知らずな人ではないでしょう

オレはゆっくりと関さんに向かって歩いて行く

同じ歩幅同じスピードで

待て近寄らないで

関さんは、そう言うがオレは歩みを止めない

どうしてですあなたに投降しようとしているだけですオレは格闘技とかやっていないし危険な人間じゃないことは判っているはずですよね

1、2、1、2

頭の中でワンツーのリズムを反復する

もう、それしか考えない

考えない方がいい

来ないでそれ以上、近寄らないでっ

ですからオレは何も抵抗しませんってば

思い出せ

子供の頃のことを

バァちゃんが死んだばかりの頃

父親も母親もオレの相手をしてくれなかった

オレが存在していることが二人とも、不満そうで

いつも、家の中で気配を殺していた

どこにもいない

誰にも見えない

オレは空気なんだ

そう思って両親の視線から、身を隠していたあの頃

あの頃に戻るんだ

オレはここにいない

オレなんて人間は最初から、この世に存在しないんだ

ただ、1と2の数字だけをカウントしながら

オレは同じリズムを刻んで、関さんに向かって前進し続ける

いよいよ関さんの攻撃が届く距離に突入する

このっ

立ち止まらずに、近付くオレに関さんが、シュッと拳を突き出す

でも判っている

関さんの拳はオレには当たらない

オレはここにいないんだから

関さんの拳の発する風を頬に感じる

それでもオレは前進する

オレはついに、関さんの懐に飛び込んだ

関さんが恐怖を感じて、悲鳴を上げる

このままじゃあ、関さんとゴッツンコしちまうな

だけど、オレもこうなるとブレーキが利かない

オレはそのまま

関さんの身体を両腕でしっかりと抱き締めた

何で投降した方の立場の人間が、抱き締めないといけないのかは判らないが

こうでもしないと、前進していたエネルギーを止められない

モニュウ

背の高い関さんの豊かな胸にオレは顔を埋める

うん柔らかい

き、君

オレの腕の中で関さんの成熟した肉体が、緊張して固まる

な何をしているんですかっ

関さんに抵抗しないで投降してみたんですが

関さんは顔を真っ赤にして、震えていた

わわたくしを放しなさいっ

オレが関さんに抵抗する意志がないことは、判って下さいましたか

関さんは

わ、判りましたそれはもう判りましたから、放しなさいっ

関さんの言葉にオレは身体を離す

関さんは、ギロッとオレを睨んで

あなたわたくしの肉体を抱きましたね

関さんの右腕が、大蛇の頭の様にオレの首元に伸びるッ

関さんが掴んだのは、オレの喉笛でなく

太い金属製のステッキだった

そこまでにしておいた方が良いと思いますよ関さん

英国紳士の装いの麗人が先輩のエリート警護人に告げる

ここで彼を傷付けたら香月閣下直衛警護人、関羽《セキ・ショウ》の名前が泣きますよ

撲殺剣士・藤宮さんがニッと笑った

判りましたわ

関さんは手を下ろした

この場はわたくしの負けです

ふー、助かった

振り返ると、みすずたちもホッとしている様だった

でもどういうことですわたくしが攻撃の間合いに、するりと入り込まれるなんて

関さんは、今起きたことに納得できないようだった

それはこの子がさっき言っていた通りなんだと思いますよ

藤宮さんが、オレを見る

言っていた通り

はいこの子には、関さんに抵抗する意志は全くありませんでしたそして、無抵抗の人間を関さんが攻撃することは無いと信じていたのでしょう

関さんも、オレを見下ろす

なぜ、敵であるわたくしをそこまで信用できるのですか

そもそも関さんは、敵じゃないですし

何て説明したらいいんだろう

関さんはこの子を、みすず様をたぶらかしている不届きな不良少年ぐらいにしか考えていらっしゃらなかったのでしょう

藤宮さんが、オレの代わりに話してくれた

でも、どうやら違うようですね

みすず様も日頃から閣下のご教育を受けておられる才女ですただの不良少年に騙されるような愚かな方ではないということですよ

みすずが藤宮さんの言葉に、スッと前に出る

はい関さんお祖父様に対する忠義には感謝しますが、余り出過ぎたことをなさるようでしたら処分致しますよ

ミナホ姉さんの真似だ

オレには、判る