2度と、パン屋の手伝いなんてさせないからっ
そうよ喜代原さんは、あたしたちが付いてないとダメな子なんだからっ
相変わらず、外では愛のクラスメイトが、愛の保護者気取りで喚いている
愛行って来てくれ
怯む愛
オレはいつものやつは使わないからな
シャッフルによる、再起動をオレは使わない
だって、愛はもう自分でアレが使えるだろ
自分で自分の心を整えて行け愛
愛行ってらっしゃいここがあんたの勝負よ
何でもいいから、静かにさせてきなさいよねあんたが行かないと、治まらないみたいだから
頑張って愛さん
可奈センパイ、雪乃、ルナ、コヨミちゃん
あうあうあう、いいい
判った、行くんだな
うううあう
愛は、小さく頷いた
O.K.ドアは、アタシが開けるカラ3、2、1で、GOなのネ
イーディが、外へ繋がるドアに張り付く
イイネ3、2、1
愛は、ゴクリと唾を呑み込んだ
イーディが、思いっきり
蹴り飛ばしたような勢いで、ドアを開けた
あううううう
外の売り場の光景は
監視カメラの映像で見るよりも、凄いことになっていた
まだ昼休みで、そもそも学生食堂が混んでいるのに
しかも、この時間帯は元々、食後のデザート用のパンを買いに来ている生徒も多い
そこへ、愛のクラスメイトの5人組が、克子姉を吊し上げようと大騒ぎをしているから
ホントに、学食中の大人数の生徒たちが一斉に突然現れた愛に注目していた
百人以上の視線に一気に晒され愛は
あああ、あううううう
パニックに陥りそうになるが
喜代原さんやっと出て来たわねっ
ほら、一緒に教室に帰りましょう
喜代原さんのバイト料は、きっちり支払わせてあげるからねっ
こんなところで、強制労働させられて可哀相にっ
あたし、**新聞に投書してやるんだからっ
5人のクラスメイトが、口々にそう言った瞬間
あううしゃっしゃっふるるるるるッッ
まるで変身する魔法少女のように大きな声でシャッフルと叫んだ
どうしたのあんた
愛の様子が、余りにも真剣だから笑いも起きない
学食全体がと静まり返る
あ、あたしは喜代原愛は、ここにここに居たいですいいえ、ここに居ます居るんですそうしたいんです
突然、愛は大きな声で、語り出した
山本さん、杉下さん、神部さん、神山さん、平野さんいいい、今まで、ダメな愛を助けてくれていてありがとう本当にありがとうございますありがとうございました
ペコリと、クラスメイトの女の子たちに頭を下げる
で、でも愛はこのまま、皆さんに助けてもらっているばかりじゃだ、ダメだと思うんです愛は、愛で自分のことを、自分でちゃんとできる子にならないとならないといけませんいけないんですホントにそうなの
必死に、心の中に湧き上がる思いを、言葉にして紡ぎ出している愛
頑張れ
どうしちゃったの、喜代原さん
まさかパン屋の連中にセンノーされちゃったの
いいんだよ喜代原さんはいつもみたいに、オタオタしていれば
そうそう、あたしたちが助けてあげるからさ
それが喜代原さんの味なんだし
あたしたち、優しいもんねーっ
オロオロしている時の喜代原さん、とっても可愛いし
パン屋なんかから、さっさと戻っておいでよ
ほら、こっちに喜代原さん
彼女たちは
本当に愛に友情を感じているんじゃないんだ
弱い愛を、自分たちが保護することに優越感を感じているだけ
見た目の可愛い愛を、ペットみたいにしてみんなで楽しんでいるだけだ
違う、違うの
愛は、必死に話し続けようとする
いいから、こっちへ出てきなさいよ
そうそう、話ならまた後で聞いてあげるからさ
喜代原さん、何言っているか、よく判らないから解読に時間が掛かるのよね
大丈夫、大丈夫ゆっくり聞いて上げるから今日は、神部が当番ね
え、あたしまあ、しょうがないかじゃあ、あたしが聞くからさ
もうすぐ昼休みも終わりだし教室に帰るわよ
そうそう、来週からはまた昼は、あたしたちと一緒にご飯食べるんだからね喜代原さんいい、判った
そんな言わなくても、判るわよ喜代原さんそこまでアレじゃないから
でも、この子トロいからさ
さあ、行くよ喜代原さん
いや、これだって愛の今までの性格が、こういう子たちを引き寄せてしまったんだ
愛の自業自得のところもある
だからこそ愛は、自分で解決しないといけない
ま、待ってあ、あたし
いいから、早くしなさいよっ喜代原さんのために、わざわざ迎えに来てあげたんだからねっ
そうよ喜代原さんは、黙ってあたしたちに付いてくればいいのよっ
あなたは細かいことは考えなくていいのよどうせ、考えても何もできないんだから
そうそう、あたしたちが居なければ、何もできないんだからホントに
そんなドアの先から聞こえてくる声に
アナタが、娘さんをこういう子にしてしまったノネ
イーディが、愛の母親に言う
愛の母親は、頭を抱えて突っ伏そうとする
何やっているのよあんたの娘が頑張っているんでしょあんたが眼を背けて、どうするのよ
雪乃が、愛の母親にそう言った
ちゃんと最後まで見なさいあんたには、そうする義務があるのよ
雪乃は母親に見捨てられている
白坂創介の事件の後、雪乃の母親は実家に閉じ籠もったままだ
雪乃やマナに連絡してくる気配は無い
ゲンジツに眼を背けて
あ、あうううう
さあ、帰るわよ早く、こっちに来なさいよったくトロいんだから
その言葉は友達に対するものでないと、オレは感じた
おい、お前らいい加減にしろよ
オレも工房から、売り場に出る
その子が真剣に話しているんだろちゃんと、聞いてやれよッッ
オレは全身の気を放出する勢いで、愛のクラスメイトたちに言った
一生懸命な人間を、バカにするなよッッッ
何ださらに、学生食堂の中がシーンと静まり返る
な、何だ
愛のクラスメイトたちもみんな、絶句している
ほら、話せよ
愛は落ち着いて、話した
あ、あたしは今までの喜代原愛は、自分で何もできないダメな子でしたいつも、みんなに優しくしてもらって助けてもらうばかりで本当に何もできない子でした
愛は心の奥底を吐き出すような声で、話し始める
でもこんなままじゃいけなくってううん、こんなままのあたしじゃダメなんだよってここの人たちは教えてくれて
ここの人たちオレたち
学食の生徒たちは、克子姉のパン工房のことだと思っているはずだ
そしてあたしに愛に、自分ですることを教えてくれてそれも丁寧に優しく、何度もやって見せてくれて一緒にしてくれてどこが違っているかも指摘してくれてちゃんと、できた時は褒めてくれてでも、絶対に手助けはしないでくれて