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私ところで、今回は雪で一緒に観に行くはずの人が来られなくなったって言ってたけれど

母そうよ

私もしかして毎年、家族に内緒で、この観劇会に来てた

母まーね

商店街でこんな会があったなんて、一度も聞いてなかったもんなあ

806.喜代原愛 / 手間の掛かる女

愛さんがヨミに心を掴み取られるっ

オッケーイうんとねあなたは、これからわたくしの言うことには、何でもその通りにしなくてはいけませんここまで刷り込み《インプリント》ッッ

うぎゅっ

ルナが背後からブースト・アップした、ヨミの従わせる力は強烈だ

はい、判ったらお返事っ

ニコッとヨミが、愛さんに微笑む

愛さんは震えながら、答える

その眼は、ヨミを見たままだ

視線で、眼力で愛さんの心は、ヨミに刺し貫かれて身動きが取れなくされている

で、先生この先は、どんな設定にする

設定

兄さんの望むようにこのお姉さんの心は、改造できるから

ヨミの背中に手を当てて、ルナが言った

ヨミは愛さんを見つめたままだから、オレの方を振り向くのはルナ

今のこの姉妹は感覚を共有し合っているんだろう

ホントに改造とかできるの

可奈センパイが、驚いて尋ねる

できるんだよねっもう、どんな設定でのどんなキャラにでも変えられちゃうよっヨミちゃんたちの力は凄いんだからっ

寧が、オレの代わりに答える

へえ、それじゃあ愛を、ノブに絶対服従の奴隷少女とかにしちゃうこともできるの

うっっっ

愛さんが、ビクッと震える

全然、余裕でできるでしょあ、でもヨッちゃん、そういう献身的な愛の奴隷は、もういっぱい持っているもんね例えば、あたしとか

呆れ顔の可奈センパイ

なぁに、何か文句があるのっ

いや、だって寧さんは、ノブの愛の奴隷っていうよりノブの方が、ペットの愛犬みたいに寧さんに懐いているじゃないですか

えっ、嘘っ可奈ちゃんからは、そう見えるのっ

見えますよホント、いつも、寧さんの方がノブに**してって言ってノブが、言われた通りにやってるじゃないですかノブは、一度も文句とか不平とか言わないし

いや、ヨッちやんはあたしたちの誰にも、不平や不満やグチとか言わないよっ

それでもノブの方が飼われているみたいに見えてますけれど

まあオレは、みんなに命令とか、あんまりしないから

というか、オレが何か命じる前に、みんなどんどん自分で考えて、何か始めているし

えーと、先生の愛の奴隷でしたらヨミがそうですから

ヨミとルナが、可奈センパイに言う

アタシもなのネ

克子姉とイーディも、そんなことを言い出す

ということで寧ちゃんと可奈ちゃん以外は、みんな愛の奴隷ということになりました

おどけた口調でそう言う克子姉に、可奈センパイが

ちょっと待ってそういうことなら、あたしだってノブの愛の奴隷よそう言う宣言した覚えがあるものっ

ずるい、可奈ちゃんあたしだけ、除け者にするつもりなのっ

もうそろそろこのお姉さんの設定を決めて下さい

呆れた口調で、ヨミが言った

その通りだしかし

確か一度、心を変えてしまったら、もう元には戻らないんだよな

はい、先生MAKE OFではなくMAKE FROMです

ヨミが、答えた

確か、MAKE OFは作られた元の材料に戻せるもので

MAKE FROMが作られた原料に、もう戻せないものだっけ

木で机を作るはMAKE OFで

ブドウからワインを作るはMAKE FROM

机はバラせば、木のままだし木の本質を残しているけれど

ワインは、ブドウに戻すことはできないそのもの自体が、変質してしまっている

清美叔母様の時にご覧になった通りですわ

巫女の力で変えられてしまった心と記憶は2度と元の状態には戻らない

オレたちは、そのことを清美さんの悲劇でよく知っている

狂って歪んでしまったからこそ、ジッちゃんは清美さんが自死する方向へ導くしかなかった

かけられた力が解けたら、元の状態に戻るなんてマンガの世界だけだものな

でも、一度刷り込んだ設定の上に、別の設定を乗せることもできますわ

でも、それは再修正でしかない

大きく変化させた心のベクトルは、全面的には変更し直せないだろう

どうしたら、いいのかな

オレはヨミの眼を見つめたまま、震えている愛さんを見た

どんな設定を施すことが、この人にとって最良なのだろうか

環境が習慣を作り、習慣が人生を決めるって言うわよね

まずもう一度、確認しておきましょうこの子が、どんな子なのか

この子の場合は、環境と習慣で家族、特にお母さんに守られすぎて今まで育って来たから人に依存するだけの、自分では何もできない子になってしまっているわ

しかも、少しでも心にプレッシャーを感じたら、パニックを起こして思考停止に陥るだけメンタルは、極端に弱いホントどうすることもできない子よね

愛さんは、自分では、今の自分を変えたいとか全然、思ってこなかったんだろうな

今までは、困ったら誰かが助けてくれたわけだし本当に、どうしようもなくなったらお母さんに泣きつけば良かったんだから

自分にとってキツイことに耐えるとか、ガマンするということを全然、体験してきていない

何でも他人にやってもらって来ているから眼の前に起きていることを、自分で対処することもできない

ていうか、感情のままに生きているだけで世の中を、客観的に論理的に見る眼に欠けている

数日前のメグがこうだったからよく判る

ただメグは、人に対して依存しないで、自分の内面にひたすら溜め込むタイプだから

自分の思い通りにならない苛立ちと不安をただただ抱え込んで、バンバン爆発させていたんだよな

あたし、思うんだけれど結局のところちゃんと話したら、判ってくれるとか丁寧に教えてあげたら、理解してくれるっていう考えが、大きな間違いなのよねそれこそ、戦後の民主主義教育の幻影よねゲンジツにはさ、判らない子は、どれだけ説明して判ってくれないもの話し合いでは解決しないのよ自分の望みとゲンジツが違っていたら、もう論理的な思考を完全に停止して、誰が何を言おうと耳をふさいであーあー、聞こえなーいってなっちゃう人が多いんだからそんなの話し合いでは、何も解決しないわよ無駄な時間だけが浪費されるだけで多くの人間はさ、冷静に、相手の言うことを良く聞いて、人の考えを理解しよう、尊重しようなんて奇特な人より、何これ、気持ち悪いあたしの気分が悪くなるような話は、あたしに聞かせないでそうじゃないなら、あたしのことは放っておいてって反発して、ひたすら意見の違う人に敵対するだけの人の方が多いんだから

そうだメグも、延々と何度も説明しても、全然判ってくれなかった