ん何だい
不意にキョーコさんの拳がシュバッと風を切る スバンッ グレースさんの腹に、重い鉄拳が叩き込まれた
卑怯とか言わないよね隙を見せたアンタが悪いんだから
キョーコさんの回し蹴りが、スゴッとグレースさんを襲うが グレースさんは、ドッジボールの小学生のようにキョーコさんの足を両腕で受けとめる
それに、なかなかタフなようだしねッ
ずわぁぁッッ
グレースさんは、そのまま掴んだキョーコさんの足首を捻って、足を挫こうとするが
そうはさせないよっ
キョーコさんはブワンッと身体を回転させて、自分の足をグイッと掴んでいるグレースさんの手を振りほどく そして、そのままもの凄い速さで、グレースさんの背中に廻り込むと グレースさんの腰を掴むと長身の肉体をひょいっと持ちあげ そのまま大きく身体を反らせ、自分の背後に投げるッ いや、これは
ジャーマン・スープレックス・ホールドなのネッ
イーディが叫ぶ キョーコさんは弓なりにブリッジした体勢で、引っ繰り返したグレースさんの両肩を芝生の地面に押し付けていた
寧、カウントッ
キョーコさんの言葉に、寧はすかさず
1、2
グレースさんは何とか身を解こうとするがキョーコさんは、ガッシリとグレースさんを掴んで地面に押し込んでいるから、肩を上げることができない
3
プロレスなら、グレースさんの負けだ しかし、キョーコさんはグレースさんの身体を解放すると
よし、もう一丁だよっ
ニィと微笑む
あ、言っておくけれど今朝のあたしは、カール・ゴッチをリスペクトしてジャーマン・スープレックス・ホールドしかしないからね
何でんぁ
あっという間に、キョーコさんがグレースさんの背中に廻り込んで またスバンッと後ろに投げるッ
123
寧がカウントした瞬間に、またキョーコさんはグレースさんをリリースする
ほらっ、また行くよっ
グレースさんは本気になって、キョーコさんに立ち向かおうとするが
はい、遅い
スバーンッ また背後に投げられ地面にホールドされる
はい、また最初っからだよっ
キョーコさんは、身体を離しそしてまた捕まえ、投げる ズバーンッ
下は芝生だから、全然痛く無いだろ大分、あんたの身体が土臭くなってきたけれど
123キョーコさんの勝ちっ
はい、もう1回
離れて、また捕まって投げられ、固められる グレースさんは、もうキョーコさんに反撃するどころか、捕まらないようにすることだけで精一杯だ だが、あっという間に捕まる グレースさんは、口惜しそうに唇を噛む
どうするあたしには敵わないって、負けを認めるかい
キョーコさんは、笑ってグレースさんにそう言う
負けを認めるのなら、そこで3回廻ってワンて鳴きな可愛くだよ
そんなことはしない
キョーコさんに飛び掛かる、グレース・マリンカさん
お、いいねぇ負けん気の強い子は大好きだよっ
でもまた投げ飛ばされる そして、地面に肩をホールドされ また負けた グレースさんは、肩も髪の毛もすっかり泥だらけになっている
もう、おしまいかいっ
そのまま、さらに10回ほどグレースさんはキョーコさんのジャーマン・スープレックス・ホールドを食らって負けた
はぁぁ、はぁぁ、はぁぁ、はぁぁ
グレースさんは芝生の上に倒れたまま、荒い呼吸を繰り返す
何だい、投げられているだけのアンタの方が、もうヘバったのかいあたしの方は、汗1つかいてないよ
その言葉通り、キョーコさんは泰然としている 服にも髪も、まったく土が付いていない 何回も繰り返されたジャーマン・スープレックスで身体をブリッジさせたまま、どこも地面には付けなかったということだ
まったくさプロレスなんかやってるから、持久力が無いんだよっ
キョーコさんは、鼻で笑う
パパ、プロレスって弱いんですの
弱くはないんじゃないかなプロレスって、ずーっと全国を回って、何日も連続して試合をしていくんだしタフな身体じゃないとできないと思うよ
毎日、試合をシテテモ1日に闘うノハ、せいぜい2回ぐらいネシカモ、60分一本勝負って言ったって、ホントに60分闘うワケジャナイシタッグ・マッチなら試合時間の半分は休メルネ
衝撃に強いタフな肉体は必要だけど、持久力はそんなにいらないノネダカラ、毎日試合できるノヨ50歳過ぎても現役でいられるのも、そういう理由ナノネ
ああ、確かにプロレスラーって、現役期間が長いよなあ
15年も前に相撲を引退した元横綱が総合格闘技では連敗ばっかりだったのに、40代の半ばになって伝統のベルトを奪取してしまうのがプロレスなのネ
ま、プロレスっていうのは限り無く芸能に近いスポーツだからねいや、スポーツの形式をした芸能かなとにかく、興行ビジネスなんだからね
キョーコさんが言った お客さんに観てもらって収益を得るビジネスか
だから、つまらなかった今回は、あいつに勝たせて負けろとか、下らないことばかり言われるし
グレースさんが言う
へえ、それでアンタ負けてやってたのかい
キョーコさんが尋ねると
そういうのは無視わたしは負けるのは嫌い
でも、会社の決めたブックを守らなければ大変な目に合うんじゃないのかい
ブック
試合中の進行についてどっちが、どういう段取りで勝つのかとか、前もって決めてあるのがブックネ試合の前後にリングの外で行われる試合を盛り上げるためのストーリーはアングルって言うノネ
色々あったバトルロイヤルの試合のはずなのに、他の連中が全員でわたしを潰しに来たこともある5対1だった
グレースさんは、そんなことを言い出す
へえ、それでその試合どうなったんだい
キョーコさんが尋ねる
わたしが勝った5人とも倒したわたしは負けない
とにかく強ければいいちょっと強いぐらいなら、潰されるが強過ぎれば、みんな文句は言わないわたしの自由にやれるようになる
それもプロレスらしいねガチンコで強いやつは、潰されなくなる周りもビビるんだろうね
でも食べ物に何か仕込まれるかもしれないから、他の子とは一緒に食事しない会社が用意した弁当とかは、絶対に口を付けない夜も襲撃されないように、気を付けて寝る
そう言うグレースさんに、イーディが
昨夜、一緒の部屋で寝てたら、面白かったヨジュンは、いつでも闘えるように枕元に武器を準備してから寝るノネまるで江戸時代のヤクザみたいだったネ
前に遠征先で、嫌いな先輩レスラーが手下を連れて夜中に攻めてきたことがあったから