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オレは狩野さんの後ろの、警護役のシエさんを見る

シエさんは、ジッちゃんにそう言われて少しだけ嬉しそうだった

自分だけでなく、先祖代々の家系を褒められたような気がするだけだろう

うちは残ったのは、警護役としての家系だけですわうちのセバスティアヌスは香月家の警護役の皆様ほど強くありませんもの

歌晏さんが、自分の警護役のセバスティアヌスこと山田梅子さんを見上げる

ああうちの警護役は強いみたいなことを言っていたけれど

実際は、美智やイーディの強さに驚いていたんだ

申し訳ございません桃子お嬢様

スッと頭を下げる梅子さん

いいわ、こうなったらあなたも、香月様のところで一緒にお稽古させていただきなさいうちだけは参加しないとか、もう言いませんわ歌晏家も名家として皆様と一緒に頑張らせていただきたいと思います

3大名家の歌晏家の警護役も、オレたちと一緒にトレーニングしてくれるなら

全ての名家の警護役が集まってくれることになるだろう

名家同士の牽制も、敵対もこれでなくなっていくはずだ

本当にわたくしは、生意気な娘でございました香月閣下とても、ためになるお話をありがとうございます家に戻りましたら、祖父にもそのように申し上げます

歌晏さんが、そう言うと

フフフ、閣下か

歌晏くん、私がなぜ閣下と呼ばれているのか知っているかね

そ、それはあのお若い時に、英国大使を勤めていらしたことがおありになってそれ以来、閣下とお呼びするようになったと伺っておりますわ

確か、オレもそう聞いているけれど

君の祖父は私のことを閣下と呼んでいるのかね

そ、それはあの、お祖父様はそうは呼んでらっしゃいませんわ

そうだろう歌晏のやつは知っているからね

ジッちゃんの低い笑い声が響く

私は、イギリス大使などやったことはないのだよ

イギリス大使でない

じゃあ、何で閣下なんだ

本当に、ちゃんと私の経歴を調べたことのある人間なら判るはずのことなんだそして、そういう人たちは、絶対に私のことを閣下とは呼ばない

昔、アメリカに一人のアイルランド移民の少年が居た家族と一緒にアイルランドから移民して来たということは、そいつの家系は貧しく故郷を移民しなければ、生きていけない状況だったのだろうだが、アメリカに移ってすぐに少年は父親を亡くすまだ少年なのに必死に働いて彼はボストンの造船所の前で酒場を始めるその仕事で成功する

ジッちゃんは語り出す

彼は飲み屋の親父から、少しずつ成功していくアイルランド移民の裕福な家から妻をもらい、他のアイルランド系の人々を助けて地元の顔役になる最後は確か州の議員ぐらいにまで昇り詰めたんだったと思うよ

それは誰の話なんだ

後に閣下と呼ばれたのはその男の息子だそこそこ裕福に成り上がった家に生まれた彼は、名門大学に進学したしかし、成り上がりの彼は上流階級の息子たちだけが所属できるクラブには入れてもらえなかった大学卒業後、彼は父親のコネを使って銀行を監督する役人になるそこで様々な銀行の内部情報を知った彼は、インサイダー取引を繰り返し莫大な冨を得る裏世界の人間たちと顔なじみになる禁酒法が施行されたら、マフィアと手を組んで酒の密輸で大儲けをするどこから見ても、成り上がり者のロクデナシだ愛人にした女優のために映画会社を買い、映画製作に失敗したら、その借金を愛人に背負わせようとした良識の欠片の無い

ジッちゃんの話が続く

彼もまた、父親の真似をして政界へ進出する裏でマフィアと組んでいる男が下院議員になるのだよさっき話していたフランクリン・ルーズベルトは、その男のことを嫌っていた品がなく、嘘吐きで、ゴロツキで、裏家業の人間だ嫌われて当然だしかし、彼は財力がある色々な人間とのコネクションがあるそして野心家だ彼は、フランクリン・ルーズベルトに、自分を政府の要職に就けるように要求するルーズベルトとしては、こんな気持ちの悪い人間を閣僚にするわけにはいかないだからできるだけ遠くへ送り込んでしまおうと思ったそうそのゴロツキを、イギリス大使に任命したのだよ

貧しい移民の息子の成り上がりの悪党が、大使になった

だが、その男はイギリスに行くと、威張っているばかりで役に立たなかったヒトラーを擁護し、イギリスはナチス・ドイツに譲歩するべきだと語ったロンドンがナチスに空襲を受けた時王家もチャーチルも、ロンドン市民を見捨てるわけにはいかないと現地に残ったのに、真っ先に逃げ出したアメリカに帰国したら、暴言を吐いてついにフランクリン・ルーズベルトにイギリス大使を解任されただが、彼はそれを不服に思い、死ぬまで周囲の人間に自分を大使として閣下と呼ばせ続けた

ああ、ジッちゃんのモノだと思われていたエピソードは

その男のモノなのか

彼の野心は消えなかった自分がダメなら自分の息子を政治家にした彼の望みは自分の家系から大統領を出すことだった

そしてその野心は実現したのだよ彼の息子が、誰なのか判るね

オレには、もちろん判らない

ジョン・F・ケネディ

歌晏さんが呟く

そうだ今はアメリカの名家となっているケネディ家だしかし、代を遡れば初代は、極貧の移民で酒場の親父だ2代目はゴロツキだ3代目が、たまたま大統領になっただけだ

こうして現代でも名家は生まれていく作られていく香月家だって、先祖を遡ればこの程度の人物だったかもしれない

どんな名家もスタートがある

成り上がるためには、色々なことがある

家系の中には、悪人だって現れるだろう

だが、創始者たちがどんな人間だったろうと誇りを作っていくのは、家を継ぐ人間たちだそれを忘れてはいけない

ジッちゃんの声が響く

私は名家の当主として、決して自惚れることがないように、自分のことを閣下と呼ばせているのだ私自身だって、矜持を失い香月家の力に任せて、好き勝手に生きようとしたらあのゴロツキと同じような人間になってしまうと戒めだよ

フフと、ジッちゃんが笑う

私を閣下と呼ぶのはまずは私の部下だ彼らにはそう呼べと命じてある閣下と呼ばれる度に、ドキリとする私は当主としての責務をちゃんと果たしているだろうかあの男のような、下衆な行為をしていないか

呼ばれる度に自分を顧みる

それ以外は私におべっかを使うモノあるいは、私についての下調べすらして来ないような不勉強な人間たちだそういう人間たちは、みんな心の中では私のことを馬鹿にしている調子の良いことを言って腹の中では、私を笑っているのだ

閣下なんて、特殊な敬称だもんな

はっきり言えば元・大使だったとしても、今はただの私人なのに、自分のことを閣下と呼ばせて喜ぶ人間は最低のバカモノだよそういう人間だと思われて、そう遇せられている時ほど心が戒められるときはないね