おー、おー、ご苦労じゃったのぉ
大きな黒塗りのベンツからチョビ髭にサングラスのオッサンが下りてくる
ツカハラと、安藤じゃったのぉ覚えてるでぇぇぇああお前らのことは、ワシから上に報告しておいたるだから何の心配もいらんぞここは、ワシに任せてお前らは、とっとと関西へ戻れ
そんなこと言うて手柄は独り占めにするつもりじゃないでしょうね金子の親分さん
ツカハラが、ヘラヘラ笑いながらチョビ髭ヤクザに言う
ワシが、そんなにキンタマの小さい男かいな心配せんでええ、心配せんでぇぇこの金子にドーンと任せろやなあ
せっかくですが、金子さんおいらはうちの会長の命で動いてますから
安藤は、そう言う
だから、何やお前本部の人間の言うことに文句が言えるほど偉いんか
そういうことじゃありません
オメエみたいな駆け出しの若造に楯突かれるとはこの金子も、随分ナメられたもんじゃのぉクヤシイのぉクヤシイのぉ
おい、安藤金子の親分さんに失礼なことをするんじゃねぇ
自分に飛び火することを怖れて、ツカハラが間に入る
ほら、謝れ金子の親分さんにワビを入れんかいっボケぇ
しかし、安藤は
例え、本部の親分が相手でもここは引けませんおいらは鷹倉のお嬢の親衛隊長っスから
真っ正面から反抗する
そうかい、そうかい、ああ、そうかいどうしてもワシの言葉は聞けんちゅうことかいのぉ
申し訳ねぇっスが
ならお前も、この娘たちと一緒に死んでもらうことになるぜぇぇそんでも、いいんだなワレぇぇ
チョビ髭の親分が手で支持すると銃を持ったヤクザたちが、ゾロゾロと車から降りて来た
月子が、オレを見る
大丈夫だ
オレは、月子の手を握る
でも、先生確か、この車は
夜見子が、不安そうに言う
そう翔姉ちゃんが、さっき言っていた
この車には防弾処理は施されていない
これはどういうことです
安藤がチョビ髭の親分に尋ねる
へ、判んねぇのかこりゃ幹部会の決定なんだわ
ニイッと、金子というヤクザの親分は笑った
鷹倉の血筋の娘は全て完全に始末する鏖殺じゃい
何でです鷹倉の巫女が特別な存在だってことは、本部の親分さんたちだってみんなご存じでしょう
驚く安藤
上がそう決めたんだよ決まったことに、ガタガタ文句を言うんかあー、ホント、オメエはどうしょもねぇ野郎だな
金子はペッと唾を吐く
おい構わねえから、この車の中に鉛玉ブチ込め鷹倉の娘も、一緒に車に乗っている連中も、全て殺す最後は、車ごと燃やすぞ
そしてオレたちの居る車内を覗き込む
香月の警備のお姉ちゃんも美人だし鷹倉のお嬢ちゃんたちも、このまま殺すのは惜しいわな本当なら、一晩くらいマワして楽しみてぇところだが可及的速やかに、確実に仕留めて来いってのが、上からの指令なんだわ悪くは思うなよ
ああ、そこの兄ちゃんオメエは、別に死んでも惜しくはねぇなまあ、成仏してくれこんだけ綺麗なネェちゃんたちと一緒に死ねるんだ兄ちゃんの人生に、一遍の後悔も無しだそうだわなっ
勝手なことを言う
そして、金子は安藤の部下たちを見て
ほんでオメェらはどうすんだオメェらのアニキは、ワシに楯突くつもりらしいがのオメェらも、これ以上ワシに逆らうんならみんなまとめて、一緒にブチ殺すぞ、コンラァァああ、どうすんだ、お前たちは
金子の怒声に、安藤の部下たちはお互いの顔を見る
あ、安藤のアニキ
お、オレらは
安藤から距離を取り
すんませんオレ、ガキが産まれたばかりなんで
オレも本部に逆らうようなことは、できません
申し訳ねぇっスアニキ
オレも、親を残して死ぬわけには
安藤はそんな様子の子分たちを見て
ああ判ったぜお前らとは、ここまでだ今まで、色々とありがとうよだが
ギロッと金子を睨む
おいらはここで、引くわけにはいかねぇんだわここで引いたら、おいらの男の面目が立たねえ
そして、月子に
お嬢死ぬ時は、おいらも一緒ですぜ
ただ、一緒に撃ち殺されるのを待つだけなのか
そんなの受け入れられるか
オレは指示を出す
ええ突入どうぞ
翔姉ちゃんが呟く
おそらく通信機はさっきから、ずっとオンになっている
そこまでだ全員動くな
大音量のスピーカーの声と同時に、カッという明るいライトの光がオレたちを包み込む
ライトの光源は、1つじゃない
オレたちを取り囲むように、あちこちから目映い光線が
大型の車輌の上に、投光器が付いているようだ
少なくとも5台
何じゃ何じゃ、何じゃ、何じゃぁぁっ
金子の親分が慌てて、叫ぶ
香月セキュリティ・サービスだこちらも、完全武装でお前たちを包囲している
ヘルメットに防弾チョッキの警護員たちが一斉に姿を現す
その数およそ、100人
ああ、みんな手に自動小銃らしいものを抱えている
香月セキュリティ・サービスが、何もしてないはずが無いもんな
鷹倉姉妹を追って東京へ潜入したヤクザたちの掃討には香月セキュリティ・サービスの全部隊が出動している
現場責任者の翔姉ちゃんがオレたちを囮にして、敵を呼び込んだんだ
これぐらいの対応になるのは、当たり前だ
関さん4班と7班でこちらへ向かっていた敵4グループ、車輌12台をすでに制圧しています5班と13班が、さらに3グループを追尾中です
通信機から報告が聞こえてくる
関了解敵の実働部隊を制圧したら、いよいよ頭を潰すわよ品川のホテル・ガニマールに居る連中も制圧して
6班に指示します
そんな車中のやりとりを聞いて金子親分は
な、何でワシらの宿を知ってるんじゃい
香月セキュリティ・サービスをナメたらあかんぜよ
翔姉ちゃんは、ニヤッと笑った
くっ、こっちはピストル持っているんだぞお前らを人質にして、この場は
シュルルルン
風を切る音
ぐぇぇぇっ
むぎゃぁぁ
どきっちょっ
金子親分の部下の銃を持っていたヤクザたちが次々に倒れている
お初にお目に掛かります
さっきまで誰もいなかった場所に3人の男の警護員が立っていた
わたくし香月セキュリティ・サービス、トップ・エリートの不死身のジュンです
同じく静かなるチョーサクです
ミナミダ・ハルオでございます
それでは
そして大虐殺が始まった
全員、制圧・確保完了致しました
車の外で香月セキュリティ・サービスの隊長が、翔姉ちゃんに敬礼する
倒したヤクザたちを搬送する護送車まで、持って来ているらしい
ヤクザたちは安藤を残して、全て車に乗せられた
ご苦労様ここはもういいわ撤収して