克子姉と渚に、娼婦としてのノウハウを教えたのはミナホ姉さんだ
つまり、お客の様子を事前にモニターで確認しておくというのは、ミナホ姉さん自身の流儀だったんだろう
お客様への対応がお上手なお姉様たちのお仕事の様子をこの部屋から、勉強させていただいたこともあるし
やはりそうなんだ
昔は監視カメラも集音マイクも、今みたいに性能が良くは無かったけれどね暗いところは、全然映りが悪かったわホントビデオカメラは、この15年で進歩したわよね
ミナホ姉さんは今年、28歳
白坂創介に、拉致されて、この屋敷に連れて来られたのが12歳だから
去年の秋に、娼館が休業となるまで15年間、この部屋で監視カメラの映像をずっと眺めていたんだな
さて、とりあえず、大事な話をしてしまいましょうか
あなたたちの経過はここから、観ていたから全て判っているわだから、改めての説明はいらないわ
オレと鷹倉姉妹たちそれに、寧やみすずたちの様子は、全て観ていた
それは判っていたけれど
オレとしては、申し訳ないんだけれど月子も、夜見子も、ルナも、オレの女として、オレたちの家族に加えたい
あら何が申し訳ないのかしら
ミナホ姉さんはクスっと笑う
それは、あの色々とミナホ姉さんの考えていた計画とは、違うことになっちゃってるだろうから本当に、申し訳ないんだけど
今回の件は、そもそもは娼館の再開に、新しい娼婦が必要で
その候補として、ジッちゃんが鷹倉3姉妹を、ミナホ姉さんに紹介してくれたわけで
3姉妹の全員が、娼婦にはならないというのはミナホ姉さんの娼館再建計画にとっては、良くない結末なわけで
別にあたしは、何も困ってはいないわよ
あなたが、娼婦の適性の結論を出すまでは何も決めないつもりだったし鷹倉さんたちは、娼婦にならないのね判ったわそれならそれで、仕方ないわね
さらりとそう、言い切る
えミナホ姉さん、どうして
いやだって、娼館を再開するには、新しい娼婦が、後2人ぐらい欲しいって言ってたじゃないか
ええ、その通りよ新しい娼婦は探さないといけないわ
だからそれで、ジッちゃんからあの3姉妹を紹介されたんだろそれで、ルナは若すぎるから、オレが引き取ることになってでもさ、それでも月子と夜見子が、このまま娼婦になってくれたら、丁度良いとかミナホ姉さんは、頭の中では、もうあいつらを娼館の新戦力として計算していたんじゃないの
月子も夜見子も美少女だ
立ち振る舞いも、良家のお嬢様として完璧だし
高級娼館の娼婦としては、最適な人材だろう
オレが全てを引っ繰り返してしまったから
それで、申し訳なく思っているんだけれど
あたしは、まだ何も決めていないわよあたしね取らぬ狸の皮算用はしないのよ
まだ完全に決定されていないことは絶対に、これから先の予定計画には入れてはいけないのよ可能性は考慮しておくにしても事業計画から外しておくのそれが、ビジネスのルールよ
まだ、決まっていないことは頭から除外しておく
まだ、あたしが娼婦だった頃にねビジネスマンのお客様が、よくご自分のお仕事のことで、あたしに愚痴を零されたのよあの会社とは、先代からの取引があるのに今回の取引で、思ったほど値引きしてくれなかったとか、あいつを引き上げてやったのはオレなのに、手柄を独り占めにされたとか、前の取引では、こっちが引いたんだから今度は、あっちが引いてくれると思ったのにとかね
全部自分の視点からだけの、勝手な思い込みよね借りを作ったら返すのが、ビジネスのルールだって、おっしゃってた方もいらしたけれどそんなルールは、どこにも明文化されていないからそりゃ周囲から見ても、余りにも不義理をしていることが明白なビジネスマンは、周りの人たちから相手にされなくなるけれど貸し借りをどの程度の割合で返すかは、人それぞれでしょ相手の都合に合わせるわけにはいかないわよビジネスなんだから
相手の会社の人に前回の取引で貸しがあるから、今回は返せって言われても今回の取引が、自分の会社の運命を左右するようなものだったらしかも、そのことは絶対に社外の人には言えなかったとしたら
不義理になるとしても自分の都合で、取引を押し通すしかない
ビジネスというものは、個人と個人の繋がりだけでできているものでは無いわだから、あいつには貸しているとかあいつは、後輩だから、オレの言うことには逆らわないはずだとか、裏付けが希薄なことを計算に入れてはいけないのよ
白坂創介みたいに相手のことなんて少しも考えない娼婦が死のうが、知ったことじゃないっていう男もいるしね
ミナホ姉さんは白坂創介に、娼婦に堕とされて
娼婦としての稼ぎも何もかも、白坂創介に一方的に奪われていた経験があるから
まだ、決まっていないことに対する予想は自分にとって楽観的すぎるか、悲観的すぎるかのどっちかなのよ人間て、自分は他人よりも幸運だと思っているかあるいは、不運だと思っているかそのどっちかだからあなたは、どっち
オレは自分は、人よりラッキーなことは判っているよ今のオレには、素晴らしい家族がいるからでもオレは、普通の人よりも頭が悪いから
悪いから、何
オレが一生懸命、頑張らないとオレのせいで、みんなを不幸にしちゃうだろそんなことには、絶対にしちゃいけないから
幸運だけど、頭が悪いそういう認識であなたは、上手に心のバランスを保っているのね
ミナホ姉さんがハッと溜息を吐く
話を戻すわ鷹倉姉妹は、全員、あなたの女になったのねそれなら、それでいいわそういう現実に基づいて次の手を考えるから
でもそれで良かったのミナホ姉さんとしては
どんな可能性になるか判らないから事前に、月子たちが娼婦になるとは決めつけていなかったとしても
こうなったら良いのにという、ミナホ姉さんの希望はあったはずだ
オレの決定はミナホ姉さんにとって、あんまり嬉しくないことなんじゃ
あたしはずっと、ただ流れを見ていただけよ
流れ
そうよどういう流れになっても、損をせずに済む様にそれだけを考えていたわ
オレが、どんな結論を出しても損をしない
もちろん、鷹倉姉妹が娼婦になったケースとならなかったケースでは、予想される収益は違うわよでも、結果として娼婦にならないことが判ったんだから、他の可能性のことは、もう忘れるわもしかしたら、得られたかもしれない収益のことなんかを考えるのは、馬鹿のすることだものそれは、もう手に入らないことは判っているんだから