Выбрать главу

みすずの言葉に渚が

ええ、判るわあたしにも

見つめ合って、微笑むみすずと渚

あたしこの人と一緒に居ると楽なんですこの人は、絶対にあたしの前で自分を偽りませんというよりそういう発想が無いんですだからあたしも裸になれます香月家の娘でも何でも無い一人の女に

みすずは瑠璃子さんを見る

あたし子供の頃から香月の家の娘として生きてきていつも、辛かったですいつでもどこでも、人目を気にしないといけないですしお祖父様や両親の期待に背いてはいけないって、思っていましたから友人にも妬まれてもいけないし、崇拝されてもいけないから微妙な距離を取るしかありませんでしたいつも明るくニコニコして機嫌の良い、明るい女の子でいなくてはいけませんでした外でも家の中でも

わたくしも、そうですわ

瑠璃子さんが、そっと呟く

でも、わたくしには美子がおりますからお付きのいらっしゃらないみすずお姉様は、さぞかしお辛い思いをなさったと思います

暗い顔をする瑠璃子さんに美子さんが、そっと身を寄せる

以前のあたしはそうでした顔は笑っていても、心はずっと曇っていましたでも、今は違いますっ

みすずが、ギュッとオレを抱き締める

あたしようやく、身も心も裸になって付き合える男性に出会いましたからもう、絶対に離れませんっお祖父様に背くことになったとしてもあたしはこの人と添い遂げます

オレは、みすずのことであなたの知らないことを知っています

司馬貴彦が、ギョッとしてオレを見る

そんなことが、あるわけないっ僕の努力が、君みたいな庶民の男に負けるはずが無いんだっ

オレはみすずの背中を指差す

みすずはここにホクロがあります

あとお腹のここにも

司馬貴彦は凍り付いていた

みすずの身体でオレの知らない場所はありません

うんみすずの裸は、もう何度も見た

全身をくまなく

こうやって服を着ていてもみすずの裸身が詳細に思い出される

あと、みすずはキスする時いつも、オレの右側から顔を近づけます自分の鼻をオレの頬に擦り付けるのが好きです

オレは真っ直ぐに、司馬貴彦を見た

オレとみすずは知り合ってまだそんな時間は経ってなくて一緒に居る時間も、あなたよりは短いのかもしれませんけれどでも、オレだって知っていますオレしか知らない、みすずの好きなことみすずの、可愛いところをたくさん

オレに抱きついたままみすずは言った

はいあたしはもうこの人の女ですから

司馬貴彦が小者なのはそういう人物をみすずの婚約者にすることで、香月家の中に波乱を起こそうという閣下の計画があるからです

困ったものです

あんまり暑いんで、思い出したこと

学生時代に警備員のアルバイトをしていたことは、何回か書きましたが

やっぱりこんな暑い頃に東名高速道路の補修工事の現場に送られたことがあります

それは高速道路の中の数カ所で、同時に工事が行われる集中工事で

私たちは、警備会社のバスでそれぞれの工区に連れて行かれて、

はい、ここで5人降りて

とか言われながら、現場に着かされました

さて夕方の3時頃に、私たちの担当していた工区の工事は終わったのですが

工事車両は、みんな帰ってしまい警備員6人だけ、高速道路の中央分離帯に残されました

すぐに警備会社の迎えが来ると思ったのですが

来なかった

ずーっと、車がバンバン走る中央分離帯に、6人だけ残されました

それも全員初顔の人ばかりで

暑いし飲み物も無いし

だいたい、自分のいるところが何処だか判らないし

下手に移動すると、迎えの人間が見つけられなくなるおそれもあります

ちなみにまだ携帯が普及する前の話で、ポケベルを持った人はいても、携帯を持っている人は一人もいませんでした

みんな、直射日光のグリーンベルトにグテッとしている中

なぜか、一人の男の子だけが異常に元気で

延々と、自分がこれまで体験してきた風俗店での体験談と

自分の地元のお勧めの店の話をしてくれました

5時間ほど

ええ、警備会社が私たちが戻っていないことに気付いて

迎えの車が着いたのはすっかり日の暮れた午後8時過ぎでした

あの5時間は何だったんだろう

245.心理ゲーム/ブラフ対ブラフ

ふはははははははっ

不意に閣下が笑い出した

日本有数の名家の当主であり、権力者である老人がオレと孫娘を笑う

面白いとても、面白いねお前たちは、どこまで私の予想を裏切ってくれるんだ

閣下は声と口元は楽しそうだが、眼は鋭い

怒っている

怒っている時に笑っている人間は怖い

貴彦くん

閣下は、自分が直に教育しているエリート青年に声を掛ける

は、はい閣下

恐る恐る司馬貴彦は、老カリスマに振り返った

申し訳無いねみすずのことは、諦めてくれ

サラッと語る閣下に、司馬貴彦は

しかしそれでは、僕はど、どうなるんですか僕

ここまで来ても司馬貴彦は、自分のことにしか興味が無いらしい

君には相応しい女性を、別に見つくろってあげようだから、みすずのことは忘れなさい

閣下の眼が、司馬貴彦の心を射貫く

これ以上、みすずには関わらない方がいいと思うよこのまま、みすずと結婚したら君は香月グループにおいて、むしろ不利な立場になるだろうね

閣下は、みすずに何らかのペナルティを課そうとしている

あるいは

君も嫌だろうすでに他の男によって汚された、破廉恥極まりない娘と結婚するのはこんな娘が居るのは香月の家にとって、不名誉なことだとは思わないかい

閣下は、意地悪そうにニタァと微笑む

みすずを処罰するどころか閣下は、香月家からみすずを追放しようというのか

いずれにせよ閣下に見捨てられたみすずと結婚したところで、香月グループの中で出世の目は無い

むしろみすずの夫だということが、足枷になる

わ、判りましたそ、そういうことでしたら僕は閣下に全てをお任せ致します

司馬貴彦は、閣下の提案をあっさりと受け入れた

結局この男は、最初からみすずを香月家と縁続きになるための道具としてしか見ていない

みすずがこんな不良娘に育ってしまったのは、全て私の不手際だ大変申し訳ない

いえそんな、閣下

だからねもし、貴彦くんがどこかの私の顔の効く家の娘さんで気に入っている子がいるのなら私が話してあげてもいいんだよ