アナウンサーさんに何か聞かれたら、手短に答えてあなたは、とにかく自分の仕事に集中していていつも通りにね
いつも通りにパンを作り、焼き上げて、店に出すことだけに集中する
放送は12時15分頃になるそうよまだ、時間があるわ今のうちに、なるべくたくさんのパンを焼いておきましょう
昼になれば学園祭の他のイベント体育館や講堂での発表とか演奏も、休憩時間になる お客さんは、どっと増えるだろう
大丈夫ネミンナ、揃ってるカラ
イーディが、部屋の中の全員を見る 克子姉、愛、メグ、オレ、寧、マナミタマ、リエ、エリ、ハイジ、月子そしてイーディ このパン工房の中だけでなく、お屋敷でも瑠璃子やアニエスたちがオレたちのカフェをサポートしてくれている
さあ、頑張るわよっ
克子姉の声とともにオレたちは自分の仕事に集中する
ソロソロ時間ネ
イーディが、時計を見て言った 12時10分 そろそろ準備した方が良い 壁の予備のモニターでは、すでに国営放送の昼のニュースが始まっている 今はまだ、政治とかのニュースをやっている
ええマナちゃんたち、休憩室の中に隠れて
はい、行くよ、みんなっ
マナを先頭にエリとリエとハイジ、それからミタマが休憩室に籠もる ここからしばらくは、作業する人が減るが仕方ない
克子姉これを出したら、確認して
オレは、オーブンからパンを取り出しながら克子姉に言う 最終チェックは、克子姉に任せたから オレは、これが終わったら次に焼くパンを、空いたオーブンに入れて それからメグと一緒にパンを作る方の作業へ入ろう やらなくてはいけないことは、たくさんある
はい克子姉
オレは焼き上がったパンの入ったトレーを、克子姉の前に置いて次の作業へ
うん良いわこれと、そっちのお土産用のパンも出しましょう
克子姉が指示する
ちょっと待ってネタイミングをみて、アタシが持っていくヨ
イーディが、そう言っているうちに 国営放送は、事故や事件なんかの全国のニュースを終え 12時14分 テレビ画面に映ったのはこのパン工房のすぐ外の光景 オレたちと女子テニス部のカフェ・テラスがドーンと映る
あら、予定より早かったわね今日は大きなニュースが無かったのかしら
克子姉は、そう呟いた
はいわたくしたちは今、高校の学園祭に来ています
30歳ぐらいの黒眼鏡に、ピチッとした七三分けの男のアナウンサーがマイクを持って画面に現れた
いらっしゃいませーっ
女子テニス部のお揃いのテニス・ウェアの皆さんが、カフェ・テラスの店の前に全員ずらりと並んで、一斉に挨拶する 克子姉たちにナチュラル・メイクを施された彼女たちは、みんな可愛らしく微笑んでいる ああお店のテントの中に、美里たち娼婦候補生が制服にエプロン姿で居るのも見えた しかしスゴイ人の数だな カフェ・テラスの周辺には、驚くほどたくさんの人たちが集まっていた
こちらは、どういったお店なんでしょうか
アナウンサーが、可奈センパイに尋ねる
はいここはあたしたち女子テニス部と、うちの高校のパン技能士コースの人たちがコラボレーションしたカフェなんです
魅力的な微笑みで、可奈センパイは言う
うちの高校には、将来、パン屋さんになるために特別の授業を受ける特別コースがあるんですっ
これは別のテニス部の人が言った確か、上級生だ
あたしたちは、普通のテニス部員ですけどねっ
どうぞ、1つ食べてみて下さい
テニス部の人が、トレーに乗せたパンをアナウンサーに差し出す この辺の流れは、可奈センパイがテニス部の人たちと決めたんだろう 上級生を中心に、誰が何を話して何をするのかを
はい、それでは1ついただきます
アナウンサーは、トレーからパンを取って食べる
とても美味しいですこれは全て、こちらの高校の生徒の人たちで作っているんですね
はい、パン屋くんと愛ちゃんたちがあっちの建物の中で作ってまーす
また別のテニス部員が、パン工房の建物を指差す
それでは、そちらへ行ってみましょう
アナウンサーと、テレビカメラを抱えたスタッフと、マイクを吊した棒を掲げたスタッフがパン工房へ向かって歩いて来る 途中で、テーブル席でパンを食べている女性に声を掛けた
いかがですかパンのお味は
はい、とても美味しいですうちの子が、こちらの高校の生徒なんですけれどいつも、高校のパンが美味しいって話していたんで、わたしも食べに来たんですが
わたしは毎日買ってまーす
後ろのテーブルに居た女子生徒が、笑ってカメラに言う
オレも毎日、愛ちゃんのパンを食べてるぜっ
遠くの空き地から、そんな男の声が聞こえてきた
アタシ、出るヨ
アナウンサーが、パン工房のドアの前に来たのを見計らって イーディが、焼きたてのパンのパッドを持ってドアを開ける
ハーイ、次のパンが焼けたネッ焼きたてダヨッ
ドアのところで発したイーディの声はほんのわずかな時間差で、テレビモニターからも聞こえてきた ここで撮影されているものが、中継電波に乗り壁のテレビで放送されている
いやあ、焼きたてのパンの良い匂いがします
アナウンサーの声もすぐ外から聞こえてきた
あなた仕事に集中して
克子姉が、小声でオレに言った そうだオレは、作業をしないと
えー、あなたは留学生ですか
アナウンサーは、イーディに質問した イーディは、さっき克子姉が国営放送のスタッフと打ち合わせに行った時に同行しているから
このアナウンサーさんは、イーディのことをすでに知っている
うちの高校の国際性をアピールするために、イーディを必ず出演させて欲しいというような話もしたのかもしれない
見ての通りヨニューオリンズから来ました、ミナサン、ヨロシクネ
褐色の肌に金髪に青い瞳のイーディは、日本語がまだ上手くないアメリカからの留学生を演じきる
チョット、ゴメンネアタシ、焼きたてのパンを届けに行くノネ
あ、済みませんどうぞ
センキューなのネ
イーディは、ニコニコ笑ってパッドを抱えて、カフェ・テラスの店の方へ向かう
えー、アメリカからいらした元気な留学生でしたこちらの高校には、色々な生徒がいらっしゃるようですねそれでは中に入ってみましょう失礼致します
ついにアナウンサーとカメラマンと録音係がパン工房の中へ入って来た がオレたちは、そのままパンの作業を続ける 代わりに