そうオレは、ずっと働いてくれる人を募集し続けることになる
オレがパン屋を続ける限りずっと人を募集して、雇って、指導する
だが、現実問題として君が支払える賃金には限度がある
うん経営を考えずに、高い賃金を払っていたら店が潰れる
では、支払える限界ギリギリの高い賃金を出すのかそれでいいのか多少、賃金を抑えてその金は、店舗や商品の他の部分に使った方がいいのではないかそういう分野に投資して、さらに収益を伸ばすことを考えるべきなのではないか
ジッちゃんは、言葉を続ける
働いてくれている雇用者の中にも、いずれは技術に差が出るその時、君はどういう差を付ける完全に能力だけを見て、賃金をアップするのかそれとも、長く居てくれている人は一律に賃金を上げるか新人との差はどうする
人を雇うということは色々あるんだ
君は君の方針を決めなければいけないそして、その方針は君の事業に関わらず、君の事業に応募してくる雇用者の質を決める
ああ美味いパンを作るだけじゃ、ダメなんだ
良いスタッフが働きに来てくれる店にしないと
今は賃金だけのことを言ったが待遇、福利厚生、労働環境、考えないといけないことはいっぱいあるぞ
どういう募集をすれば、君が望む人材に巡り会えるのか君は、よく考えるべきなんだよそれが君の事業を成否を決める
単純な問題じゃないんだな
真剣に考えなきゃいけないことがたくさんある
色々と考えないいけないことがあるってことなんだね
そうだ君が経営者になるのならな
ジッちゃんは、笑った
それで最初の話に戻る
経営者になるのなら他人の失敗には、寛容になるしかない
失敗は気にするなって話か
雇用者は君ではない多くの経営者が、自分なら簡単にできることなのに、どうしてできないんだと失敗した雇用者に当たるそれは間違いだ
経営者と雇用者は違う立場が違う責任が違う会社に対する思いも違う経営者にとっては、会社は自分自身だ利益も評価も全て自分の実績となるだが雇用者は会社に愛着を持ってくれることもあるが、責任はその人間が与えられている権限の範囲だけだどれだけ社に利益を出しても次の給与額が多少アップするぐらいのことにしかならんその人間個人の実績になることはマレだ
ヒットした新製品は会社名しか有名にならないのが普通だ誰が作ったのかは、世間の人間には知られない企業を越えて、個人の成果だと世に知られるようになったのは青色発光ダイオードぐらいだよ
そうだな有名な電化製品とかだって、どこの会社の製品かは知っているけれど
社員の誰が作ったかなんて、知らないもんな
だから経営者は、雇用者に自分と同じ熱意や、努力や、無理を期待してはいけないもちろん、頑張ってくれる人はいるたが、我々が最初からそれらを期待するのは間違っているのだよ
オレだって頑張っているんだからみたいなことも働いてくれている人には、言ってはいけない
立場が違うんだから
さっきも言った通りミスもトラブルも、必ず起こる人は絶対に失敗する何もかもがノー・トラブルで進むことなど、ありえないそれが現実だ
だから君も経営者になるのなら、働いてくれる人たちが失敗するのは当たり前に起きることなんだと判っていたまえ
一々、怒ってたら間に合わない
もちろん、叱るべきことは叱る注意は喚起するそれはそうだが相手がどうしようもない人間でない限りは、終わったことは忘れてやれ
そうかその人がミスしたり、トラブルを起こしたのはオレの指導が悪かったっていう可能性もあるんだよね
そういうことだ特に新人は大目に見てやるしかない君も、自分自身がどう指導したりかを何度も顧みてみるべきだろう
ただし相手が、どうしようもない人間だと感じたら
速やかに解雇しろ世の中には、言って判らない人間もいるそういう人間は失敗を叱ってやることさえ、時間のムダだ
白坂創介やシザーリオ・ヴァイオラみたいな人間もいるもんな
たくさんの人間を雇い入れるとどうしても、そういう輩も紛れ込むああ、こいつは危険だと感じたら、可能な限りスパッと切り捨てろ多少の金を握らせてやってもいい笑顔でな大丈夫だやつらも切られることには慣れている少しでも金が手に入ったら君や君の会社のことは忘れてくれる
そうかああいう困った人間が、紛れ込んで来ることも考えておかないといけないのか
とにかく長引かせるな長いこと、君の会社に潜り込むとそういう人間は、毒を吐く他の雇用者たちにも悪い影響を与えるここは楽な場所だと居座られたら、追い出すのも大変になる
判った気が付いたらすぐに追い出すようにするよ
オレは、ポケットからメモ帳を取りだしてジッちゃんの言った大切なことを書き込んでいった
そろそろよろしいですか
顔を上げると瑠璃子が居た
お祖父様には紅茶をお兄様とお姉様には、コーヒーをお持ちしました
うむありがとう、瑠璃子
ジッちゃんは笑顔で、礼を言う
瑠璃子はオレたちの前にカップを置いていく
瑠璃子が、ニコッとオレに微笑むが
いや、ジッちゃんとの話に夢中になっていて、すっかり忘れていた
オレたちの周りに居る、名家のお嬢様たちは
相変わらず、こちらを注目したままシーンとしている
しかし旦那様ぐらいですわね
少し大きめの声で、みすずが言った
お祖父様から直接経営についてのお話をしていただけるのは
うむ私の私塾のやつらとも、2人きりでここまで話すことはない
まあ、仕方ない黒森くんには、立派な経営者になってもらわんといかんみすずのためにもな
周囲のお嬢様たちの気がざわめく
まあ、お祖父様それだけでございますか
ニコッと、みすずが祖父に微笑む
もちろん、違う
私も黒森くんのことが気に入っているからな
時々、こんな変な会話が書きたくなります
私の勝手な意見なので、気にしないで下さい
マンガのセントールの悩みの最新刊を買ってきました
SFで日常物で人外物で社会風刺で文明批評にもなっているというスゴイ作品だと思います
この先、どうなっちゃうんだろう
843.ハイ・ライフ / 4人の令嬢
オレとジッちゃんの話が、ひとまず止まる
瑠璃子が持って来てくれた、コーヒーを一口啜る
あ、みすずも瑠璃子もまだ立ったままだ
ジッちゃんとの会話に集中していて、椅子を勧めるのを忘れていた
というかオレが座れとか言っていいのか
そんなことを考えていると
みすず、立ったままではコーヒーも飲めんだろう座りなさい
みすずは、ようやく席に着く