うむそこまでやらねば他の家に示しが付くまいそして、さっきは8年後に君が成人したら、水島の家を再興させると約束したがそれも君自身の行動に掛かっている
わたくしが、みすず様に忠孝を果たさなかったら水島家の再建は無いということですのね
可憐さんは少し考える
水島家の先祖代々に伝わる財産の保全に関しては、お約束いただけるのですね
企業グループは諦めるとしても昔からの屋敷や、美術品などは
それは保証する私は老齢だが歌晏の息子にも話しておく他の名家の当主たちにもな水島家の財産は、消散しないただしそれを引き継ぐのは、君だ君の祖父や父親とは、私たちは今後、いかなる取引もしない
ジッちゃんは、12歳の少女を追い込んでいく
君は、自らの力でみすずへの忠節を示すことで、それぞれの名家の人々にアピールしていくことになるだろうそして、君の行動が認められれば成人共に、水島家の当主として名家に復帰することができるのだ
みすずに忠節を尽くすということは
みすずのペットになるということだ
そんなことは12歳の少女は、想像していないだろう
判りましたわたくし、香月家にお仕え致します
可憐さんはそう答えた
わたくしもそうすることでしか、水島家が他の名家の皆様に許していただくことはできないと思います
そして、何より香月様が、わたくしや水島家のために、ここまでお考えになって下さったことですから
真面目な顔で、12歳の美しいお嬢様は言った
みすず様にお仕えする忠実な臣下になりますわ
昔、良い家のお坊ちゃん過ぎて大学生でも彼女とセックスしないという男の子が同級生に居ました
つまり、間違って子供ができたりしたら家の問題になるから、セックスするなと親兄弟に言われてそれを守っているという
本当に、そういう家の子は実在するわけで
その男の子の彼女は、セックスしてくれないからという理由で別れてました
まあ、よくよく考えたら将来的に結婚するつもりはないという表明でもあるわけなので
一度、その男の子と飲んだ時に聞いたのですが、本当に親に
お前が誰と結婚するかで、家の力が強化されるんだから勝手に相手を見つけてくるなと言われていたそうです
そんな人生もあるのか
872.ハイ・ライフ / 堕ちる前
では、後ほど中庭に居る連中に君自身が、そう伝えなさい
ジッちゃんは、水島可憐さんにそう言う
今日のパーティに来た名家のお嬢様たちに可憐さん自身が、香月家のみすずの臣下になることを告げるのか
それは、名家・水島家のお嬢様という地位を奪われることを意味する
可憐さんは、スッと頭を下げた
うむ、ではしばらく元の部屋で待機していたまえ
外では、まだみんな楽しくパーティを続けている
水島可憐さんがみんなに報告するのは、パーティの終了寸前がベストだろうな
アニエスの披露と一緒に、すればいい
あたしが送って行きますわアニエスちゃんたちが居るお部屋でしょ
ああ、頼む克子くん
はいじゃあ、参りましょう
克子姉が笑顔で、水島可憐さんを連れて退室して行った
部屋の中に残ったのは
ジッちゃんと2人の専任警護人
鞍馬姉妹
そして、オレとミナホ姉さん
お前たちも、少し外していてくれ
ジッちゃんが、背後に控えている大徳さん、張本さんに言った
キョーコくんたちが退室したのだこの部屋にはもう、危険な人物はいない
は失礼致します
大徳さんと張本さんも部屋を出て行く
ドアが、ガチャッと閉ざされると
お前はどう思うね
ジッちゃんは、いきなりオレにそう尋ねた
私はムダなことをしているのかもしれん
名家のことだよ私は名家を守りたいと思っているが現状は、名家は減る一方だそれも自分から没落の道に進んでいる家が多い
今の水島の甘えた態度を聞いたいただろ私が名家を潰すようなことはしないと思っているから、こんな不祥事を起こしてもなお、家を救済してもらえるものだと思い込んでいる
確かに舐めていたよな
香月家の本家に関西ヤクザのスパイを送り込むっていうことが、どれくらいシャレにならない話なのか全然判っていなかった
また、今日のパーティには他の名家のお嬢様も来ているわけで他の家がどう思うかなんてことも、考えていない
だから、あの娘を香月家が保護するのではなく、臣下に落とすしか手がなくなったのだ
ジッちゃんは苦々しく言う
話してみたところ水島可憐というあの娘は、まだまともだ今なら、まだ修正がきくだろうしかし、このまま祖父や父親のところへ帰したら名家の地位に甘えただけの困った大人に成長してしまうことは眼に見えている
いやあの子は
可憐さんは、ちゃんとした子だったと思うけど
礼儀正しいし、責任感も強そうだし、頭も良さそうに見えた
別に、親が変だからって子供も同じ様になるとは限らないと思うけれど
今の水島家の連中とは引き離し20歳までみすずに仕えさせ、名家の人間としての教育を徹底的に施してやらんとならんそうしなければ、水島家は屋敷や財産が残ったとしても、名家としての誇りの無い家になってしまうそれでは、家が残ったことにはならん
ジッちゃんは、オレに話すフリをして鞍馬姉妹に話しているんだな
鞍馬家もそうだ私たちの忠告を無視して外国資本の口車に乗り、伝統ある鞍馬閣を取り壊し、高層ホテルに建て替えようとしたのに今になって、外国人に騙されていたから助けてくれというのは話にならんよ
鞍馬姉妹の妹のありすさんが頭を下げる
君には話していない私は、こいつと内輪の話をしているんだ
ありすさんを叱りつける、ジッちゃん
姉の美里さんが、また泣きながら謝る
水島家は、私の家に不逞の輩を忍び込ませたことによって、傘下の企業グループを失うことになる本家の跡を継ぐべき娘は、香月家の臣下となるそれぐらいの処罰をしなければ他の家が納得しないまた、こんな馬鹿げたことが二度と起こらないように、厳しい態度でのぞむのは当然のことだ
では、鞍馬家にはいかなる処分を行うべきだろうか鞍馬家が経営している鞍馬閣グループは、本体の鞍馬閣にこそ価値があったその歴史と伝統のある建物と庭園に価値があったからこそ、グループの他のホテルや高級料亭も高い品格を保てたのだ
価値と品格
その大切な鞍馬閣が失われてしまった以上、グループに残っているのはどこにでもある普通のホテルや料亭だもし、鞍馬閣の跡地に高級高層ホテルが完成していたとしても、伝統ある古い鞍馬閣が持っていたほどの品格は感じられなかったろう
どれだけハイグレードな新しいホテルを建設したとしても取り戻せないものがある