了解、工藤ちゃん
ネコさんが、答える
丸一日ぐらい、あのまま拘束しておいたって、バンディーニは死にはしないだろう今は捨て駒の尋問なんてやっている余裕は無いし逆に偽情報を掴まされたら、メンドくせぇことになる
まあ大人だから車の中に閉じ込めておいても平気だろうし
今日は晴れているけれど、そんなに暑くはないし
どうせ、明日になりゃあ全部解決しているんだいや、解決させないといけねぇ
明日
さてとここまで、オレの手の内を晒したわけだが
工藤父は、ミッチィを見た
どう思う、ミッチィくん
お父様が、普段からどれだけ深く物事を考え準備していらっしゃるのか、改めて理解致しました大変、良い勉強をさせていただいていると思っています
そういうことを言っているんじゃねぇ
工藤父は冷たく答えた
ミッチィくんは、こういう世界に入りたいか
わたくしは、できればお父様の跡を継いで、工藤流を
こんなのは、工藤流とは関係ねぇ今のオレのやっていることは、ただの裏稼業だそれも危険なだけで、実入りは少ない割の合わない職業だ
ネコさんがスッと、工藤父を見る
あたし外そうか
いや、居てくれネコにも、この場に居て欲しいんだ
工藤父は、ネコさんにそう言う
オレみたいな裏稼業じゃなくて悦子や真一や遙花みたいに、香月セキュリティ・サービスの正社員になるって手もあるんだぜあっちは、正式なボディガードだ給料も休みも保証されている無茶な仕事には拒否権もある社会的な地位もあるだが
工藤父は、ジッと脇に置いた自分の鉄パイプを見つめた
オレの方には何も無い公の世界に出ることは決して許されないしそれなのに、常に死と隣り合わせだ
お父様はそれを後悔なさっていますか
工藤父は、ククッと笑う
バカ言えオレは好きでこっちの道に来たんだ何百回生まれ変わったとしても、オレは裏の世界へ行くよこれが、オレの天職なんだ
それでしたらわたくしも
ミッチィの言葉を工藤父は、堰き止めた
簡単に親子の情に流されるなはっきり言っておくオレは、オレの生き方にこれっぽちの後悔もねえしかし自分の娘にオレと同じ道を辿って欲しいとは、思わねぇよ
何よりお前には、もう決めた道があるんだろう
はいわたくしは、生涯をみすず様のために捧げたいと考えています
なら、その道を行けオレとは、ここまでだ
ですがわたくしにはまだ、お父様に教えていただかなければならないことがたくさんあります
ミッチィは、必死で父親に食い下がる
そんなもんは、ねぇ
工藤父は一言で突き放した
ここから先は、修羅の道ださっき言ったろ明日までに全て解決するってあれ、どういう意味だと思う
オレたちも山岡や悦子たち、香月セキュリティ・サービスの本社の連中も香月のジィさんからシザーリオ・ヴァイオラの駆除を命じられているだがあいつらとオレたちとでは、駆除って言葉の意味が違うんだよ
意味が違う
本社のやつらは香月のジィさんや、お偉方を守って、シザーリオ・ヴァイオラをアメリカに追い返せばそれでいい撃退するってのが、あいつらの駆除だしかし、オレたちの駆除は
ネコさんが暗い眼をした
シザーリオ・ヴァイオラとその仲間たちを、全員殺す来日したメンバーは、全員だそれも、今夜中に明日の朝には、一人も生かしてはおかないそれが、オレたち裏の人間が、香月さんから受けた駆除指令だ
本気の殺し合いをするつもりなんだ
美智オレは、お前に人を殺して欲しくはない
工藤父は穏やかな顔で、そう言った
ミッチィはうつむく
みすずお嬢さんの警護役として生きていくのならオレが、今までに教えた工藤流だけで充分だ工藤流古武術の本質は、戦場で鍛え上げられた戦闘武術だお前に教えたことの先にあるのは、確実に人を殺すための技だけだオレは、それをお前に教えたくはない
だから、工藤父はいつも、ふざけた風の技しか見せなかったんだ
いいえわたくしは、すでに知っております工藤流の奥義も極意も
ミッチィは、スッと顔を上げて父の眼を見た
お父様が隠しておられた秘伝の書を拝見しましたまだ、実戦で使うことはできませんが鍛錬は続けています
工藤父が言葉を詰まらせる
申し訳ございませんお父様のお心も知らずに、つい盗み見てしまいましたご無礼をお許し下さい
ミッチィが、スッと父親に頭を下げる
いやいいんだ知ることと、それを使うことは別だ学んだ技をどう生かしていくかはお前が決めることだからな
工藤父は、そう言って娘を許した
しかしオレを追って、裏稼業をすることは断じて許さないお前は、みすずお嬢様に付いていけそれがお前の工藤流古武術だ
お前にこれまで、オレの裏稼業を見せてきたのはお前がみすずお嬢様の警護役になったら、今のオレやネコみたいな裏の人間を使う立場になるからだ
正規のガード役として裏稼業の人間を取り仕切らなければならない
そのためには、裏稼業の人間の生活、考え方、行動様式なんかをよく知っておいた方がいいそれで、今日までお前をオレの側に置いていた
工藤父が、ミッチィの赤いムチを見る
それ見せてみろ
ミッチィがレッドビュートを父に手渡す
いいムチだな誰に貰った
黒い森のマルゴ様です
工藤父は、ビッとムチを引っ張って強度を確かめる
わたくしには、ハンマーよりもこの様な武器の方が向いているとアドバイスしていただきました
妥当な判断だこれは、人を守る武器だ敵を寄せ付けないための武器だ色も派手で良い警護役には、相応しい武器だと思うよ
工藤父は、ムチをミッチィに返す
オレたち、裏稼業の人間は外から見て、武器だと判る武器は持たない敵に警戒されないためと潜入工作のためだ途中でボディ・チェックを受けたらアウトだからなだがガードの人間は、これくらい判りやすい武器を持っていた方がいいお前のムチの凄さを誰もが知るくらいに広めろみすずお嬢様の警護役の赤いムチは、とんでもなく恐ろしいっていうイメージを世間に広めるんだそれがお前とお嬢さんにとっての最初の防御壁になる
ミッチィの強さが世間に伝われば半端なやつらは、みすずを襲って来ない
だがムチ以外に、別の技も身に付けておけ隠し技だ敵が、お前はムチで攻撃してくると思った時に使う、一撃必殺の技だそういう隠し技があれば、いざという時に役立つ
判りましたお父様
ミッチィくんに、オレがアドバイスできるのはこれが最後だな
工藤父は、ニッと微笑んだ
ということだからネコミッチィくんは、オレの娘だが裏稼業には引き込まない悪いが、ネコたちもそういう対応をしてくれこっそりオレの知らないところで、スカウトとかしたら、ただじゃおかねぇぞ