早く行きましょう皆さん、待っているんでしょ
まり子が笑顔でオレに言う
ああ、そうだった
オレは、エンコラサッと重い段ボールを持ち上げる まり子が、バンのスライドドアを閉めてくれた 車が充分離れると
麗華お姉様ありがとうございました
まり子が一礼する
ええじゃあ、頑張ってねすぐにまた様子を見に来るから
レイちゃんの運転するバンが、グワワと走り出した
ご苦労様テニス部の子たちのメイクは、食堂の隅を借りてすることになったわ
オレが、重い段ボールを運んで行くと克子姉がオレを見て、そう告げた 寧とイーディは、もう荷物を学生食堂の中に運んだらしい
克子姉、どんな感じ
ちゃんとお話ししたわみんなに説明して判ってもらえたわ
女子テニス部の人たちに、今日のお昼に国営放送の取材班が来るということの詳細と、そのことを当日の朝に、突然知らせることになってゴメンなさいというお詫び
それはもう全て話し終わったようだ
お揃いのテニスウェアを着た女子部員たちは、みんな取りあえずは納得した表情をしている でも全体の雰囲気は、不安と期待の高揚感でいっぱいな感じだ
ハーイ、皆さんこんにちは可奈、着たわよ
白いワンピースのまり子が、大きな声で可奈センパイに叫ぶ
え、誰
誰なのあの子
まだ、今日の学園祭はスタートしていない
外部の人のたちの入場時間になっていないのに見知らぬ私服の女の子がやって来たのだから、女子部員たちは怪訝な表情になる
あら、まり子あなた、もう来たの
可奈センパイも、まさかこんな時間にまり子が来るとは思っていなかったようだ
星崎さん、誰なのこの子
可奈、外部の人が今入って来るのはマズイんじゃない
女子テニス部の上級生たちが、可奈センパイに詰め寄る
あらあら、皆さんこの箱3つ分の化粧品は、このわたしが持って来たのよあなたたちのために
まり子は、わざと強調して言う
ほら、可奈早く、わたしを皆さんに紹介して
ええっとこの子は、あたしの校外の知り合いで
親友
まり子が、鋭く言う
親友でしょわたしと可奈は
ええっとあたしの親友で鳥居まり子さんです
仕方なさそうに、可奈センパイは言った
皆さん、改めましてこんにちは鳥居まり子です
まり子は、女子テニス部の子たちに優雅に挨拶する
ほら、可奈わたしの紹介の続き
もう無いわよ、話すことは
あるでしょわたしの家のこととか
まり子は、自分から言い出す
えっと話していいの
こういう場合、そうした方が皆さんに判ってもらい易いんじゃない
まり子は、ニッと可奈センパイに微笑む
鳥居まり子さんはトリイ電子のほら、トリイ電子って大きな会社があるでしょ
トリイ電子は、世界的に有名な日本を代表する電化製品のメーカーだ
そのトリイ電子のお父さんが社長なんだっけ
父が社長で、祖父が創業者会長よッッ
まり子は、ドーンと胸を張る
そういうお金持ちのお嬢様なのよ
そう可奈センパイに説明されても女子テニス部員は、みんなポカンとした顔で、まり子を見ている 突然現れた少女が、世界的な大企業の社長令嬢だと言われても頭の中でイメージが繋がらないんだろう
そうよ、そういうことなのわたしは、いわゆるお嬢様そして、今日はいつも親友の可奈が皆さんにお世話になっているお礼に、プレゼントを持って来たのっ
その箱を一回下ろして、箱の中のモノをみんなに見せて
オレは、言われた通り重い段ボールをコンクリートの地面に下ろして、箱の上を開ける
うわっ、お化粧品がギッシリ
あれ、すっごい高いやつじゃない
そこの可愛い瓶に入っているの先週発売になったばかりのだよ
女子テニス部の人たちは、まり子の高級化粧品に食い付いた
この箱と今、イーディが建物の中に持っていったのが2箱あるわ全部で3箱みんな、女子テニス部の皆さんに差し上げます
まり子は、満面の笑みでそう言う
ま、マズイわよまり子
だって、これ高いでしょこれとか、これとかうわっ、これとか高いのに大人気で品薄のファンデーションじゃないこんなの貰えないわよ
どうしてよ可奈
まり子は、平然とそう言い返す
それはだって悪いわよ
悪くはないわよこれ、みんな家にいっぱいあって困ってるんだから
まり子の言葉に、女子テニス部の皆さんは驚く
毎月、わたしのところに送ってくるのよどんどん届くのよだからお化粧品が溜まる一方なのよ
送ってくる
届く
溜まる一方
可奈センパイたちには、まり子の言葉の意味が理解できないらしい
株主なのよ、だからああ、でも、いわゆる普通の株主優待で、一年間に数万円分くらい企業がくれるっていうのとはちょっと違うわよわたし、かなり大きなパーセンテージで、ここの会社の株を持っているからだから、今、売れている商品と新しく売り出す商品は、必ず送ってくるのよ
ええ、ちょっと待ってまり子のお父さんがトリイ電子のお仕事の他に、お化粧品の会社の株も持っているの
可奈センパイが、質問する
違うわよお父様は、株をなさっていないわトリイ電子のお仕事でお忙しいんだからあたしが株主なのそう話しているでしょ
そう言えばまり子は、歌晏桃子姉ちゃんに株の取引を習っていたっけ
他にも色んな会社の株を持ってるわよ化粧品メーカーの株は今は3社だけだから、段ボール箱を3つ持って来たのよ3社とも、毎月、あたしに製品を送ってくるから
一応、大株主として製品のできはチェックしているわよ良くないと思った製品があったら、送って来た会社にちゃんと伝えてるしでも、毎月、3つの会社からどんどん送って来るから、ホントに溜まる一方で困っていたのよ
だから、普段、可奈がお世話になっている皆さんに使ってもらえたら大助かりなのよ
でも、まり子これ、あたしたちじゃなくってあなたの学校で、お友達に配ればいいじゃない
克子姉から、高級な製品を貰って喜んでいた可奈センパイも今回の化粧品の量に、すっかり腰が引けてしまっているようだ
うちの学校の子はダメよどこの家も、みんなわたしと同じように製品が送られて来てると思うから
まり子の通う超お嬢様校は名家の令嬢と、ジッちゃんの選んだ一部の大金持ちの娘しか通うことができない
ていうかここのお化粧品メーカーの創業家の子も、わたしの学校の生徒よその子が居るのに、わたしが他の生徒に製品を配るわけにはいかないわよ
ああ、ここの会社は老舗なのよね確か、明治の頃からある