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そうやって、8階まで降りてまた、違うエレベーターに乗り換え

最終的に、23階で降りた

閣下の居場所を特定されないためにここまでやるのか

エレベーターを降りると山岡部長が先を進む

追う、オレたち

ご主人様、フロアの様子をよくご観察なさっておいて下さい

美智が、オレに耳打ちした

うん

ワインレッドのカーペットの敷かれたホテルの廊下

階段はあっちで非常口はそっち

トイレがここで

フロア上の配置を、頭の中に叩き込んでいく

このお部屋です

2307号室の前で山岡部長は立ち止まった

コンコンと、ノックする

ガチャッとドアを開けて出て来たのは渚

まあ随分、遅かったわねえ心配してたのよ

そして真緒ちゃんが、ドアから顔を出す

えへへへっ待ってたよおっ

どうして、ここに居るの

渚が微笑む

そんなのあなたとみすずが心配だからに決まっているでしょ

渚はオレの女であり

みすずの初代飼い主だ

あたしも自分の車でここまで来ようかと思ったんだけれどそれじゃあ、中に入れて貰えないでしょだから、香月様のお車に乗せていただいたの

閣下の車に

渚は、どうして克子姉の車に同乗して来なかったんだ

克子姉の車なら渚と真緒ちゃんの二人は、問題無く乗れたはずなのに

あたしの車は劇場に置いて来たわ明日にでも、取りに行かないとね

キーをお預けいただきましたら、私の部下がこちらまで回送致しますが

山岡部長が、そう申し出る

そうしていただくと、とてもありがたいんですけれど香月様が、山岡さんのお仕事は信用できないっておっしゃっているのよ

渚の言葉に失態続きの山岡は凹む

その様子で判った

渚は山岡部長に、自分を閣下の愛人だと思わせようとしている

渚が黒い森の所属であったことは古い顧客しか知らない

みすずをわざと山岡部長の前で、呼び捨てにしていたし

自分が閣下やみすずと特別な関係であることを、山岡部長に示しているんだ

だからわざわざ閣下の車に乗せて貰った

総合警備部でなく、わたくしの部隊のサポート・メンバーにさせましょうか

関さんが、そう言ってくれた

まあ、助かるわお願いします

渚が車のキーを取り出す

劇場の駐車場の1階の右の奥に置いてあります赤のプジョーですから、すぐに判ります

お預かりしますお車は、こちらのホテルの地下駐車場へお回しします

いえここでは困るわここはもうすぐ戦場になるんでしょせっかく運んでもらって、壊されるんじゃ困りますからプラザホテルの駐車場の方に廻して下さいあたし、そこのお仕事をしていますから管理の方に花屋の片貝の車って言っていただければ判りますから

かしこまりましたわ

関さんは、渚の鍵を受け取る

山岡部長は、面目丸潰れだ

ねっ、ママ早くっ香月さんが、早くって言っているよっ

真緒ちゃんが、閣下の伝言を運んでくれる

ああ、そうねっごめんなさいみなさんお入りになって

その部屋は会議などのために貸し出している特別室の様だった

ベッドやバスルームは、付いていないらしい

二部屋続きで閣下は奥の部屋に居るようだ

えへへへっ早くっ早くっ

真緒ちゃんが、ニコニコしながらオレたちを急かす

渚が、奥の部屋のドアをノックする

閣下の声だ

皆様、ご到着なさいましたわっ

渚の声に、閣下は

渚がドアを開ける

ドアの向こうは

20畳ぐらいの大きさの部屋だった

本当に会議室っぽい

グレーのパンチカーペットの上に椅子が並んで居る

ドアの向こう側に、机が置かれていて

そこに閣下が座っていた

何かまるで、高校の面接試験会場みたいだった

閣下の後ろには谷沢チーフが控えていた

その横に、ちょこんと座っているのは

みすずの婚約者である司馬貴彦だ

司馬貴彦は、恐ろしい眼でオレを睨んでいる

ご苦労山岡くん

最初に閣下は山岡部長に声を掛けた

君は自分の仕事に戻り給えこれ以上、私を失望させることの無いように願いたいねえ

はっ申し訳ございません

深く頭を下げる山岡部長

人間というのは、間違いを犯す生き物ですだから、失敗することについて私はとやかく言うつもりはありませんただ似たような失敗を何度も犯す人間に関しては、私はその仕事の適性を疑います

はい二度と同様のミスは繰り返しません

閣下は、恐縮する山岡部長を無視して谷沢チーフを見る

谷沢、お前の方でフォローしてやりたまえ

谷沢チーフはスッと一礼する

今夜の来客には粗相の無いようにどんな相手でも、きちんと歓迎してあげるんだよ

はい準備は整っております工藤のやつも、良いメンバーを揃えてくれました

彼は今夜の様な時のために居る人材だ思い切り活躍してもらおう

あいつには、閣下からのお言葉としてそう伝えます

谷沢チーフは、永年仕えている執事のように恭しく主に答えた

では、現場へ向かいたまえ私の警護は、関くんと藤宮くんだけで良い

では閣下、失礼致します

スーッと、足音を立てずに退室していく谷沢チーフ

それから閣下は、汚いものを見るような眼で、山岡部長を見る

まだそこに居るのかね、山岡くん君も、君の仕事に戻り給え

あの、私は

早く下がりなさい君がそこ居たままでは彼女たちとの本題に入れないよ

閣下はみすずたちに視線を戻す

はっ失礼致しますっあの精一杯、職責を全う致しますどうか、ご期待下さい

山岡部長が、カチンコチンになりながら部屋を退出して行く

体育会系の人はいいねえあんまり、頭で深く物を考えないようだからちょっと意地悪く、脅してやるだけで命懸けで頑張ってくれるようになる

閣下は、そんな嫌味を言った

君たちみたいに、一々、言葉の裏の裏まで読もうとする相手だと会話をするだけでくたびれるよ

関さんと藤宮さんを見て閣下は、そう言った

まあ君たちの様な美女と、そういう知的な対話を楽しむことが、私のボケ防止策なんだがね座りなさい、君たち

閣下は椅子を勧めてくれる

関くんはそこ藤宮くんはそこ瑠璃子と美子くんは、そっちの席みすずとお前は、そこだ

オレだけお前かよ

まあ、いいけれど

あたしたちは、被告席ですかお祖父様

そう言えばこの椅子の並びは

お祖父様が座っていらっしゃる場所が裁判官の席だとしたらあたしたちの席は被告人の席関さんが検事で、藤宮さんが弁護士ですか瑠璃子さんと美子さんは、証人ということですか

不快そうにみすずは、言う

ちょっと違うな

閣下は答えた

瑠璃子と美子くんは傍聴人だよ二人は、この裁判には関係無いからね