香月家の分家、臣下である重役たちその子供たち、ジッちゃんの私塾の連中たち みんな、あの高層ホテルでの闘いで、恐ろしい思いをしたはずだ
みんな、あそこでジッちゃんに刃向かわないって誓ったはずだよ
ジッちゃんに刃向かった人間 シザーリオ・ヴァイオラと繋がっていた人たちは、瑠璃子の父親をはじめみんな処分された あの場に居た人間は、ジッちゃんを畏れ、改めて忠誠を誓い そして、オレがみすずのパートナーになったことも認めざるを得なかった
それは閣下への忠誠の誓いであってあなたへの忠誠ではないでしょ
あの時は恐ろしい思いをしたからあなたのことまで含めて、この半年間はアンタッチャブルになっていたけれど人は、すぐに怖さを忘れるわ喉元過ぎれば熱さを忘れるって言うでしょ半年経って、恐怖が薄れてきているのよ
だから今の視点で、冷静になって考えてみれば、あなたを香月家から排除するのが得策なんじゃないかって考え始めている人もいるわけよ
むしろ、半年間あの人たちが動き出さなくて助かったわこちらの態勢作りを進めることができたから
そうねギリギリ間に合ったわ
閣下は80歳を過ぎているわご高齢なのよだからもう、みんな、閣下亡き後のことを考えているのよ今の内からね
閣下自身が一番、真剣に考えていらっしゃるわだから、この時期にあなたに香月セキュリティ・サービスを譲られたのよ
こちらが態勢を固めたところでわざと、敵対者が慌てて動き出す理由を作ったのよ
まさか、高校生のあなたに香月セキュリティ・サービスを与えるなんて思ってなかったでしょうから
今、あなたに香月セキュリティ・サービスを取られてはあなたに反抗することはできなくなるわ
香月セキュリティ・サービスは、香月家の実務的な暴力装置だもの
名家だけでなく、香月家の分家や重役たちさらに香月グループの企業の警護や警備だって、香月セキュリティ・サービスが担当しているわけだから 香月セキュリティ・サービスをオレに支配されたら自分たちの方が危うくなる ジッちゃんが亡くなるのを待って、オレを暗殺するなんてことはまずできなくなるだろう それどころか、自分たちや名家の人たちの秘密を全て、オレに知られることになる
だから、あなたが香月セキュリティ・サービスを掌握する前に急いで抹殺しなくちゃいけないって焦ったのよね
あの人たちの誤算はわたくしとあなたの関係を知らないことあの人たちは、わたくしはあくまでも閣下の命を受けてあなたの部下になっているだけだと思っているから
ジッちゃんの専任警護人を勤めていた関翔がただの高校生のオレの女になっているとは思っていない
仕事上の付き合いしかないと思っているしわたくしも、閣下に無理に高校生のお守りを押し付けられて、不満に感じているはずだと思っているのよというか、そう思わせるように社内に噂を流したんだけれどね
高校生のオレがオーナーになって翔姉ちゃんとは、まだ上手くコミュニケーションが取れていないと思い込ませた
で実際に、香月セキュリティ・サービスの中に公がオーナーになったことを不満に感じているグループが居て
香月家内の不満グループと、香月セキュリティ・サービス内の不満グループを接触させたのよ
そうしたらあなたを排除するタイミングは、今しかないでしょ
翔姉ちゃんとミナホ姉さんが、オレに言う
2つの不満を持っているグループをくっつけて焚き付けて爆発させたんだ
ついでに警察内部の香月家に不満を持っている連中も合流させたわ
香月家が政界と繋がっているから迂闊に手が出せないことに不満がある現場の人たちね公を逮捕することで、少しでも香月家の力を削ぎたいと思っている急進派の皆さんにも来てもらったのよ
そう言って、ミナホ姉さんは石神憲王を見る
そこのお坊ちゃんに、過剰な武器を持たせて逮捕するつもりだつたのよ公も仲間として一緒に捕まえてマスコミには、違法な武器で武装していた危険な若者たちとリークするつもりだったのよね
じゃあ、こいつに武器を持たせた香田っていう男は警察が石神家に送り込んだの
それは違うわ香田を送り込んだのは、香月セキュリティ・サービスの不満派よ警察の不満派はグルになってただけ
香月セキュリティ・サービスの不満派は将来、自分たちが香月セキュリティ・サービスを牛耳るために 警察の不満派は少しでもジッちゃんの力を削ぐため 香月家内の不満派は自分たちの息子をみすずに婿入りさせるため みんなオレを排除するということで、目的が一致していたのか
で向こうは仕掛けて来たわけだけれど、わたくしたちは表向きには気付いていないことになっているから工藤さんたちと木下さんしか出せなかったのよ
香月セキュリティ・サービスの正規の人員が動き出していたら反乱部隊はオレに対する襲撃を中止にしていただろう
いや、助かったよ工藤さんや木下さんが来てくれなかったらオレたちだけじゃ、乗り切れなかったと思う
そんなことないですよっわたしは、テキトーなことを話して、大きな石を1つ砕いただけですからっ
木下さんが爆砕フレイルを抱えて、クスッと笑う
黒森様は冷静に正しい判断をなさっていましたイーディさんたちも大活躍でしたし
ええあなたが今日の難局を自分の力で乗り切ったことで、あなたの評価は高まるわううん、高まることになるわ
それも翔姉ちゃんの計画の内なんだ 反乱部隊の襲撃をオレが、その場に居たメンバーだけではね除けたということにして広める
あなたが、香月セキュリティ・サービスを支配するためには必要なことなのよ受け入れなさい、公
ミナホ姉さんは、オレにそう言う
あなたは、あの人たちにとって手強い相手で怖い存在にならなきゃいけないのよ
オレ自身が、恐怖の対象にならなければ家族は守れない
それならなぜ、あなたただけここに呼ばれたのかも判るわね
オレに仕掛けて来たやつらへの制裁はオレがしなくちゃいけないってことだろ
反乱部隊の処分はオレが命じないと 自分の手を汚さなければ恐怖の存在にはなれない ミナホ姉さんが、ニヤリと笑う ドゥルルルドゥルルルル 倉庫内にサイレンが轟きゲートの大扉の上の赤色灯が明滅する 大きな扉が、ゆっくりと開く ああ、やっぱりゲートの向こうは外界に通じる坂になっている 坂の上から3台の車が下りて来た 1台は、工藤父のトラックだパン工房前のオープン・カフェでイーディと黒瀬さんが倒した男たちを積んでいる 後の2台は、商用バンだった 荷物を積むのでなく人を乗せるタイプの 3台の車が地下倉庫内に到着する 再び、ガガガガっと大扉が閉まっていく