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こちらにもです

次々に隠されていた機器が出てくる

藤宮さんがポケットから、携帯電話サイズの機械を取り出す

不審な電波が発信されていないか、チェックする機械です

オレたちに説明しながら、機械を持って車の周りを廻っていく

もう大丈夫です他には、発信機器は取り付けられていないようです

香月セキュリティ・サービスの中に、すでに敵が入り込んでいるとは

関さんが、苦々しい顔でそう言った

敵も本物のプロフェッショナルってことなんでしょうどうします、山岡部長に報告しますか

藤宮さんが、関さんに尋ねる

止しましょう誰が敵なのか判らなくて、制服組が全員、互いに疑心暗鬼になってしまいます

現場が混乱して、パニックになるだけですね

おそらくそれも敵の狙いなんでしょう

関さんが言った

今のままなら敵に入り込まれていても、制服組の中の命令系統は完全なままです潜入されたとはいえ班長・リーダークラスにまでは浸透していないはずです人数もせいぜい数人程度でしょうし

敵が紛れ込んでいるという情報だけが一人歩きをしたらそれだけで、制服組の機能はマヒする

実際には、一番下っ端のレベルに数人が入り込んだだけなのに過剰反応をすれば、組織全体がダメージを受ける

専用回線で谷沢チーフにだけ報告します潜入工作員の特定は、谷沢チーフにお願いしましょう

そうですね山岡部長では、現場を混乱させるだけでしょうから

関さんが、携帯で谷沢チーフに連絡する

その間に、オレは車に荷物を積み込み

みすずや瑠璃子さんも車内に乗り込む

助手席に藤宮さん

リムジンの2列目の席に、オレと美智

後部座席に、みすずと瑠璃子さん、美子さんと座る

リムジンの座席は、2列目の座席が後ろ向きになっていて、後部座席の人たちと向かい合って座れるようになっていた

なので、オレと美智は瑠璃子さんたちと膝を合わせて座っている

電話を終えた関さんが運転席のドアを開け

でどうして、あなたが助手席に座っているのかしら

藤宮さんに言う

この車は、関さんの専用車でございますから

こういう時の運転は香月セキュリティ・サービスでは、目下の人間がするルールになっていると思うんですけれど

えっと関さんも藤宮さんも、谷沢チーフの部下で香月セキュリティ・サービスのトップ・エリートだ

関さんは、閣下の直衛警護人に選ばれているけれど

どっちが上とか下とか、あるのか

ですから運転は、関さんにお任せします

藤宮さんは、平然とそう答えた

あなたわたくしよりも年下のはずよね

ですが香月セキュリティ・サービスへの入社は、わたくしの方が先ですわたくしは16歳で谷沢チーフ直々にスカウトしていただきましたから

わたくしはね大学を卒業した後に、ヨーロッパに留学していたんですのっ高度な専門教育を受けた実務家として入社したのですから入社年度は関係在りませんわっ

関さんも藤宮さんも譲らない

関さんが、どうしてもということでしたらわたくしが運転しても構いませんが、わたくしの運転は荒いですよ関さんの大事なお車に傷を付けてしまうことになるかもしれませんそれでも、よろしいですか

そんな藤宮さんの言葉に関さんは

もうっ判ったわよっわたくしが運転すればいいんでしょっ

ぶんぷん怒りながら運転席に乗り込んでくる

チームの中に仲の悪い二人がいるというのは昔からの伝統です

古くは、1950年代のキャプテン・フューチャーシリーズ

さらには、アメリカのSF小説の起源とされる、連続新聞小説のフランク・リード・ジュニアシリーズまで遡れるそうです

野田昌宏氏のSF英雄群像が新刊で買えない時代って悲しいですね

241.3人揃って

皆様シートベルトは、きちんとなさいましたね

関さんが、ルームミラーでオレたちを確認する

ちょっと走り出しが揺れますが気にしないで下さいね

エンジンが掛かる

トルルルンンッ

軽やかに廻るエンジンさすが、特注車だ

エンジン音が野太い

相当の高出力エンジンなんだろう

では参りますわっ

動き出した車はいきなり、ガクッと大きく揺れる

後ろ向きに座っている、オレと美智は前のめりになる

みすずたちは、逆にみすずたちはシートに強く押しつけられる

あ確かに、これは車が重いんだ

重い車を高出力のエンジンで無理矢理動かしているから挙動が荒い

そうでないと、こんなにドスンとはならない

わたくし車は穏やかな方が好きですわねロールスロイスでしたら、発進時の挙動でコップの水が零れることさえありません

藤宮さんが、嫌味を言う

申し訳ないですわねわたくし、車はアメリカのワイルドなテイストが気に入っておりますので

キャデラックなんて、車としての完成度はとても低いと思いますが昔も今も、アメリカ製の高級車なんて、趣味の悪さの代名詞じゃありませんか

藤宮さんの言葉に、関さんの闘争心が燃える

藤宮さんロールスロイスって、今は、どこの国の会社でございますか

ドイツのBMWの傘下ですね

ベントレーは

ドイツのフォルクスワーゲングループの傘下です

ロータスは

マレーシアの国営企業に買収されましたっ

オースチンは

中国企業に買収されましたっ

ジャガーとランドローバーは

今はもう、インドの会社の傘下ですっ

藤宮さんが、ギロッと関さんを睨む

関さんあなたは、国際経済にもご堪能ですから、もちろん全て知っていてお尋ねになっているんですよね

いーえそんなに、わたくしを買いかぶらないで下さいなわたくしにも、不得意な分野というものがございます世界の自動車業界のことなんて

嘘だ絶対に詳しいに決まっている

でも、まあそうですか藤宮さんのお話でよーく判りましたわかつては大勢力を誇った英国ブランドの自動車メーカーも今では、見る影もございませんのねもう、イギリス国内には、車のメーカーなんて一つも残ってはいないのではありませんか

ま、まだ、アストンマーチンが残っていますっ

強い眼で睨む藤宮さん

ああ、そんな会社がありましたよね確かアメリカのフォード自動車の傘下だったのを、テヴッド・リチャーズが中東の資本家にお金を出していただいて何とか買い戻したってでも、売れているんですか

くっ

それでも英国内に一社だけでも残って、良かったですわね藤宮さん

関さんの勝利の笑み

まあ国家の基幹産業である自動車産業を、それも長年に渡って名の知られた国家を代表するブランドをポイポイ他国に売り払ってしまう英国人の神経は、理解できませんね貧すれば鈍するということですか