1年生で一番可愛い女の子の手作りのパンが、毎日、食べられるというのは
しかも、愛のスピードなので毎日、数が限定されているし
ただ愛のパンは、どんどん美味しくなっている
愛にはパン作りの才能があると思う
じっくり考えて、じっくり取り組む性格だから時間は掛かると思うけれど
前みたいにオレが、オレがって、とにかくオレが1人で頑張らなきゃっていうのは違うんだなって判った
そうオレのパン屋として認知されなくても、いいんだ
克子さんと愛ちゃんのパン屋でいい
大切なのは、ちゃんと美味しいパンをコンスタントに作って儲けを出していくことなんだから
あなたは今後今、やっていることをビジネスとして発展させていくのよね
オレはパン屋になるために修行しているんだから
そしたらいずれは人を雇っていかなくてはならなくなるわ業務を拡大するのならあなた1人の肉体と時間だけでは、到底追いつかなくなるものね
パンを作るのも、焼くのも、売るのも人を雇うしかなくなる
もし克子姉が、パン屋の2号店を出すと言い出したら同じだけの人員が2倍いる
いや、オレや克子姉の代わりに店長をしてくれる人材も必要か
それはそうだね
もっと、はっきり言うとあなたよりも上手くパンを作れる人が見つかったら、その仕事はその人に任せた方がいいのよ
それも判る
売り子の時と同じだ
オレが売り子をするより美人の克子姉や寧たちが店頭に立つ方が、よく売れる
むしろ、オレは店の方になるべく顔を出さないようにしている
パンだって、愛が数を作れるようになったら、オレのよりも売れるはずだ
もしかしたら、あなたはパンのビジネスはするけれど製造や販売には立ち合わなくなるかもしれないわもちろん、業務が拡大すれば他にも仕事はいっぱいあるから何もしなくていいっていうわけじゃないわよ
ああ各お店に、原材料を届けるとか
ある程度作れるようになったら、移動販売とかをしたっていいんだし
食堂やレストランに売り込んでそしたら、オレが配送すればいい
そうだねそうなることもありえると思うよ
どうしてもオレじゃなきゃいけないという仕事なんかないんだから
オレは、オレのできることは何でもやっていかないといけない
もし、そうなったとしたらあなたは、今まで覚えたパンの製造や販売についての経験は全てムダになると思う
ミナホ姉さんが問う
そうは、そうは思わないよ何もかも必要で大切な経験をしたと思っている少なくても、パン屋をやっていくんなら知ってて困らないことばかりだし
小麦粉のこと、イーストのことそれはどこに連絡したら、幾らで買えるかいつ届くかっていう知識パンができるまでの手順一個にかかる手間と原価それから時間どういうパンを売り出したら、どんな反応があるのか判ったことがたくさんあるから
メールとかじゃ判らないことって、あるんですよ
キョトンとした顔で、歌晏さんはオレを見る
いや、メールで意見を聞いたり歌晏さんのところは、現場の意見とかもメールでまとめて送って来てもらっているんでしょ実際のデータと一緒に
オレのパン屋だって、データはあります実際にどのパンが、どれくらい売れたのかとかどのパンは、あんまり売れなかったかとか
売り切れるにしても、どれが一番早かったかとか全て、克子姉が記録を取っている
お客さんにも聞いていますどのパンが好きかとかこの新しいパンは、どう思うとか
オレやメグの友達だけでなく、今は克子姉が明るい雰囲気でどんどん生徒たちに話し掛けるから
可奈センパイも人気者だから、みんながアンケートに協力してくれる
でも、そういう感想って、現実とちょっと違うんですあの、ほら人の思いって、言葉に変換するとちょっとズレちゃうから
ズレる
歌晏さんが、オレを見る
例えばこの新しいパンは好きだって、みんなが答えたパンが実際には、ちょっと売れ行きが良くなかったり良くないっていっても、売り切れるまでのスピードが他の人気のあるパンよりも、ちょっと遅いとかぐらいなんですけれど
うちのパン屋の売り場には、カメラが付いていてオレは、店の中からパンを選んで買うお客さんの手を見ることができますそれでお客さんが、どのパンを買うか迷ってる迷っていて一度は、その好きだってみんなが言っている新しいパンに触れるそう触れることは触れるんですでも、戻す人が多いそういうのを見て何か問題があるんだなって判って
人の思考のあれっって弾ける瞬間があるんですオレは工藤流古武術も習っているから、最近よく感じるんだけれどいや、まだ6級ですけれど眼の前で、人の思考が弾けるその人が何を感じたことが判るっていう瞬間があって
そういう感覚がすっごく大切なんだと思うんですそれはメールの文章とか、誰かがまとめたレポートでは判らないことだから本当にお客さんていうか眼の前に人がいないと現場にいないと感じられないことだから
だから、オレは現場って大切なんだと思います直接、お客様に人間に触れる機会がないと言葉や文章は思いを論理化した時に、ズレてしまうから
わ、わたくしもそう思いますわっ
突然立ち上がって、そう叫んだのは武闘派お嬢様の栗宮さんだった
わたくしも武芸を嗜みますから現実の人を前にすることが、大切なんだということはよく判りますっ
今のお話眼からウロコが落ちて、心が晴れやかになりましたわ
そういうことを言っているんじゃないんだけれど
わたくしの旦那様に、どうしてお祖父様がこのような修行をさせているのかこれでお判りになられましたね
みすずが、歌晏さんに言う
旦那様は今経営勘を養われているのです
か、勘
経営者が現場を知らないのに、思いつきで色んなことを指示して会社そのものを傾けるというのは
あの社長、それでも他の社に呼ばれるんだよなあ
何で、ああなるのか
これからは、どんどんああいうおかしいことが増えていくんだと思います
実績が悪かったのに、謎の力で次の仕事があるという
864.ハイ・ライフ / 私ってバカ
勘てどういうことですの
歌晏さんが、聞き返す
インスピレーションですわどんな経済理論や、ビジネス知識よりも大切な
何が自分の会社を発展させる上で良いことで、何が悪いことなのか危険なだけの取引ではなのか、それでも一か八か勝負しなくてはいけないことなのか最後は、経営者のインスピレーションに掛かっているわ
ミナホ姉さんが、歌晏さんに言う
そして、そういう勘はきちんと、人と人が向き合う商取引の現場に居なければ身に付かないものなのよ人の思考が弾ける瞬間を感じ取れるように、自分の感性を研ぎ澄ましていないとねどんなに経営勘の優れている人でも、現場を離れれば勘が鈍るわそれくらい、ビジネスの世界では大切なものよ