ちょっと考えてから、ハァと溜息を吐く
オヤジはアイツは、救いようのない脳内ハッピー野郎だよっ自分は、どんな時でも宇宙1ツイてるって思い込んでやがるんだよっだから、いっつも、いっつもまともに考えたら、上手く行くはずがないような話にコロッと騙されるんだよッ
ああセル画が存在しないCGアニメのありえない長さのシャワーシーンのセル画販売とか
あたしも、そう思うわだからあたしの仕掛けた罠に引っ掛かるのよ本人としては、多少、怪しくてもケースバイケースで臨機応変に対処すれば上手くいく自分には、そうやって切り抜けるだけの才覚があるって思い込んでいるでしょうから
その通りだよっアイツは、自己評価が馬鹿みたいに高いから自分なら何とかできるってさ訳の判らない、おかしな確信を持っててさそれでいつも、ことごとく失敗してきやがるんだっそして、反省しないっ何度でも、似たようなことで騙されて来やがってあの野郎はぁぁっっ
お父さんのこと、本当は好きなの
アーデルハイトさんが、静かに尋ねた
はぁぁ何だよそりゃあ
好きなわけないだろっあんな馬鹿でクズで自分のことしか考えていないでアイツのせいで、あたしがどれだけ嫌な思いをしてきたことかっあんなヤツぅぅ
天童乙女の喚きに、アーデルハイトさんは小さく呟く
いずれにせよこれから1時間、あの人は何もせずにボーッとカラオケボックスの中で待機しているわよまあ、手下にお店の他の部屋や、外の様子を偵察に行かせるくらいはするでしょうけれど
ミナホ姉さんの次のアクションまでただ、待っている
そして、天童さんの手下の中には関西の組織から来た監視役の猪鹿蝶一郎さんと通じている人がいるはずよ当然、あたしがヨミさんを連れて来るかもしれないという情報が伝わるわ
ヤクザのもう1グループの猪鹿蝶一郎たちも
そしたら、猪鹿蝶一郎さんはどうすると思う
ミナホ姉さんは、オレに尋ねたが
天童さんから、手柄を横取りしようとなさいますわね
鳥居さんが、答えてしまう
そうよ巫女を1人奪取できるというのは最初の香月家をスキャンダルに陥れる嫌がらせをして来るなんていう話より、よっぽど価値が高いでしょもちろん、猪鹿さんだって、あたしのことは疑っているでしょうけれど影からじっくり状況を観察して、もし本当にヨミさんが現れたら、横から掻っ攫おうとするんじゃないかしら
つまり猪鹿蝶一郎さんたちの一派も、この邸宅の周囲から脱出しようとはしないということですわね
ええ少なくとも、天童貞男さんたちがどうなるか見届けるまでは、動かないでしょうね
これでヤクザの2つのグループはどちらも、オレたちの監視下から逃げられなくなった
彼ら自身の意志で
結局天童貞男さんたちにしたって、猪鹿蝶一郎さんにしたって関西の組織の上層部の人たちからしたら鉄砲玉でしかないのよ
テッポーダマとは
ヤクザの世界での誰かを襲撃させたりする時に、使い捨てにするニンゲンのことネ
誰かの命令で誰かを傷つけたり、殺したりするネ当然、捕まって裁判されて、刑務所に行くネソシテ、刑務所から出た後にゴクローサンて、ちょっとだけ偉くなったりするノネ
馬鹿みたいそんなことで、何年も刑務所に入るのは人生の無駄遣いよ
鳥居さんは、そう言うが
そうは言っても渡世の義理なんでしょ
ミナホ姉さんは、天童乙女を盛る
大恩ある親分さんや兄貴分のためあるいは、組や自分自身のメンツのためはたまた、単純にお金になるとか、普通にしているよりは組織の中で出世できるとかハクが付くとか
そうだよ、馬鹿げているよ
天童乙女が呟く
鉄砲玉なんて馬鹿だから、やらされるのさ
今回の場合は実行部隊の天童貞男さんたちも、監視役の猪鹿蝶一郎さんも今回東京に派遣されてきた連中は、どっちも使い捨ての駒なのよ関西の組織からしたら
監視役の方まで
オレは、驚いて尋ねた
そうよ天童さんたちと別に考えちゃダメよ天童さんたちだけが鉄砲玉だと思って、猪鹿蝶一郎さんの方は関西の組織上層部と直接結びついていると思ったら大変な失敗をするわ
本当に組織の中に必要な人間なら天童さんたちの監視みたいなことで、東京に送り込んで来ないから
そ、そうか使い捨ての鉄砲玉の監視者だって、オレたちに潰される可能性は高い
こんなことで、まともな人間を失うのは、組織の損失だ
だから、天童さんたちにしても、猪鹿さんたちにしてもこの後、関西のヤクザ組織の上層部の人たちは自分たちは知らないそいつらが勝手にやったことだってシラを切る気なのよ香月様や警察に際しては最初からそのつもりなのよ
て、ことは天童貞男や猪鹿蝶一郎に、メッチャクチャにプレッシャーを掛けて何が何でも、香月家や名家のお嬢様たちあるいは、オレたちに仕掛けてこさせる
自分たちが、責任を取る気がないのだから
東京に送り込んだ鉄砲玉たちは好き放題に暴れさせてる気なのか
そしてヤクザの組織には、鉄砲玉に仕立てられる人材は幾らでもいるわ今回、天童さんと猪鹿さんを撃退したとしても、次の鉄砲玉が派遣されてくるかもしれない
だから、二度とこんなことができないように関西の組織の中の人たちに香月家の件で鉄砲玉に行くのは、絶対に嫌だと思ってもらえるような、恐ろしいことをあたしたちはしないといけないのよ
これもまた一罰百戒か
天童さんには悪いけれどお父さんたちには、そういうことをさせてもらうわ
ミナホ姉さんは、天童乙女にそう言う
か、勝手にしなよっ今まで、いい加減に生きてきたオヤジたちが悪いんだあ、あたしは
園子たちさえ助けてくれたら文句は言わないよオヤジたちがどうなろうと知ったこっちゃないさっ
苦々しく、そう言った
あなたも本当の覚悟をするのは、これからよ
あなたがこれまで相手にしてきた人たちはシザーリオ・ヴァイオラですら、理屈で話ができる人だったわ
オレはオレが撃ち殺した、あの極悪人を思い出す
これから相手にする人たちはヴァイオラなんかよりは、全然、凶悪ではないわ時と場合によっては、明るくて楽しい人たちかもしれないただ、救いようがないくらい馬鹿なのよ
馬鹿
何も考えていないのよいつも、その場しのぎでその時の感情のままに行動するだけ先のことは何も考えていないそういう動物みたいな人たちよ
恐ろしいことに世の中には、そういう人がたくさんいるのよ明日のことを何も考えていない人たちが
オレはさっきの天童貞男と乙女の電話の内容を思い出す
娘が囚われていることを知っていてなおどうでもいい、インチキ商売の話をしていた
え、もしかして天童貞男の話していたインチキ商売とかあれって、こっちの様子を探るために話した冗談とかじゃなくって