あの黒森様に、ここで先生を待って、一緒に中に入れと
ミナホ姉さんが、2人をここに寄越したんだ
あの人、大分、心がネジ曲がっちゃっているからあんまり同じ部屋に居ない方がいいだろうって、月子お姉様が
ネジ曲がっている
ええさっき中庭でわたくしもルナも、感じたんですけれどグッチャグチャなんです、あの人の心は
そうだよね生きていきたいのかこのまま死にたいのか判らないような
マーブル模様のアイスクリームみたいなんですわバニラとチョコの
つまり天童乙女の中で、生きたいという気持ちと死んでしまいたいという気持ちが、ごちゃ混ぜになっている
そうそう、そんな感じですわ
さすが兄さんっ
2人がオレの心を読んでそう言う
何がそんな感じなのよ
鳥居さんが、オレたちの様子を見て怪訝な顔で言う
何かささっきから聞いている感じですと、あなたたちまるで人の心の中が判るみたいじゃない
この子は馬鹿ではない
むしろ、勘は鋭い
だからこそ、桃子姉ちゃんはオレたちに対する監査役として、鳥居さんを残していったのだし
ソウヨそういうことなのネ
イーディは、平然とそう言う
まさかみんなして、わたくしのことを騙そうとしているの
勘は鋭いけれど疑い深くもある
そんなコトはシナイネアタシはマリコも、仲間に引き込むツモリダカラ、嘘は言わないネ
だから、言ったでしょわたくしは、桃子お姉様の側近なんですからあなたたちの身内にはならないってそれより、あなたこそあたしたちに付きなさいよあなただったら、お父様にお願いしてお金は幾らでも払ってあげるわ
イーディの雇い主ということになっているオレや、自分が今警護役にしているアーデルハイトさんの眼の前で鳥居さんは、イーディを引き抜こうとする
こういう自由さが、この人の強さなんだろうけど
お金じゃダメヨ
イーデイは、ニカッと微笑む
あら工藤美智さんなら、みすず様の警護役としての栄誉もあるでしょうけれど黒森さんの警護役なら、お金だけの問題なんじゃないの
ああ鳥居さんがイーディに盛んに話し掛けていたのは
美智は無理でも、イーディならお金で引き抜けると思ったからか
あなただってハイジみたいにお金が目的で、わざわざ日本まで来たクチなんでしょ
準・名家という立場の鳥居さんには自分の警護役を国内の人材から見つけることができなかった
それで、ヨーロッパからアーデルハイトさんをスカウトしてきたわけで
オレもまたみすずの相手と認められただけで、名家の一員ではない
だから、自分と同じ様にイーディをアメリカから呼び寄せたんだと思っているのか
お金じゃナイノネ愛ネ
イーディは、答える
アイ
アタシは愛しているヨDarlingも、ミスズも、ルリコも、ミチもここに居るアニエスやヨミやルナもネ愛しているから守るのネお金は関係ないヨ
な、何なのよそれ
鳥居さんには、理解できない話だろう
家族《ファミリー》なのネアタシたちはそしてアタシはマリコも、アタシたちの家族になると思っているノネそれからソコのアンタもネ
驚くアーデルハイトさん
まあおいおい判るネ
イーディは、部屋のドアをコンコンとノックする
中から、月子の声がした
イーディなのネDarlingも一緒ヨ
開けて差し上げて下さい
はーい今、開けます
アレ、この声は月子じゃない
ガチャガチャっと、ドアの鍵を開ける音がする
ああ天童乙女が逃亡未遂をやったから
徹底して施錠することになっているんだな
ガチャリとドアが開くと
お待たせ致しました、どうぞっ
顔を出したのは香月セキュリティ・サービスの木下さんだった
ああ、月子だけじゃ心配だから付いててくれたのか
さっきのパーティの時のメイド服を着たままいつもの爆砕フレイルを担いでいる
相変わらず明るくケロケロ笑っていて全く緊張感の無い人だ
捕まえたスパイが暴れたので、拘束具を持っていってついでに監視していろと、関さんのご指示をいただきました
ちょっと、わたくし1人ではできないことがございまして
月子が顔を出す
何かあったのか
はいこの方毒薬を隠し持っていらっしゃいましたので
毒薬
服毒自殺用のカプセルだったんだと思いますね
ニコニコしたまま、木下さんが言う
いや、ヤバかったじゃないかパーティの食べ物とか、飲み物に入れられたら
名家のお嬢様たちに被害が出ていたかもしれない
それはないですよこの方が危険な要注意人物だということは、わたくしたちメイドも全員知っていましたしホント、この方の一挙手一投足を監視していましたからこの方自身も、それに気付いていましたし
もし飲食物に毒を入れるような素振りをしたら、香月セキュリティ・サービスのメイド部隊が全員で阻止した
ホントこんなアウェーの極致みたいなところに、高校生なのによく1人で潜入して来ましたよねここは香月家の本拠地の本丸ですからねなかなか良い根性していると思いますよ
木下さんは、そう言う
ああそう言われてみると、確かにそうね
鳥居さんが納得する
さっき一度眼を醒まされた時に逃げようとなさった後に、一瞬、毒のことを思い出されたんですわそれをわたくしが感じ取って
毒のカプセルは、髪の毛の中と下着の中に隠していましたね
木下さんが、そう言う
他にまだ持っているってことは無いのか
オレの問いに、月子は
無いと思いますわこの方自身の記憶の中にありませんでしたから
こっそり知らないうちに毒薬を持たされたとしても天童乙女が、その存在を知らないのなら使えない
潜入者はこの方だけですそれは、チェックしておりますから
うん、それはそう
月子、ルナ、ヨミが答える
3人で手分けして来場した少女たちの心を、1人1人読んでいったのだから間違いはない
で、今気絶させているんだっけ
はいいつでも目覚めさせられるようにしてありますわ
でどこにいるの
さっきからこの方、この方って言っているけれど
部屋の奥のベッドには、誰も寝ていない
公様、そちらではございませんこちらですわ
月子が、部屋の反対側を指差す
天童乙女は
ソファの上に、革の拘束具で縛り付けられていた
M字開脚で
何でパンツ穿いてないの
鳥居さんが、突っ込む
だから下着に毒薬カプセルを縫い込んでいましたから
わたくしがハサミで切って剥ぎ取りました
それと、ブラジャー-の中にも隠していましたのでほら、この通り
木下さんは、天童乙女の服を捲り上げて
白い乳房をオレたちに見せる