オホホホと、鳥居さんは笑う
まり子お嬢様
鳥居さんの背後から、警護役のアーデルハイトさんが声を掛ける
なあに、ハイジあなたも、鞍馬さんのところの警護の方たちに何か言いたいひとがあるの
鳥居さんは、ニヤッと笑ってアーデルハイトさんを見る
ハイジは、わたくしのお父様がヨーロッパから見つけてきましたのあちらのスイスにある世界中の貴族の子女が学ぶ名門寄宿学校で、警護役を担当していた子ですのよこれからは、警護役も国際基準で人材を求めないといけませんからね
アーデルハイトさんは、そういう出自の人なのか
はいわたくしは要人警護を担当する人間を養成するアカデミーにて、国際基準での警護役ライセンスA級を所持しております
ヨーロッパには、そういうのもあるんだ
でも凄いな
アーデルハイトさんは、まだこんなに若いのに
中学生ぐらいだよな
そうそう、凄いのよわたくしのハイジは
鳥居さんも、鼻高々だ
父が日本人でございましたので、この通り日本語も話せます他に、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、中国語、アラビア語が話せます
ええ、警護だけでなく個人秘書としても有能ですのよわたくしの警護役は
ニッコリ微笑んで、胸を張る鳥居さん
ですのでお集まりの皆様どなたか、このわたくしをお雇い下さるというお方はいらっしゃいませんか
アーデルハイトさんが、トンデモないことを言い出す
もちろん鳥居様と現在交わしている契約よりも、好条件を提示していただいた場合ですがいえ、雇用条件は現状維持でも構いません鳥井様のお家より、家格の高いお方でしたら
ハイジさんが、自分の売り込みを始めた
は、ハイジあなた、何を言っているの
驚く鳥居さん
しかし、アーデルハイトさんは、無表情のまま
鳥井様との契約は今月いっぱいで、切れますので問題は何もございませんが
そんなの自動的に再契約するに決まっているでしょ
鳥居さんは叫ぶ
再契約するかどうかの判断はわたくしにも決定権があります
アーデルハイトさんは、そう言う
鳥居様にはわたくしを日本に連れて来て下さったことを感謝しておりますが
だったら、主人に忠節を誓いなさい
はい契約期間の間だけはしかし、先のことを考えれば、これ以上鳥居様の警護役を続けても得られるものは少ないのではないかと感じております
2人の言い争いを聞いて他のお嬢様たちが、囁き合う
まあ鳥居様のお家ではね
世界基準のA級ライセンスが、もったいないですものね
鳥居さんは今日はずっと、他のお嬢様たちと交流していない
最初は、みんなと違うテーブルに、1人だけで座っていたし
ジッちゃんに無理矢理話し掛けて、怒られて
そのまま、みすずが自分のテーブルに引き取ったけれど
他の名家の子たちから、浮いているという印象が強い
欧米では警護役もステップ・アップしていくものなんですよ
翔姉ちゃんが笑顔で、割り込む
ずっと同じ家の警護役を続けるということは無いんです最初は、能力が認められると、少しずつ格上の家により高い報酬で雇われていくんです
ああ、欧米ではどんな仕事でも、そうですものね
みすずが、続ける
何かの自分の専門の仕事に就いて何かしら実績を上げたら、別の会社へ移って
はい、役職が高くなり、報酬も増えますステップ・アップは、企業の方からヘッドハンティングされて引き抜かれることもありますし自分から、どんどん売り込みをかけて他社に移籍することもあります
それで、より規模の大きい企業で働いたり同じ様な規模の会社に移る場合でも、今までよりも高い役職に就くのね
同業のライバル会社に就職することもよくありますこの間も大手コンピューター関連企業の副社長が、ライバル企業の社長に就任しましたわ
わたくしもそろそろ、ステップ・アップしなければならないと考えております
アーデルハイトさんのその言葉に、鳥居さんは
何よハイジあなた、鳥居の家を馬鹿にしているの
そういうことでは、ありませんただわたくしの持つ技能ならば、より格の高いお家の方が有効に役立つのではないかと感じているだけでございます
こういう考え方もヨーロッパ的なのか
あらあら、鳥居さん警護役に裏切られるとは、とんだ醜態ね
狩野さんが苦笑する
こ、こんなのあたしは、認めませんからねっ
お認めいただかなくとも、月の終わりとともに自動的に契約は切れますので
とことん、ドライな性格なんだなアーデルハイトさんは
でもそんなあなたなら、どこの家からも雇うという声は出ないと思うわ
みすずはアーデルハイトさんに、ニコッと微笑む
なぜでございます
アーデルハイトさんは、無表情を崩さない
当たり前じゃないそんなにコロコロと他の家に移っていくような警護役危なくて、雇えないわよ
狩野さんは、不快そうな顔でそう言った
前の家で見聞きしたことは、決して他家には漏らしませんそういう職業上の倫理規定の厳守もA級ライセンスを持つ警護役には課せられています
あなたが職務上知ったことは漏らさないって言っても雇い入れる方は、やっぱり気持ち悪いのよそういうことは警護役の人とは、日常生活を供にするんだから信頼できる子じゃないと
そう言って狩野さんは、自分の警護役のシエさんを見る
うちのシエみたいに先祖代々、仕えてくれているような血筋の子でないとね生まれてからずーっと、わたくしの警護をしてくれているのよ信頼感が違うわ
シエさんは無言のままだ
でもどの家にも、狩野様の家のように代々の警護役が居るわけではございませんわ
口を開いたのは武闘派お嬢様の栗宮さんだった
我が栗宮家は武家の血も引いておりますから槍術の弟子筋から、このように警護役を選出することもできましたが
栗宮さんは、警護役の御厨さんを示す
しかし、多くの名家では令嬢を警護するための、武術の心得のある少女を探すのが難しくなってきたと聞きます
そうなの関さん
みすずが、翔姉ちゃんに尋ねる
はい香月セキュリティ・サービスでも、何人かご紹介したことがございますわたくしたちと契約している信頼できる警護人に娘さんがいらっしゃる場合に
ああ、そうねあたしの美智もそういう形で、あたしに付いてくれているわよね
美智は、工藤父がジッちゃんと個人的に契約している関係でみすずの警護役になったんだし