そうだ翔姉ちゃんたちは、警護のプロなんだ
主のお嬢様に張り付いているだけの専属警護役とは、仕事の重さが違う
少なくとも、あなたがアルバイト感覚で入り込めるような業務ではないわよ
大変、失礼を致しました
シエさんは、スッと頭を下げる
もっとも、あなたが狩野様の家から離れて、香月セキュリティ・サービスに入社するというのなら話は別よ
もし、そうしてくれるのならわたくしたちは、あなたに他の名家のお嬢様の警護を担当させるわ主は変わるけれど、仕事の内容は今のままあなたも学校を辞めずに済むわわたくしたちがあなたを派遣するお嬢様も、あなたたちの学校の生徒でしょうから
シエさんが狩野家を出て、香月セキュリティ・サービスに入って
他の名家のお嬢様の警護役に派遣される
ああ、でもあなたを入社させて、狩野様の家に警護役として派遣するなんていうのは無理よそういう大きな会社が資金繰りに困って本社ビルを売り払ったのに、賃貸契約に切り替えてそのまま同じビルに居座るみたいなのは世間の眼がありますからね
シエさんが、狩野家を離れて香月セキュリティ・サービスに入社するのは個人の問題だ
狩野家にとっては、代々仕えてきた警護役の娘に逃げられるというのは失態だろうし
香月セキュリティ・サービスには、他家の警護役の少女を引き抜いたという悪い噂が流れるだろうが大した問題ではない
個人の問題である以上、シエさんと狩野家の間で何かしらのトラブルがあったという可能性も考えられるのだから
だが、シエさんが所属を香月セキュリティ・サービスに移したのに、今のまま狩野桜子さんの警護を続けていくとしたら
わたくしたちよりも狩野様の方が、お困りになられるでしょ
世間の人間は狩野家が警護役の費用に困り、香月家に頼んで援助してもらっていると思い込む
シエさんの給金は、香月セキュリティ・サービスが払うが狩野家は香月セキュリティ・サービスに正当な警護料金を支払っていないのではないかと香月家にサービスしてもらっているのではないかと
つまり狩野家は財政難で、相当困窮していると思われる
わたくしは狩野家に命を捧げております
そうよねだったら馬鹿な申し出をするのは、お止めなさい
翔姉ちゃんは笑顔だが、その言葉は厳しい
結局のところ、特定の家に忠誠を誓っている警護役がアルバイトで他の人の警護をやれるはずがないんだ
他の人の警護をしている時に、狩野さんが危機に陥ったらシエさんは、現場を放棄して主のところへ馳せ参じることは判っているんだから
シエさんは深々と頭を下げる
関さん、わたくしからもお詫び致しますうちのシエが大変な粗相をしかし、シエにこうさせてしまったのは、主であるわたくしの不徳からでございますどうかお許し下さい
シエさんの主人である狩野桜子さんも、翔姉ちゃんに頭を下げようとするが
みすずが、スッと手を伸ばして狩野さんを制する
狩野様、あなたが頭を下げてはいけないのよ
ニッコリと笑う
驚く狩野様
ここには、人の眼があります皆様、楽しく食事をなされてご歓談なさっていますけれどわたくしたちの様子を見ていらっしゃる方もいらっしゃいますわ
今はガーデン・パーティでこの中庭には、たくさんの名家のお嬢様たちと警護役がいる
関西ヤクザのスパイも
関さんは、わざわざ臣下同士の会話に徹して下さったんですわですから、わたくしたち主は聞こえていても、聞こえていないという態度でいなければなりません
警護役としての会話なら翔姉ちゃんの方がシエさんより、ずっと年上なんだし
2人が会話していて、シエさんが翔姉ちゃんに頭を下げていても変ではない
というか、翔姉ちゃんはずっと笑みを崩していないし
遠目には、香月セキュリティ・サービスの現場チーフである翔姉ちゃんに、シエさんが何か質問したとか、頼みごとをしたとかその程度にしか思われないだろう
さっき、翔姉ちゃんは香月セキュリティ・サービスの研修館を開放することをみんなに話したばかりだし
シエさんも合同練習に加わりたいとか、レイちゃんと練習試合をさせて欲しいとかそんなような内容だと考えるだろう
しかし狩野家という名家のお嬢様である桜子さんが
香月家の臣下である翔姉ちゃんに頭を下げるのは異様だみんなに注目される
何かがあったんだと、思い込まれる
おっしゃる通りですわ申し訳ございません
狩野さんは、無表情でそう言った
今のお話は関さんと彼女だけの会話あたしたちは、一切、関知致しませんから
アタシも聞いていないネ
ミンナも、イイネ
オレとルナがうなずく
イーディが視線を向けたから、安城ミタマさんキヌカさん姉妹も
わたくしたちも聞いてませんからっ
うつむいたままの姉の代わりに、鞍馬ありすさんがそう言った
さてとそれでは、話を戻すけれど
翔姉ちゃんが、明るい表情でそう言う
その上でこちらのアーデルハイトさんの対戦相手は、あなたじゃ困るのよ
アーデルハイトさんに実力を披露する機会を作るという話をしていて
シエさんが、突然自分が相手になると言い出したんだっけ
なぜでございますただ今の失礼のお詫びも兼ねて、わたくしがこの方と闘うというのではいけませんか
シエさんは自ら、ペナルティとしての対戦を申し出る
はぁあのねぇ
大きく溜息を吐く、翔姉ちゃん
コウヅキ家の本家の庭で、カノウ家のアナタとトリイ家の警護役としてここに来たアンタが闘ったらオオゴトになるネ
ソンナことも、判らないノカ
わたくしはすでに、鳥居まり子様に解雇されておりますが
ソンナのはアンタたちだけの都合なのネここの屋敷に誰が連れて来たノカという責任問題は消えないノネカノウの家は偉いンデショそういう家の警護役に人様の家の庭でケンカをフッ掛けるような狂犬を連れて来たってことになれば、トリイの家が非難されることにナルノネ
なるほどその通りだ
アンタたちホント、自分の都合ダケでナク、他の人の立場とかメンツとかを考えた方がいいネ困った子たちなのネ
アーデルハイトさんとシエさん2人に、イーディは苦言を呈する
それに真っ当な主が居て、年上のアナタの方がこっちのアンタよりもどうしても負けられない理由が大きすぎるネフェアな闘いにならないヨ
シエさんは、狩野家の警護役としての責務を背負ったまま闘わなければならないが
鳥居さんから解雇されたアーデルハイトさんには、背負う物は何もない
それにアーデルハイトさんは、まだ13歳で
シエさんは17歳
年の差など関係ありませんどうせ、わたくしが勝ちますし