そんなことが現実に起こるだろう起こらないはずがないんだ予想もできないトラブルは常に起きる本当に信じられないような、突拍子のないことが起きる
避けられない失敗もある
いつも通り、いつもの味のパンを売るということは理想だそうであるべきだし、そうでなくてはいけないしかし、いつもそうできるわけではない
絶対は無い
だが、もしそのパン屋が職業として成立していたら客に認知していたら1日ぐらい味が落ちても、取り返せるそういうものなんだ
オレや克子姉のパンが美味しいものだと判ってもらえていたら
1日、どうしようもない理由でダメなパンを売ってしまったとしても
信頼が完全に地に堕ちることは無い
そこからまた取り返せる
いや取り返すしかない
失敗を恐れるなという言葉の意味は、もちろん失敗してもいいということではない失敗はやって来るんだよいずれにしてもだからこそ、失敗したとしても、自分の仕事を立て直すことができるように常に考えておくべきだ特に、自分と顧客の関係を
職業として何かをするということはずっと顧客がいるということだからな
うーん、大きな企業ほど新人研修とかあってミスに寛容な気がする
ブラック企業は、入った当日でもベテランと同じくらい仕事に精通していないと怒鳴られる
もちろん、新人に判るわけがないから怒鳴られる
ホント、陰惨ですよねその内に、また世話になるかもしれないけれど
前に働いていた現場に、インドの人がやって来て
初日に正社員に何でできねーんだ、コラと怒鳴られたら
入った初日からできるわけねーだろコラァと言い換えされていたのが面白かったです
日本人は、大人しすぎるみたいです
842.ハイ・ライフ / 雇用と経営
なぜ、私が君にこのような話をしたか判るかね
ジッちゃんの話は続く
それは、君の学習が新しい段階へ進んだからだ
オレが進んだ
今までの君は、克子くんの下でつまり、組織の一番下に位置していた
そうだ克子姉が指示を出して、オレがパンを作る
寧や可奈センパイたちは、あくまでも売り子だけを手伝ってくれていただけで
パン・コースの生徒として、工房で正式に実習を受けているのはオレだけだった
だがこれからは違う
うん愛がパン・コースに転科してきたから
新しく入って来た人材は、君と同い年だそうだが君は職場の先輩ということになる
ジッちゃんは、オレを見てフフと笑う
克子くんだけでなく、君もまたその新人を指導しなくてはいけない
実際、すでにオレは愛にパン作りのことを色々と教えている
他人を指導してみてどう感じた
自分が前に習っていて、もう充分判っていると思っていたことも人に説明してみると、新たな発見があったりああ、こういう理由でこうしているんだとか今まで以上に、仕事のことが判るようになった
感覚的に理解していたことも、人に話すためには理論的な言葉に変換しないといけないから
特に、愛のゆっくりとした思考スピードに合わせて、説明すると
判っていたはずのことが、ホントはもっと深い意味があったこととかまで、ハッと気付くことができた
そうだ人に説明し、教えるということは自分自身にとっても作業内容の再確認となるそれはとっても大切なことだ
克子くんと君の事業は君たち2人だけでは成立しない
オレと克子姉のパン屋は2人だけではできない
今だって売り子は寧たちに助けてもらっているし
50円安い方のパンは、マナやアニエスたちが作っている
いずれは誰かを雇っていかなくてはいかなくなるしかも、その人間は君たちの事業を行うために必要な技術や経験は持っていないかもしれないいや、大抵の場合はそうだろう
パン屋で働いた経験があって、すでにパンを作ったり焼いたりできる人がオレと克子姉の店に来てくれるとは限らない
確かに、オレたちが今、従業員を募集したら今までパンを一度も作ったことのない人の方が多いだろう
君は事業を継続していく限りは、ずっと雇用者を指導していくしかないのだよ10年も20年も、ずっと君の下で働いてくれる人材ばかりではないからな
ああパン屋なんて、アルバイトの子とかどんどん変わるよな
進学や就職で、オレたちのパン屋では働けなくなるとか
違う街に引っ越すとか
もっと、単純に他の仕事をすることになったとか
オレのことがどうしても気にくわなくて、辞めたいという人だって出て来るだろう
私の企業グループだって、そうだ毎年、新入社員が入って来て毎年、新人研修がある企業が存続する限り指導は続けなくてはならない
パン屋をやるのなら10年後も、20年後もオレは新しく入って来てくれた人に、パンのことを指導していかないといけないのか
君はそういう意識を、今から持っていなくてはならん
愛にパン作りを教えるということは
オレと愛との密接な関係とは関係無しに
オレが、今後パン屋としてやっていく時に、新人の子にどう指導していくかの練習だと思わなくてはいけない
君は経営者になるんだからな雇用者でなく
ジッちゃんは、真顔でオレを見る
雇用者は経営者側とこういう業務をすると契約で取り決めたことをするのが仕事だからなどのような仕事を、どのような手順で、どう進めるかは経営者側の決めることだつまり君が考えるんだ雇用者に何をしてもらいたいかを君が決め実際に、その通りに作業が進むように君が指導する
働いてくれる人に何をしてもらうか
どうやったら、オレが望むようにみんな働いてくれるようになるか
全部、オレが考え指導しないといけない
もちろん、実際に現場で働いている雇用者からどうやった方が効率的か意見を聞くことはできるだろうだが、雇用者の意見はあくまでも意見だ決めるのは、君だ経営者には、責任を持つ義務がある
経営者の責任
それで上手くいかなかったら、君のせいだ作業が滞るかもしれない、雇用者たちが不満を感じて辞めていくかもしれない特に、君の要求する作業が対価に見合わないと感じたらな
対価賃金お金
いや、金だけではないぞ情熱を持って一生懸命やるのに相応しい仕事だと感じたら、雇用者たちは少々賃金が低くても働いてくれることもある少々ならな何とか食っていける範囲ならということだ生活が成立できないのなら、どんな魅力的な仕事でもやる人間はいない死んでしまうからな
ああ、タダでもいいから働きたいなんて人は実際にはいないのか
そういうバカは、たまにいるだがそういうやつらは、生活に逼迫してはおらんからなだから、そんなバカなことを言うんだ明日の食事にも困る人間が特に子供のいる人間が、タダでもいいから働きたいなど言うはずがないもし、そんなことを言ったらそれは狂人だよ