ギロッと、ジッちゃんは3人を見る
鷹倉夜見子にさっきまでの余裕は無い
でお前どうして、お前は彼女たちが娼婦には向かないと思うんだ
改めてジッちゃんが、オレに尋ねる
だって失礼だから、この子
オレはキッパリと言った
失礼とは
いや、失礼だよ一見、ジッちゃんに対してちゃんと礼儀正しく話しているみたいだけどよくよく聞いていると、敬語とかも変だし
おいおい全く、わたしに敬語を使わないお前がそれを言うのか
ジッちゃんは笑う
だってオレは、いつも同じ位置にいるけれどこの子は、自分がジッちゃんよりも高い位置にいるつもりなくせに態度だけ下手に出ているから
そういうことだよな
だから敬語も変になっている
本当は敬う気持ちが無いから
何で、ジッちゃんと対等以上の立場で交渉できると思っているのかよく判らないけれど
何を考えているのか、よく判らないなこの14歳は
もう少し、自分の立場とかよく判った方が良いと思うな
鷹倉夜見子は、下を向いてギュッと拳を握りしめている
左右から月子さんとルナさんが、彼女の背中を擦ってやってくれていた
まあいいとにかくお前は彼女が、娼婦になるのには生意気過ぎると言うんだな
ジッちゃんは、面白がってそう言う
そんなことは思ってないよたださこんなにサービス精神の無い人たちに、接客業は向いて無いんじゃないかって思ってさ
接客業だと
うん娼婦だって、接客業の一つだろ
こんなに部屋の中に人がいるのにさジッちゃん以外は、無視とかさオレには考えられないよ
具体的には、どういうことだ
ジッちゃんは、さらに聞いてくる
いや、例えばささっきほら、学校は瑠璃子と一緒に車で送迎するって話があったろだったらさ瑠璃子の方を向いて、よろしくお願いしますとか言うべきなんじゃないの瑠璃子の車に、便乗させてもらうんだからさ
オレの言葉に鷹倉夜見子は、口をパクパクさせている
そんなことを言われるとは、思っていなかったらしい
いや、あの、でもわたくしたちを送迎して下さるのは香月様が、わたくしたちを保護して下さるというお話に入っているわけですから
ようやく、そんなことを言う
バカなんだろうかこの子
ジッちゃんがそう約束したからって瑠璃子との人間関係は、別にちゃんと築くべきだろそこで一言挨拶するのが人間として大切なことなんじゃねーの
いや、でも瑠璃子様は、わたくしがそのようなことを申し上げなくても判って下さっているはずですから
あ、カチンときたぞオレ
そんなの勝手に人に期待するんじゃねぇ世の中判っているはずとか無ぇんだよっちゃんと一々、言葉にしろ言葉にしないと、伝わんねえし
な、何なんですあなたみすず様とわたくしは、昨日、京都で色々とお話ししていますそれで瑠璃子様共々お二人で、わたくしたちをお助け下さると誓って下さったんですよそんなことも知らないくせに
怒りの表情をオレに見せる鷹倉夜見子
何だよ、その誓うっての
何でそう一々、上から目線な言葉が出て来るんだよお前、どっかおかしいのか関西でトラブルを抱えて、ジッちゃんを頼って、東京に逃げて来たんだろお前ら
わわたくしたちは
それが助けてもらいたいっていう人間の態度か
ぶぶぶぶぶ、無礼者ぉぉぉぉぉ
ずっと黙っていた月子さんが、大声を張り上げて席を立つ
よよよよよよ、夜見子様に対し無礼であろう控えおろう
時代劇か
この3人の関係、お前はもう判ったか
ニヤニヤしながらジッちゃんが、オレを見る
ああお父さんが違うんだろ
サラリと答えたオレに鷹倉家の3人は、ギョッとした
少なくても、月子さんと下の2人は違う月子さんは亡くなった鷹倉神社の神主さんが、お父さんじゃないんだね
激高して立ち上がっていた月子さんがヘナヘナと腰を下ろす
そうか、判ったか
そりゃ判るさオレだって色んな家の子を見てきたんだから
さっき、ジッちゃんは鷹倉神社の巫女についてその仲裁のやり方を話してくれた
それからこの姉妹たちの母親だった巫女は、何度か実際に仲裁をしたことがあるとも
月子さんは、仲裁の結果生まれた子だ
抗争していたヤクザの親分のどちらかの娘
神主さんの本当の娘じゃないから夜見子さんを立てて、控えに廻っているんだよね
だから次女の夜見子さんが、代表者として喋っている
そういう生活に慣れている
生まれてからずっと、そういう力関係でやってきているんだ
他に何か気付いたことはあるか
嬉しそうに、ジッちゃんは尋ねてきた
ジッちゃんにとっての優先順位だとこの3姉妹の中では、夜見子さんが一番下なんだろ
えという顔で夜見子さんが、オレを見る
ぶっちゃけジッちゃんは、鷹倉家のことなんて、どうでもいいんだろ
オレの言葉にジッちゃんは、ニヤニヤ笑っていた
やっぱりか
おかしいと思ってたよ鷹倉神社とか、渡り巫女の話だけじゃ起きていることの規模が大きすぎるもの
何で気づいた
この子たちを探しているヤクザの1人がお嬢って呼んでた
月子さんはかなりの大物のヤクザの親分の娘なんだ
かつて、抗争の仲介を鷹倉神社に託したヤクザの親分は
手打ちの儀式として巫女と寝た
そして巫女に娘が生まれた
その親分さんは月子さんが、自分の娘だということを知っているんだ
自分の娘を娼婦にしたい親はいないもんな
だからあのヤクザたちは、あんなに必死だったんだ
美智の心月にさえ、耐えた
親分の命を受け月子さんの奪回を狙っている
いや、あるいはもしかしたら、ルナさんの方がそうなのかもしれないなあ
オレはそういう可能性にも気付く
夜見子さんが生まれた後に母親の巫女が、2度目の仲裁をしたかもしれない
ただ、どっちにしても夜見子さんてことは無いよなうん
な、何が無いというのです
鷹倉夜見子が、オレを睨む
だから優先順位守らなければならない人の悪いけれど夜見子さんが、1番最後だ
夜見子さんだけは素性が判っているのだから
わ、わたくしは鷹倉神社の巫女の後継者ですわ
そんなことは判っているって
でも、そんなのはどうでもいいことなんだオレたちには
ジッちゃんもミナホ姉さんも鷹倉家のお嬢様たちを受け入れることは、黒い森を守り続けるための大きな保険になると言っていた
その保険の正体は巫女では無い
あなたの言っていることの方が、わたくしたちには判らないわよっ
鷹倉夜見子が、そう叫んだ
リサイクルショップに、箱も説明書も無いトランスフォーマーが200円で売っていたので、一つ買って来たのですが