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関さんも

オレや黒い森が、みすずに悪影響を与えているのではないかと疑っているのだろう

それがさらに瑠璃子さんに拡大するのではないかと

あなたが、そんなにご心配なさる必要はありませんよ

みすずが、関さんに微笑む

香月の家の中の問題は、きちんとお祖父様にご相談して解決致しますから瑠璃子さんも、あたしと旦那様のお付き合いについてはお許し下さいますよね

それはみすずお姉様と黒森様が、本当に愛し合われているということは、わたくしにもよく判りますからしかし

口籠もる、瑠璃子さん

香月の家のことは

ですからそれは、お祖父様と談判致しますそれなら、構いませんよね

お姉様本当に、香月の家を出られるおつもりですか

瑠璃子さんはみすずがオレと駆け落ちすると思っているらしい

閣下の意志に反して生きるということは、そういうことなのか

その覚悟はできていますあたしの人生は旦那様と共にありますから

そういうお覚悟がおありなのでしたら瑠璃子はもう、何ももうしませんみすずお姉様の信じていらっしゃる道を存分にお進み下さい

瑠璃子さんには自分の運命を自分で決めるという発想は無いだから、みすずの言葉に戸惑っている

関さんははっきりとした自分の意見を持っているのだろうが、強く自分から主張するということはしないだから、今は黙っている

二人とも閣下の命令に従うのが当然だと考えている人たちだから

みすずが閣下と直接談判すると言っている以上彼女たちには、どうすることもできない

お祖父様との話し合いの場には瑠璃子さんにも居ていただきたいの

はいその方がよろしいですわねわたくしも、ことの次第をよく知っておきたいですし

瑠璃子さんは、そう答えた

楽屋を出る

藤宮さんが、ステッキを持って立っていた

随分時間が掛かりましたね

申し訳ありません少し、瑠璃子さんとお話しをしていました

旦那様済みません

オレはみすずと瑠璃子さんの衣装や荷物を載せた台車を押している

構わないよこういうのは、男の仕事だ

美智や警護人の二人には、しっかり周囲の監視をしていて欲しいし

自分の女の荷物ぐらい、オレが運ぶのが当然だろう

わたくしの使う車楽屋口に廻してくれるように頼んでおいたのですけれど

楽屋側の出口で関さんが、香月セキュリティ・サービスの制服を着た警備員に尋ねた

はい表に停めてあります

警備員が、キーを差し出す

関さんは、鍵を受け取る

最新式の要人警護車ですね

外の車を見て、藤宮さんが感嘆する

車は、大型のリムジンだった

ええ、今月納車して貰ったばかりの車ですよわたくしの専用車として

胸を張る関さん

だからか関さん専用車だからなのか

その車のボディはピンク色に塗られていた

ピンク・キャデラックってことなのかしら

藤宮さんが、ニッと笑う

外装だけですわ中身は違います車体もエンジンも特別製ですから

関さんは、得意げに語る

新技術による防弾装甲に防弾ガラス衝撃にも強い様に設計してもらいましたのよ

藤宮さんが、革手袋をした手で車のボディをコンコンと叩く

中身の詰まった音

洒脱なアメリカ車の外観は完全なフェイクだ

これ装甲を乗せた分、車が相当重くなっているでしょう

藤宮さんが関さんに尋ねる

ええその分、エンジンもハイ・パワーなのに換装してありますわ燃費が少々悪いですけれどそれは、仕方ありませんわよねサスペンションなども、全て特注です

高出力のエンジンに変えたんなら、エンジンも重いんですね車体も重い、エンジンも重いやはり、使用なさる方が重い方だと、専用車も重くなるのですわね

藤宮さん言葉にカチンとなる、関さん

わたくしそんなに重くはございません

あらわたくし、そういう意味で言ったのではございません関さんは、閣下や谷沢チーフに重用されていらっしゃいますからそういう意味での重いです

でもわたくしの言葉に、そんな反応をなさるなんてもしかして、関さんは最近、体重ついて特に気になさっていらっしゃるのですか

気にしていませんっ気にするわけないですわっ

そうですよね関さんの様なトップ・エリート中のエリート警護人が、日々増加していく体重のことなど気にしていらっしゃるはずがございませんよね

この二人は、まったく

どっちも良い年齢の大人なのにこの仲の悪さは何なんだ

ところでこの最新式の装甲、試してみてもよろしいですか

藤宮さんが関さんに微笑む

試す

はい、新技術の効果に興味がありますわたくしの一撃にどれくらい耐えるか車体の頑健さを確かめたいと思います

藤宮さんが、重さ3キロの特殊金属のステッキを振り上げる

特に、ここのフェンダーの辺りの装甲の強さが知りたいですね

や、やめなさい

大丈夫ですよわたくしが全力で一撃を加えるだけです装甲が凹むだけですよ万が一、装甲に穴が開いたとしても、車の走行には支障の無い程度で止めておきます

藤宮さんが、フンッと気張る

ステッキを握った手に力が入る

ダ、ダメよっ藤宮麗華っ

関さんが慌てて、藤宮さんのフルネームを叫んだ

そう言えば、藤宮さんて麗華って名前だっけ

こんなに凛々しい男装の麗人で麗華宝塚の男役みたいだな

お遊びは、それくらいしておいて下さい、藤宮さん

あたしも瑠璃子さんも車体を凹ませた車に乗りたいとは思いません

瑠璃子さんも、みすずの後ろでうんうんと頷いている

御意では、装甲のテストは別の機会に致します

藤宮さんは、二人に颯爽と礼をする

もう

関さんは、プンプン怒りながら車のドアを開ける

さあみすず様、瑠璃子様、どうぞ

二人が車に乗り込もうとする

待って下さい

オレは乗り込む二人を止めた

どうしました

瑠璃子さんが驚いて、オレに振り返る

この車香月セキュリティ・サービスの人に回送して貰ったんですよね

誰だか知らないけれど駐車場から、ここまで運んで来たのは警備員の一人のはずだ

そうでございますが

関さんが、オレを見る

一応車のチェックをした方が良いと思います

香月セキュリティ・サービスの仕事が信用できないとおっしゃるのですか

オレの言葉に関さんは不快感を示す

そうじゃないですけれどオレが敵なら、警備員の中に紛れ込んで、この車に何か仕掛けます

発信器とか盗聴器とか

関さんと藤宮さんが顔を見合わせる

旦那様のお言葉に従いなさいすぐにチェックして

二人の警護人が、車内に飛び込む

シートや内装の中をくまなくチェックしていくと

ありましたわ