オレは、怯えているルナさんに言った
すなわちルナくんについての心配は、無くなったということだ
ええ、黒森家の子として受け入れるわ
ジッちゃんとミナホ姉さんが、そう言うが
鷹倉夜見子は、返事をしなかった
お姉様、ボク、行くよ
ルナ
だって、ボク巫女になるのは無理だから夜見子お姉様のような力ボクには無いんだもん生まれつき
ルナ、ルナ、ルナ
お姉様ぁ
月子さんは、2人の横で困惑している
やはり、月子さんと夜見子さんの間には深い溝があるようだ
では、そういうことでいいなそろそろ、わたしは帰るよ後は、お前に任せる
ジッちゃんは、オレにそう言うと席を立つ
関くんは、鷹倉家のお嬢さんたちの警護に残ってくれ今晩一杯は、油断ができん藤宮くんもだ
はい、閣下麗華は、閣下をお見送りして
翔姉ちゃんと、レイちゃんが動く
明日良い結果を見せてくれることを期待しているよ
そう言うジッちゃんに鷹倉夜見子は
絶対に認めていただきますわ香月様を失望させるようなことは致しません
妹を抱き締めたままジッちゃんを睨んで、そう言った
ドアが静かに閉まる
ジッちゃんとレイちゃんが退室した
廊下で待機していた大徳さん、張本さんの専任警護人たちと校舎の玄関へ向かう
ジッちゃんが学校から出発すれば周囲の香月セキュリティ・サービスの警護部隊も撤収するだろう
オレたちも早くお屋敷に戻った方がいいな
ヤクザ組織の連中が、押し掛けて来る前に
なぜ、あなたは平気なのですか
ジッちゃんが居なくなった途端、鷹倉夜見子はオレに言った
平気って何が
いいです改めてお話を致しましょうもう、香月様はお帰りになられたのですから
わたくしたちは、あなたに快適な部屋と食事、快適な生活を要求致しますわたくしたち3人の完全にプライバシーの保たれた
今、香月様とお話のあったルナをわたくしたちから引き離すという件も、撤回していただきますよろしいですね
鷹倉夜見子はオレを睨んで、そう言う
えっと何で
そうしか、オレには答えられない
わたくしが鷹倉夜見子が、こんなにもお願いしているというのにその態度は何ですか
いやお前の態度こそ、何なんだ
二度とわたくしに楯突くことは許しませんいいですわね
あの、夜見子さんてもしかして
馬鹿なの
オレの言葉に夜見子さんは、顔を真っ赤にする
おふざけにならないでっ何なのあなた
ああ、これが
激怒ぷんぷん丸状態というやつか
無理です、夜見子様
横から月子さんが、妹に言う
この方は、香月様と同じです夜見子様の巫女の力が、通じないお方ですわ
だから香月様は、この方にわたくしたちをお預けになられたんですわ
夜見子さんは
そんなことはありませんわよまだ、香月様の気が残っているからだからですわ
ギッと、オレを見る
香月様のようなお力をこんな若い人が、持っているはずがないですわ
オレはみすずと美智の方を見る
夜見子さんが何を言っているのか、説明してくれるか
2人は昨日、京都まで行っている
夜見子さんのことも前から知っているみたいだし
そういや、みすずは夜見子さんが苦手みたいだったよな
本当に旦那様は凄いです
みすずは感激の眼をしていた
ご主人様は素晴らしいです
いやだから、説明してくれよ
あたしは夜見子さんとお話すると、夜見子さんのご要望をただただ承るだけになりますわ
はいちゃんとした会話にはならないんです夜見子さんが、ただわたくしたちにして欲しいことをお話になられるだけですそして本当に、そうしてあげないといけないように感じるのです
みすず何を言っているんだ
夜見子さんの意思通りにならなかったのはお祖父様だけですわ
ジッちゃんだけ
お祖父様は亡くなった巫女様に、何か技を授けられていらっしゃるからだとおっしゃっていましたが
巫女の支配力を受け付けない術
旦那様はそんなことも無いはずなのに、平然と夜見子さんとお話なされるんですもの
あら、気が付いてないの普段なら、あんなにお喋りな寧がずっと黙っているのよ
オレが寧を見ると
ちょ、ちょっと外の空気を吸ってくるよここヤバいって
暗い顔で、寧が立ち上がる
あ、寧お姉ちゃんあたしも
ああ、フラフラしているな
翔姉ちゃんちょっと見てあげてくれるか
翔姉ちゃんが2人を連れて廊下に出る
はぁぁ空気がおいしぃぃぃぃ
廊下から、寧の絶叫が聞こえる
部屋の中ちょっと変だよ
そんなマナの声も
彼女も気を使うようです
美智が夜見子さんを見て、オレに言う
そうかオレ、こんなに人に気を遣わない子、初めてだけど
違いますご主人様気遣いでなく気使いです
夜見子さんが何かの力を持っている
おそらく、本物の巫女ならどんな相手にも、自分の意志に従わせることができるのでしょうが今の彼女は不完全です
ジッちゃんの言っていた巫女の力
巫女の力が本当にあるのならその力は、ヤクザの抗争の仲介にも使われたはずだ
出会った人間に自分の意志通りに従わせる力どうやら、それが巫女の力のようですね
芝居の裏方の仕事をやっていた頃に
謎のカリスマに何人も会ったんです
だいたい、劇団の主宰とか、演出家とかなんですが
何でそこの場面でそんなことが必要なのか判らないけれど綺麗な女優さんを脱がすとか、やれちゃう人が
理屈で考えればおかしいことなのになぜか、みんなその人の言うことをきいてしまう
性的なことも、金銭的なことも我が儘というか、無茶苦茶としか思えないことを平気で人に要求して従わせる
宗教の教祖なんかも、きっとそうなんでしょうけれど
ただ多くの場合カリスマ氏は、みんなを自分の欲望通りに従わせることは凄いのですが
芸術的、技術的には才能の無い人も多いので
ただただ狂った芝居が出来上がるだけです
しかも、カリスマ氏の支配から脱することのできない間は
そこの劇団のメンバーは、ずっと狂った作品作りに時間と労力と若さを吸い取られ続けるだけという
そう言えば、1970年代にはフリーセックス劇団とかまでありましたから
劇団に入ったら劇団員同士は、セックスを拒んではいけないという男も女も、求められたら必ずセックスしないといけないというルールです
もちろん、若くて綺麗な女の子が一方的に不利なのですが
そういう集団を作るようなカリスマも居たわけです
私は裏方なので舞台本番しか接しませんから、そんなに無茶なことはされませんでしたが
ああ、カリスマの信者の人に絡まれたことはあるなあ