わたくしは、あちらで皆様のお相手をさせていただいておりますから
ああ、向こうのお嬢様たちの座っているテーブルに、瑠璃子の席もあるのか
といっても、そういうテーブルは幾つもある
オレはサングラス越しにそしてお嬢様たちと眼を合わせないように注意しながら、周囲を見る
ジッちゃんとの会話のおかげで緊張が取れたうん、助かった落ち着いて観察できるぞ
あ、そうか今日は、みすずたちの超・お嬢様学校に通っている専任警護係のいるお嬢様だけに集まってもらったから
つまりそういうお嬢様は、みんな名家中の名家のご令嬢たちだから
ああ、なるほど
当然、香月家とはそんなに親しくない子もいるんだな
そういう子たちまで、警護についての特別講習会ということで来てもらわないと今日の会は意味が無いし
ああ、他のお嬢様たちと離れて、すぐ側に立っている警護係の少女と2人だけでテーブルを占めている子もいる
ああいう子たちの中には、香月家と敵対している家の子もいるかもしれない
いや、ただ単に一匹狼な性格なだけかもしれないけれど
普通のお嬢様じゃないんだから、変人もいるだろう
うちのみすずや瑠璃子も、かなり変わっているし
そうか友人は大切にしなくてはいけないな皆さんのところへ戻りなさい
ジッちゃんは、瑠璃子に言う
はい失礼致しますお祖父様、お兄様
瑠璃子はオレたちに頭を下げて銀のお盆を持ったまま、自分の席へ戻る
る、瑠璃子様香月閣下にお茶を差し上げるのでしたら、わたくしがいたしましたのに
そ、そうでございますわ瑠璃子様が、その様なことをなさるなんて
オレは最近、瑠璃子が家の中のことをしてくれているのに、すっかり慣れてしまっていたけど
香月家のそれも本家の血筋のお嬢様が、お茶を運んでくるなんてことは普通ではありえないことなのか
いえ、これはわたくしの勤めですから
お祖父様もお兄様もわたくしには大切なお方ですし他の方に、お願いするわけには参りませんわ
まあ、瑠璃子様はもう、あの方をお兄様とお呼びなのですね
お嬢様たちの視線がオレに集中するのを感じる
はい、わたくしのお兄様ですわ
オレは公式にみすずの相手として認知されている
そして、そのことをジッちゃんも瑠璃子も、喜んで受け入れてくれていることが示された
こうやって、お前は神格化されていくのだよ
ジッちゃんは、小声でオレに囁いたニヤッと笑う
胸を張っていろ平然としているんだ
ええ、これでまだ今日は意地悪な方が少ない方ですからね
みすずも、オレの耳にそう囁いた
し、失礼致しますわっ
1人だけでテーブルを占拠していたお嬢様がスクっと立ち上がって、こっちへやって来る
長い黒髪で長身の紫のドレスにパールのネックレスをした高校生ぐらいの美少女だ
その後ろには、もちろん警護役の少女が付いてくるこちらは短髪で、お嬢様学園の制服のままだ
ジッちゃんの背後に立っている、大徳さんと張本さんに止められないのか
2人の巨漢は全く動かなかった
つまりこのお嬢様と警護役の接近を脅威と見なしていない
あ警護の短髪の子が、ムッとしたのが判った
自分の戦闘力を無視されたように感じたのだろう
お初にお目に掛かりますわわたくし鳥居まり子と申します
お嬢様は、上品に礼をする
日頃、父が大変お世話になっております本日はお目にかかれて大変光栄ですわ
ジッちゃんは、このお嬢様を無視してみすずを見て
誰なんだねこのお嬢さんは
みすずは、平然と
鳥居まり子様とおっしゃっていますわ
みすずの知り合いかね
いえ、学年が違いますから確か、トリイ電子の会長様のお孫様ですわ
ああ、鳥居くんの
不機嫌そうに、ジッちゃんは言う
は、はい鳥居要三は、わたくしの祖父でございますわ
無視されていても、空気を読まずにお嬢様は自己アピールを続ける
だから、何なのだね
まるで虫ケラを見るような眼で、ジッちゃんは言った
あ、あのほ、本日はお招きいただきま、まことに
私が君たちを呼んだわけではない今日の会の主宰はみすずと瑠璃子だ
主宰に美子さんの名前が入っていないのは
急にジッちゃんの孫として認知された美子さんを、好ましく思っていない人もいるからだと聞いた
さっきの、オレやジッちゃんに出してくれたお茶だって以前なら、瑠璃子のお付きだった美子さんが運んできたんだと思う
それを瑠璃子が自ら運んで来たのはもう、美子さんがお付きではないことを示す意味もあったんだと思う
以前なら絶対に瑠璃子から離れてはいけなかったお付きの美子さんが、今、この場にいないのも
多分、翔姉ちゃんやレイちゃんたちと一緒に居るんだろう
この家は香月家本家の邸宅だみすずや瑠璃子が自由に友人を招くのは構わん君はこの子らの友人なのだろう私の客ではない違うかね
まり子さんは、ブルブル震えながら
し、しかしこ、香月様はみすず様たちのお祖父様でいらっしゃいますから
だから、何だね
ご、ご挨拶させていただかないとわ、わたくしが祖父や両親に叱られますわ
そんなことは、君の都合だ私の知ったことではない
ギロッと、まり子さんを睨む
まり子さん、閣下にお詫びして、すぐにこちらへ戻ってきなさい
向こうのテーブルからあ、この人も一匹狼だまり子さんに声が掛かる
ワインレッドのドレスを着た、大人っぽい感じの令嬢だ
まり子さんの理屈だと閣下は、わたくしたち全員の挨拶を受けて、1人1人にお声をかけて下さらないといけなくなるのよあなたは、そんなご面倒なことを閣下にお願いするつもりなの
この鳥井さんが満足するようにしたら
ジッちゃんは、ここにいるお嬢様全員と挨拶を交わしてお祖父さんは元気かねとか、1人1人と会話してあげないといけなくなる
申し訳ないがね私は香月という古い血の家の当主だが王族でも政治家でもないのだよ
王族や政治家なら、それでも全員と挨拶して、和気藹々と短い会話もするとか人気取りのサービスをしなくてはいけないのだろうけれど
ジッちゃんには、そういうことをしなくてはいけない義務はない
ここは公式なパーティ会場でもないしね私の家だ私が私の家の中なら、どこだって自由にお茶を飲む権利がある今は、たまたま黒森くんと話をしながら、ここに来たら、君たちがいたそれだけのことなのだからねそして、孫娘の友人たちに挨拶するかどうかも、わたしの自由だ
ジッちゃんはこの家の主で、香月家の当主だここにいるお嬢様全員にとっては、目上の存在となる
お嬢様たちの祖父や両親が、ジッちゃんと親交があったとしてもお嬢様たち自身は、あくまでもみすずたちが呼んだ客なんだから