曲がっている時に、変な角度で車をぶつけられたから
オレたちの車は、押されてスライドするッ
ぐっ
オレは踏ん張って耐える
みすずや瑠璃子さんたちも、眼を瞑って必死で耐えていた
ドガッ
車は交差点の歩道に乗り上げて止まった
下手くそすぎますっこんなことなら、わたくしが運転するべきでしたっ
藤宮さんが、関さんに怒鳴る
あー、絶対にボディに傷が入ったわぁっ新車なのにぃぃぃ
関さんは、怒りを敵に向けて誤魔化す
その間に香月セキュリティ・サービスの2台の車が、オレたちの背後を塞ぐ
バックでは脱出できない
歩道を突っ切りましょうそれしかないですわ
と、藤宮さんが提案する間に
2台の車から警備員たちが降りてくる
そのうちの何人かは銃を持っていた
サッと敵の一団が、オレたちの車を取り囲む
もうっ関さんが、ボヤボヤしているからですっ
わたくしっ、ボヤボヤなんてしておりませんわっ
怒鳴り合う二人
もう、こうなったら仕方ありません
藤宮さん何とかしてきて下さいなっ
何とかって
わたくしですか
その粉砕ステッキで、敵を攪乱して来て下さいその隙に、わたくしたちは脱出致します
関さんは、平然とそう言った
わたくしは、どうなるんですか
それは、独力でどうにかして下さいわたくしたちは、ここから脱出するので精一杯ですから
藤宮さんが車から降りて、あの銃を持っている人もいる十人以上の敵と一人で闘って
車が抜け出せる状態になったら、藤宮さんを置き去りにして全速で脱出するってこと
わたくしインドアでの闘いの方が得意なのですが
うん藤宮さんの闘い方は、基本は剣道だから屋外での銃を持った敵との戦いは苦手だろう
今は、そんなことを言っている場合では無いでしょう
関さんが突っぱねる
でしたら、車の運転はわたくしが致しますから敵の攪乱は、関さんにお任せします
わわたくしが
閣下の直衛警護人に選出された関さんの実力存分に発揮して下さい
関さんが、ハンドルにしがみつく
これはわたくしの車ですからっ
だから何ですか
だから、あなたが行きなさいよっ
二人の女性警護人が、いがみ合っている間に
藤宮さんの側の窓がノックされた
銃を持った男が、藤宮さんに言う
開けろ
すでに、車は敵に包囲されていた
瑠璃子さんと美子さんは抱き合って、震えている
みすずは、まだ平然としていた
美智は、ジッと様子を見ている
ほら藤宮さん、お呼びよ
関さんが、ニッと笑ってそう言った
はぁ仕方ありませんね
藤宮さんが、ドアのロックを解除する
今、出ますわ
ガチャリとドアを開けた瞬間
藤宮さんのステッキが、銃を持った男の喉を突くっ
グエエエッ
吹っ飛ぶ、男
サッと車の外に転げ出る藤宮さん
車のドアを閉めた瞬間関さんが運転席から、再度、ドアをロックする
この車の装甲でしたら、敵の銃弾は貫通致しません車内に居る限りは、安全でございますっ
関さんが、叫んだ
タァァァァッ
その間に藤宮さんのステッキが、二人目を倒す
銃を持った男が、何とか藤宮さんを狙い撃とうとするが
藤宮さんは、巧みに敵の群れの中に飛び込んで狙いをつけさせない
そうなると、間合いの長い武器を持っている藤宮さんは強い
あっという間に、数人をのしてしまう
もう、あの子、敵を右に引きつけてくれたら左側から車が出せますのにっ
関さんは、藤宮さんを置いていく気満々のようだった
藤宮さんのステッキが、五人目の敵を屠った時
ダダダダダダダダッ
銃弾の雨が藤宮さんの足下に
藤宮さんは、身体を翻してオレたちの車の陰に飛び込む
カンカンカンカンッ
車のボディが弾丸を跳ね返す
さすが特注車
みすずも、瑠璃子さんたちもシートベルトを外して、身を伏せている
もちろん、オレと美智も
リムジンの床に身を寄せ合う
防弾ガラスと判っているけれど銃撃を受けるのは、やっぱり怖い
ああーんっわたくしの新車がぁぁ
関さんだけは、絶叫しているが
連続した銃声が止まる
顔を上げ防弾ガラス越しに、外を見ると
バンから降りて来た男が、自動小銃の弾倉を詰め替えている
あんな物まで持って来ていたのか
これでは、藤宮さんも迂闊には動けない
おらぁぁ諦めて、出て来いっオレたちは、お嬢様方に用があるんだぁぁ
自動小銃の男がオレたちに向かって叫ぶ
ああ、美子
る、瑠璃子様
瑠璃子さんたちは、すっかり怯えて抱き合ったまま、震えている
瑠璃子さんに、声を掛ける
怯えながら、瑠璃子さんがオレを見る
大丈夫ですきっと大丈夫ですから
オレは瑠璃子さんの手をしっかりと握る
はい大丈夫ですよ
その手の上にみすずが、手を重ねる
美智も、手を重ねてくれた
皆様
最後に、美子さんの手が重なる
4人で手を重ねて見つめ合う
絶対に平気です敵は、人質としてみすずと瑠璃子さんを必要としています無茶なことはしてこないでしょう
車ごと、オレたちを爆破するとかオレたちを撃ち殺すとかは、しないだろう
ただ敵に捕まった場合
オレや関さんたちは、その場で殺される可能性はあるけれど
みすずや瑠璃子さん、美子さんは傷付けられることは無いと思う
多分美智も
美智は、瑠璃子さんたちと同じ名門女子校の制服を着ているし
見た目は、小柄な可愛い女の子だ
瑠璃子さんたちの友人の名家のお嬢様にしか見えない
美智お前は、ギリギリまで正体を明かすなみすずや瑠璃子さんを守ることに集中しろ
オレがそう言うと美智は
判っておりますしかし、その前に助けが来るはずです
助けですか
瑠璃子さんは、怯えたままそう言う
はい、わたくしの父が援軍を送って来ているはずです
美智が強い眼で、瑠璃子さんを見る
どうか、わたくしの父を信じて下さいませ
遠くから、甲高いエンジンの音が複数聞こえてくる
何かが、こちらに近寄って来る
間違いない助けが来たんだ
何という、ベスト・タイミング
さすがは、工藤父だ
オレが、スッと顔を上げて防弾ガラスから外を覗くと
道の向こうから、こちらにやって来るのは
3台の3輪バイクだった
確かトライクって、いうんだっけ
3台のトライクに半裸の女性が、3人乗っている
トライクには、何故か旗が翻っていた
それぞれのトライクのハンドルの前にはバッファローの角が括り付けてあったり、、虎やパンダの頭を模していたりする