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と言っても、オレが作った生地を、愛がパンの形に成形にしただけだ

それをさっき、第2弾のパンと一緒にオレがオーブンで焼き上げた

他のパンと生地の組成や、発酵過程は同じだ

だから味は、他のパンとそんなに変わらないはずだ

ただ愛のパンは、みんな形も不揃いで、見た目が悪い

商品として、店頭に出す品質は無い

克子姉は、絶対に許可してくれないだろう

これを愛が

愛のお母さんは、驚いている

ママに食べて、欲しいの

愛は小さな声で、そう言った

そうだ、このパンは愛が母親のためだけに作ったものだ

愛のお母さんは、少しパンを見つめてから

小さく千切って

うんパンねパンの味がするわ

パンだよ

何だこの変な会話は

この母親嘘でも美味しいとか、言ってあげられないんだろうか

信じられないわ愛が、こんなものを作るなんて

愛の母親は過保護の余り、愛に何もさせなかった

わざと、愛を何もできない子にしていた

娘が自分に依存し続けるために

ま、ママみたいにはできないの愛は

愛は小さな声で、そう言う

ママは凄い何でもできちゃうからパンだって他の人たちみたいに、上手に作っている

愛の母親は、お屋敷に連れてきた日からずっとアニエスやマナや瑠璃子たちと一緒に、50円安い方のパンを作っている

というか、作らせている

今、この部屋に居るコヨミちゃんやルナも一緒だ

愛のお母さんをみんなと、特に子供たちと交流させるために毎日のパン作りの時間を利用しているのだ

あ、あたしは愛は、手が上手く動かなくて綺麗にできないのにママは、パンだって上手だから

母親が、他の子たちとパン作りしている様子は、隠しカメラの映像で愛に見せていた

直接、同じ部屋に入れると今、この母娘はお互いを意識しすぎて、酷く緊張してしまうから

ママは学生のころに、パン教室にも通ってたことがあったのよ

愛の母親は、愛に応える

そうなんだ愛、知らなかった

愛はママは、何でもできるって思ってたけどでも、どうして何でも上手なのかは一度も考えたことがなかったママは、何でもできるのが当たり前だと思っていたから

そうなのママはねママだって、色々勉強して色んな人に教えていただいて、できるようになったのよ

張り詰めた空気の中で母娘の会話が続く

ママはすごいでも、愛は上手くできないから

ママみたいに作れなかったから

悲しげに、自分の作ったパンを見る

何言ってるのよこれが、愛の最初のパンなんでしょ最初が下手なのは、みんな同じよ

可奈センパイが、愛のパンを1つ取って食べる

うん、美味しいこんなのさ、慣れよ慣れ何回も作っているうちに、上手になるわよ愛だってさ

可奈センパイが、そう励ますが愛は

愛は上手くはならないですきっと

暗い顔で、そう呟いた

はあ何でよ誰だって上手くなるわよこんなのさ

でも、愛は愛だから

愛の声は、深刻だった

愛はきっと、できないです愛はそういう子だから

愛の病巣は、ホントに根深い

愛は1人ではちゃんとできない子だから

子供の頃から、ずっと何も出来ない子として、育てられてきたから

ミセス・キヨハラこれが、アナタの教育の結果なのネ

イーディがパン工房に戻って来て、愛のお母さんに言う

本当なら、克子姉の様な大人が話すべきことなんだろうけれど

克子姉は、この時間は売り場から離れられない

寧とメグが、売り子を手伝っている

アナタはお嬢さんをコンプレックスの塊にしてしまったノネ

愛のお母さんは、悲痛な声を上げる

あたしは、そういうつもりで娘を育ててきたわけではないわ

辛そうな表情で、愛娘を見る

あたしはただこの子を守ってあげたかっただけですわ

そうあたしは、全然、そうじゃないと思うけれど

あたし、ここ何日かこの子と一緒に暮らしているけれど、この子が笑ったところを一度も見たことがないわこの子ったら、いっつもお腹が痛いみたいな顔しててさ眉毛が八の字なのよいっつも、もう死ぬみたいな顔しててさ

そうだオレもまだ、愛の笑顔を見たことは無い

そんでさ今、こうやってお母さんと話しててさ普通なら、母親と一緒ならもうちょっと、ホッとした顔しているわよね何でこの子は母親に叱られるんじゃないかって、ビクビクしているわけ母親が、全然安心できる相手になってないみたいよんなんで、どうして娘を守ってこられたわけオバサンだって、この子を怯えさせる要因の1つになっているんじゃないの

あ、あたしが愛を怯えさせている

だから、ブッチャケさオバサン、娘さんの笑っている顔とか見たことあるわけ

雪乃の強い問い掛けに、愛の母親は

あ、愛はうちの子は、真面目な娘ですから

はあ何よそれマジメだと笑ったりしないの笑顔もダメなの

ユキノ、ちょっと静かにしていてネ

イーディが、雪乃を制する

ミセス・キヨハラアタシは、この数日間、娘さんだけでなくアナタのことも、ジックリ観察してきたケレドSORRY、失礼を承知で申し上げマスガアナタも、お嬢さんと同じで、全然、日常生活で笑わないで過ごされてきた方なのネ多分、まだ小さかった頃からソウデショウ

愛のお母さんは笑わないで、大人になった人

う、うちでは笑ってしまうような、不真面目なことは何もありませんから

愛の母親は言う

そうネアナタのお宅へ行った時余りにも、清潔で整理整頓されていた室内を見て、そう思ったヨ

そうだイーディの言う通り

愛の自宅は、変だった

愛のお母さんによって、徹底的に掃除され尽くしていて

インテリアから何から、愛のお母さんの趣味で完全に整えられていた

う、うちのことはあなたみたいな子に、文句を言われる筋合いはありませんわ

苦しそうに、愛のお母さんは答えた

確かに、自分より遥かに年下のしかも、妙な日本語を使うアメリカ人少女に意見されるのは頭に来るんだろう

しかし愛の母親は、ヨミの巫女の力で、オレたちへの絶対服従を心に刻みつけられている

しかも、オレたちが命じたのは服従だけであって

オレたちを盲信しろとか、信じろ信じ切れというような思考停止に繋がる指示は出していない

だから、愛も愛の母親も、オレたちに身体の自由を縛られたままこれまで生きてきた自分自身の人生経験や、その中で培った自分の考えなんかは、しっかり心に残したままになっている

オレたちは、彼女たちの自由意思までは操作していない

それは、そうネデモ笑わない親が、笑わない娘を作ってしまうというのは、悲劇なのネ不幸の連鎖ナノネ