あっちは、まだまだみたいだね
マナが克子姉が指導している元・少女暗殺者13人のパン教室の方を見て言う 向こうは簡単なパンをとにかく作って、焼いてみて自分で食べてみるところまで今夜中にやるっていうから ああ、ホントにキョーコさんも一緒に作ってるけれどホントに上手だな キョーコさん、何でもできるんだ
作り始めて2時間以上経っているからみんな、それぞれ色々だね
ポツリと、愛が呟いた そろそろ集中力が切れてくる頃だ パン作りに飽きてきている子もいる
金髪の子たちと黒髪の子たちは仲が悪いのね
ペニィ・スゥとヴァギィナたちと、アクメ・イクとオルガが競い合ってみたいだ ペニィ・スゥはイタリア系、ヴァギィナはフランス系だけど顔は東洋人っぽい アクメ・イクはギリシャ系、オルガは中央アジアだっけ
違うよ、仲が良いから競い合いができるんだよ
そうか仲が悪い関係なら、口も聞かないよな 違う派閥同志でも、ジャレ合うことのできる間柄なんだな うん、少し離れた位置で1人で黙々と作っているクリト・リリスの方が心配か ドリィとアナ、イン・ランとイン・リンは姉妹で話しているから大丈夫だと思うけれど
あたし、瑠璃子さんと明日の打ち合わせをしてくるそれで今夜は早く寝る
明日は、このお屋敷のパン工房と高校のパン工房の両方をフル稼働させてお客にパンを提供するから こっちの工房を取り仕切ることになる瑠璃子と、今日のうちに打ち合わせしなくてはいけないことがたくさんある
ううん吉田くんは大変だと思うから
愛は、ニコッとオレに微笑んだ
愛は、明日も精一杯頑張るからだから、今夜はお休みなさい
うん、明日も愛には、がんばってもらわないと困るもんな
愛は、高校の方のパン工房の要だ 元は同じ部活だったから、手伝いに来てくれている女子テニス部の子たちのこともよく知っているし
克子姉が、ここで作ったパンを車で運ばないといけなくなるから愛の負担が増えると思うし
今日は、1日克子姉が現場にベタ付きで居てくれたけれど明日は不在の時間が増える
お運びぐらいなら、わたくしがやりますよ
とレイちゃんが、パン工房に顔を出した
わたくし、明日、非番にしていただきましたから
お休みなんだ
今日が色々ありましたから、明日はゆっくりさせてもらいます
香月セキュリティ・サービスの反乱部隊が、石神兄妹を利用してオレたちを襲って来ることを、翔姉ちゃんと御名穂姉さんは予測していた
てことは、明日は変なイベントは無いってことだね
今日みたいに知らされていないのは困る
はい、明日は何も無しです1日、学園祭を楽しんで下さい
レイちゃんは、クスッと微笑んだ
ということなんで、明日はお手伝いします
いや、だけどオレの高校の学園祭だし
克子姉はパン技能士コースの正式な講師だから学園祭を手伝うことは問題ないだろうけれど
家族が協力するだけですから、問題ないんじゃないですか
ケロリと言う
高校生じゃ車の運転はできないんですし荷運びぐらいは、生徒の家族がしたっていいじゃないですか
レイちゃんは、今では有名人だし
手伝いたがってんだから、やらしてやんなよっ
地獄耳のキョーコさんが、オレたちの方を振り向いて言う
大丈夫だよ、たいていのことは平然とやってれば誤魔化せるもんだからさっ
キョーコさんはそうなんだろうけれど
グダグダ言ってると、明日もまた、あんたたちのカフェの前に装甲車で乗り付けるよ
それは困る
うん、じゃあ頼むよ、レイちゃん
ええ、判りました
ていうか、これって 明日は、オレたちの店の前で藤宮麗華トークショーも開催されるってことになるんじゃないか いいか、今日はアーニャがトークショーに参加したんだし レイちゃんも、時々、オレたちの高校に出没している テレビの特別番組で、3ヶ月に1度アーニャと闘っているレイちゃんがサプライズ・ゲストで登場してもみんな、それほど変には思わないか
じゃあ、あたし休みます
あたしも今日は休むわ
愛と一緒にメグも自室に下がると言う
ヨシくんは大変だと思うけれど今晩は、あの子たちの様子を最後まで見ていないといけないものね
ああ13人の元・少女暗殺者たちが、自分で作ったパンを生まれて初めて食べてみる瞬間にオレは同席していないといけない
生涯の思い出となる瞬間に立ち合わないと そして、オレがその場に居たことを彼女たちの記憶にも焼き付けておかないといけない
頑張ってね、ヨシくん
メグはオレとお休みのキスをすると 愛と一緒に、パン工房から出て行った
はい、じゃあできたパンを焼くわよ
その間に、向こうのテーブルのパン生地が何とか形になったらしい 克子姉が、13人の外国少女たちが作ったパンをそれぞれ集めてオーブンに入れていく さて、ここから先は焼き上がるまでしばらく待つしかない
人って想像できる範囲のことしかできないって言いますよね
あの子たちの現実感覚ってどの程度だと思いますか
現実感覚
ほら、あの13人ほぼ全員が東南アジアのスラム街です母親が売春婦だったあるいは、そういう犯罪行為が当たり前の環境で生まれましたそれから孤児院に入った子が何人か居て、最終的にはみんな犯罪組織の女ボスのペットですよね
そういう子たちにとって、自分たちが達成することのできると感じられることのできる範囲って、どんなものだと思います
例えばあの子たちが今から勉強して、一流の大学に入って研究者となり将来、ノーベル賞を受賞するような学者になれると想像するでしょうか
そういうのは無いよなあの子たちが、これまで生きてきて見てきた人たちの中に学者なんていないと思うし
というより、あの子たちは学者という職業の人たちは、どうやって収入を得ているのか理解できないと思います
何かの研究に関する費用と、自分の生活費を国や研究機関や企業から出してもらうという経済システムが理解できない
あの子たちは犯罪組織には属していましたがどういうお金の流れで、組織が動いているかまでは見ていませんあの子たちは、使い捨ての暗殺者だったわけですから
暗殺に失敗してしまった場合、少女暗殺者から組織の情報が漏れるのはマズいから あの13人には犯罪組織についての詳細な情報は、知らされていない
ですから、あの子たちの現実感覚はスラムに居た時と同じということです
売春婦と犯罪にまみれた貧民街の経済感覚