無事に屋敷の外に出て来た天童乙女を、なぜ殺す
それだってマスコミには、香月家のパーティに行ったら死体で帰って来たと騒がせるのさ高校生の娘の変死ならば、どんなことでもニュースになるそうなれば、今日、パーティに来ている他の家の娘たちにも迷惑がかかるそれで香月家が、他の名家から嫌われるようになる
何て言う身勝手な作戦だ
だからまずは、水島可憐さんの身柄を抑えたのよ天童乙女さんは、水島さんの警護役という名目で来ているんだから
可憐さんが帰宅しなければ、天童乙女もここの屋敷に残っても変ではない
その上で元気そうな天童乙女さんを、一般の人に目撃させておかないといけないわ
ああ、うちの子が返って来ないとか香月家の中で暴行を受けたとか訴えられても、対処できるように
パーティが終わった後で、天童乙女さんとハンバーガーでも食べてきなさい
ついでにヤクザたちの襲撃も跳ね返してね
襲ってくるのは、決定事項か
いや、でも天童乙女が、オレとハンバーガーとか食ってくれるかな
凄い美人だけれどあんな気が強そうで、おっかない人が
何のために巫女の力があると思っているの
天童乙女さん性格から何から、全部、あなたの好きなように作り替えなさい
肉体だけでなく、精神もレイプなさいそれしか方法が無いのよ
放っておいたら、確実に殺される娘だ死なせたくなかったら、躊躇するな
子供の頃、夕方の4時頃になるといつも近所の家からピアノが聞こえてきた
毎日、同じ時間、ピアノの練習をしているのだろう
曲は毎回違っていてだけど、とても綺麗なクラッシックの曲ばかりだった
私はいつも、この美しいピアノの曲は誰が弾いているんだろうかと思っていた
きっと近所の大きなお屋敷にとっても綺麗なお嬢様が居て
その人が白くて長い指で弾いているんだと妄想していた
それから数年後
やっぱり、毎日、午後4時に近所からピアノの曲が聞こえて来るのだけれど
どういうわけだか
毎日、演奏されるのは、ドリフのひげダンスの曲だけになっていた
こりゃ、深窓のお嬢様じゃねーなと、ガックリした
今はもう、近所からピアノの音なんて全くしなくなった
そして、結局あのピアノは、近所のどの家が弾いていたのかも、判らないままになっている
874.ハイ・ライフ / オバケの妹
天童乙女という少女を、オレたちにとって都合の良い性格の少女に精神改造する
そんなことは、本当なら絶対にやってはいけないことだ
関西ヤクザの侠客の娘として生まれた天童乙女が、オレたちの仲間になる可能性は無い
自分でも鉄砲玉として使い捨てになることを覚悟して、ここに潜入して来ているはずだ
自分が死ぬことで、香月家のことが悪く報道されダメージを与えることができりば、それでも構わないと考えているのかもしれない
今、天童乙女は
あっちの部屋に隔離してあるわ
自分の眼で確かめてこいお前に任したからな
ジッちゃんはそう言うと大徳さんたちと共に、奥の部屋に消えて行った
天童さんに会うのなら、月子さんを呼んで来ないといけないわね
今の天童乙女は、月子の巫女の力で精神支配されている
オレが様子を見に行くにしても、月子に一緒に来てもらった方が良い
ヨミとルナは、連れてっちゃダメなんだよね
ええ複数の巫女が、もし矛盾する内容の命令を受けたら、天童さんの精神がおかしくなってしまうわ
例えば、月子からずっと、そこに居ろ動くなと命令されているのにヨミやルナから立って、走りなさいとか、新しい指示を命じられたら
天童乙女の心が混乱する
今はまだ月子の方が力が強いからおそらく、立ち上がったりはしないだろうけれど
相矛盾する命令に心が葛藤したままの状態になる
ブレーキを掛けたまま、自転車のペダルを無理にこぎ続けるようなものだからやがては、かなり深刻なダメージに発展してしまうだろう
でも、月子で良かったよ天童乙女の心を支配した巫女が
オレは、月子たちの居る部屋に向かいながらミナホ姉さんに言った
だってヨミとかだと、おふざけが混じっちゃうだろうからさ天童乙女を、ハチャメチャナ性格の子に変えてしまいそうだし
ヨミは調子に乗りやすい性格だからな
その点、月子はとっても真面目な性格だからさ
無茶なことはしないだろうと思う
そうかしら月子さんみたいな、一見、大人しくて真面目な子の方が、突飛なことをしでかすものよ
普段、抑えている人ほど解放されると、弾けるんだから
そういう考えも、あるんだな
まあ、いいんじゃない思いっきり、ハチャメチャなことになってもあたしたちからすれば、どうなっても構わない人なんだし
ミナホ姉さんは、天童乙女のことをそう考えている
それに月子さんにしても、ヨミさんにしてもルナちゃんは、ちょっと判らないけれど1度はやってみたかったはずよ
自分の中の巫女の力を全開に解放して人の心を、自由に変えてしまうことそれができるのに今までは、できなかったんだから
だって、それはそれがどんなに恐ろしいことなのか、オレたちにはみんな判っていることなんだしさ
巫女の力の暴走
人生に絶望した月子たちの母親の力が同じ巫女の力を持つ清美さんに飛び火して
清美さんは力に呑み込まれてたくさんの人を死に追いやった上に、自分も自殺した
巫女の力は、強大で恐ろしすぎる
一度、力で捻じ曲げてしまった心は2度と元に戻らない
オレたちはもう天童乙女に力を使ってしまったんだしさ
月子は、天童乙女に自分に従えと命じた
だからもう天童乙女は、月子の命令には逆らえない
今はまだ天童乙女の性格には手を付けていないから嫌々ながら、仕方なく従うだけなんだろうけれど
例えばさ時速300キロの出るスポーツカーを買うとするでしょ
でも、普通の道路で300キロなんて出せないわよね危ないし、通行人や周りの車にぶつかってしまうかもしれないしそもそもスピード違反になっちゃうものね
でも、300キロ出る車を買ったらやっぱり、飛ばしたくなるのよハンドルを通して感じるパワーが違うんだから思いっきり、アクセルを踏んでみたいなあってどうしたって感じちゃうわよどこまでスピードが出るのか、試してみたいって
スポーツカーならサーキットへでも行けば、思いっきり走れるわお金さえ積めば、そういう機会を得ることもできるでも、巫女の力は
鷹倉姉妹たちだって、自分たちの中の力の凄さを感じている
思いっきり解放してみたいって、心の中では思っているのか