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ミナホ姉さんが、最初の仕掛けを施す

あんどういうことだ

天童貞男は、尋ね返す

いえあなたたちが今いらっしゃるのはああ、2丁目のカラオケ・ボックスカサンドラ・クロスですわね

お、おいちょっと待て

天童さんスマートフォンをお使いだから、今、いらっしゃる場所が、あたしからは丸わかりなのよ

本当はそれ以前に、香月セキュリティ・サービスによる情報収集で天童貞男たちの居場所は判っている

だけど、ミナホ姉さんは香月セキュリティ・サービスと自分との繋がりを喋るわけにはいかないから

ここだけの話ですけれどあなたたちがいらっしゃる辺りは、あなたたちを探していらっしゃる怖いお兄さんたちがいっぱいいるみたいよはっきり言って逃げ道は無いわね

ちょ、ちょっと待てええっと、ミネコ・蝶々さんだったか

フジ・ミネコです

ミナホ姉さんは、冷たく答える

フジ・ミネコでも、マギー・ミネンコでも何でもいいっわしらがすでに包囲されているとしてわしらが人質のことを考えるってのはどういうことなんじゃい

天童貞男は尋ねる

まさか、わしらがここのカラオケボックスの店員のネーチャンを人質にするとか

残念ですけれどそこのお店の店員さんは、すでに怖いお兄さんたちに交代していますわそれとお客さんも、あなたたち以外はいませんあなたたちより前にいらしたお客さんには、全てお帰りいただきましたし新しいお客さんは、お断りしていますから

あなたたちが、そちらのお店に入られてどれだけ時間が経っていると思っているんです

楽しげな声で、ミナホ姉さんは言う

そう言えば誰も、時間延長の電話を掛けて来ねえそれどころか、飲み物のオーダーもさっきから持って来ねえし他の部屋から歌声も聞こえねえっ

すでに、天童貞男たちの一味はカラオケボックスの店内に閉じ込められている

ただし、そこのカラオケボックスに張り付かせているのは全て、あたしの配下です外にいる怖いお兄さんたちはまだ、あなたたちがそこに居ることに気が付いていませんわ

平然と嘘を吐く、ミナホ姉さん

その様子に鳥居さんやアーデルハイトさんは感心して、声も出なくなっている

オレたちは慣れているけれど

じゃああんたたちに対して使える人質を持っているっていうのは、何なんだオレたちは身内以外は何も残っていないじゃねぇか

ええ、そのお身内です

鋭く言い切る

あなた天童乙女さんと同じくらいの娘さんを8人ほどお連れですよね

あ、ああそれが何じゃい

あたしたちはいいえ、これはあたし個人の望みなんですけれど若い女の子が欲しいのよね

軽やかに、ミナホ姉さんは言った

判りますわよね

乙女と同じレズッ子なのかい

オレは大きくズッコケたがミナホ姉さんは

いい加減にしないと、本当に全員見捨てるわよ

冗談めいた声の中に、怒気を含んでいる

こういう声が使えるのも、ミナホ姉さんの凄さだ

わ、わしは判ってるぞあんたが本当は誰でどんな生業をしているかっていうことは

天童貞男は黒森家が娼館をやっているということは、当然知っている

ええ、だから使えそうなオンナの子がいたら欲しいのよ若い子なら、何人でもね

さっき何かおっしゃっていたわねヤクザの子は、男はみんなチンピラになって女の子はみんなソープに沈めるでしたっけあたしのところは、ソープよりは高級よまあ、大して違いはないんだけれどうちは、年齢制限が他と違うことぐらいかしら

違法な娼館だから未成年でも働かせている

そ、それで娘たちを引き渡したらあんたは、わしらの安全を保証してくれるっつーのかい

天童貞男は言う

そ、そんなのはなーな、ナメるなよっわ、わしらだってなぁ命を賭けて関西から出張って来たんじゃいっ渡世の義理を果たすためになぁオヤジやアニキやオジキから命じられた使命を果たすためなら死んでも構わんのじゃあっっ

ば、馬鹿にするんじゃねぇわしらは、命なんか惜しくはないんじゃいっこうなったら、娘全員引き連れて香月の家の前で、切腹してやるわいっ屋敷の前を血で汚されたら、香月にとっては大きなスキャンダルになるだろう明日の新聞のトップニュースは、わしらの憤死ってことになるんじゃいっ

ああ、もうヤケクソだなあ

あら、カッコ良いわね

ところであなたが、上の人に命じられてきたことって何なの

そ、それはのぉっ

あこれは、困惑の声

それはオメェな、内緒じゃいっ組織外には、ぜったいに秘密だっあんたになんか言えるはずがねぇだろっ

別に具体的な命令なんていうのは、何も無いんでしょ

ミナホ姉さんが探る

あ、ああーん

だから東京へ行って、嫌がらせをしてできれば、何かスキャンダルの種になりそうなことを見つけて来いってだけなんでしょ

香月家にという言葉は、あえてカットする

それで、たまたまパーティに潜り込むツテができたから、乙女さんを潜入させたってだけで他には特に、何も具体的な策は考えて来ていないのよね

ううっぐぅぅ

唸る天童貞男

だからあなたとしては、何でもいいから親分さんや兄貴分さんたちに、具体的に高く評価してもらえそうなモノが欲しいのよねそういうもので、何らかの結果が得られたら大手を振って関西へ帰れるんでしょうからそしたら組織の幹部にだって、昇格させてもらえるかもしれない

あなたが娘さんとの会話で、お金儲けの話ばっかりしていたのだって頭の中は、何とかして大金を得ることばかり考えているからでしょ大きなシノギを確立して組織に毎月、たくさんのお金を上納することがヤクザが出世する道ですものね

ミナホ姉さんは話し続ける

抗争事件で、誰か有名な人を仕留めるとか誰かの身代わりで、刑務所に入るとかあなたが今までやってきたような武闘派の生き方では、現在の暴力団組織の中では出世できないものね今回みたいに、いいように使われるだけ使い捨ての駒にされてそれでオシマイそういう人生は、もうやっていられないわよね

天童貞男の心を抉るように言う

あなただって、あなたの仲間だって別にここで死にたいわけじゃないんでしょできることなら、生きて関西の組織の人たちを見返してやりたいと思っているのよねそれができないくらいなら、死んだって構わないって思っているけれど死んでも構わないと、死にたいとは全然別のことですものね

あんた、何が言いたいんじゃい

ミナホ姉さんは、次のカードを切る

鷹倉神社の巫女を1人、差し上げるわ

スッとヨミを見る

ヨミは、コクッと小さくうなずいた

お、おいそ、それは

関西の皆さんからしたら自分たちが支配していたはずの巫女をその娘たちを全員、東京の権力者に奪われたというのが頭に来ているんでしょ