ずいぶん急いで食べたのねお味はどうだった
克子姉が、オーブンの前からメグに振り向いて尋ねる
美味しかったですさすが、素子さんとくるみさん
メグとしては、いつの間にかお屋敷の台所を素子たちに乗っ取られているのだからちょっと複雑な心境なんだろう だが、台所の主である克子姉が許していることなのだから、メグに素子たちに何も言うことはできない
じゃ、行きますもうすぐ1時ですから
メグは、午後まではパン工房の方の手伝いに集中してて良いと竹芝キャプテンに言われている
ああ、気を付けろよ
そうそう今日は後夜祭もあるからねあなたたちも、フォークダンス踊るんでしょ
手伝いに来ているテニス部の下級生が、笑ってそう言う フォークダンスって何のことだ
それはまだ決めてません
メグが顔を赤くして、答える
えー、踊りなさいよパン屋くんとあなたは学校公認の仲なんだから、あなたたちが踊らないと後夜祭が盛り上がらないわよ
そうそうフォークダンスは、我が校の伝統なんだから
別のテニス部の人が、そう言う 何か良く判らないけれど後夜祭で踊る伝統
と、とにかく、あたし行きます
メグは慌てて、パン工房から走り出ていく 時計を見ると午後1時の5分前 女子陸上部のグラウンドへ全力疾走で間に合うか
午後1時になれば、カフェ・テラスの混雑はかなり緩和すると思うわ
克子姉が、外部の様子を映したモニターをチラリと見て言う
ほら、1時が近付いてるからテーブル席も空いてきたわ
確かに、お客さんがさっきまでより減っている
まこうなることは、判ってたんだよねっ
ほら、今日は午後から体育館で色んなクラブの発表会があるからそれがお目当てで来た人は、みんな、そっちを観に行くもん
ああ今日は、学園祭の最終日
文化系のクラブだと、学園祭での発表会を目標にやってるところも多いですからね
あたしたちみたいに、公式試合の大きな大会が無いクラブはね
日頃の活動の成果を家族に見せようと思ったら、学園祭の時しか機会が無いものね
女子テニス部の人たちが口々に言う
だからさ、この時間にお客さんが減るのは仕方ないんだよっ
寧は、この学校に3年通っているから学園祭も3回目 だが、去年までは、校内に白坂創介の配下の教員がうろうろしていたから監視カメラで学園祭の映像だけを観ていたんだろう
それに、奈島センパイ今日は午後から、講堂の方でもバンドを組んでる人たちの演奏会がありますよ
ああ、そっちを観に行くって子も多いよね
男子テニス部のカドタ先輩も、出演するって言ってた
えー、カドタって楽器できるの
テニス部から手伝いに来ている下級生が笑い会う
あ、でもさっ、ほらあっちは人気が一番あった人たちが全員退学しちゃったんじゃなかったっけっ
寧がそう言うがそれはオレのせいだ 確かHG5だかMG5だかってバンド名の連中が、メグをからかうようなことをしたから 月子の巫女の力で、全員自主退学してもらった
それはそれとして今年は今年で、また新しい人たちが出るみたいですから
カッコ良い先輩とかいないかなって観に行く女の子は多いみたいですよ
あたしは、ああいう感覚、よく判らないですけれど
学校の中だけで有名なバンドとか、バカみたいだもんね
ていうか同じ高校の男子を見てキャーキャー騒ぐとかヤバイよね
うん、ヤバイかなりヤバイ
テニス部の人たちは、口々にそう言う
でも、テレビみたいな遠い世界じゃなくて身近なところにいる、ちょっと顔が良くて楽器ができる子の方が気楽に騒げて楽しいんじゃないの
克子姉はオーブンの作業を続けながら、笑顔でそう言った
そういうアンイなの、あたしは嫌です
えー、あんた3組のシゲタのこと気に入ってるって言ってなかったあいつも今日バンドやるんだよ
それあたしじゃないです1年のキヨミがカッコ良いかもって言ってたんです
えー、そうだっけ
テニス部の人たちが、そんな会話をしていると
いやあ、お腹いっぱいですわ
というか恵美姉さん、急いで食べ過ぎですあれでは消化に良くありません
休憩室から、エリとリエが出て来る
ハイジとミタマとキヌカも
客が減ったと聞きましたのでわたくしたちは、大至急客寄せに向かいます
このやる気は、何なんだろう つくづく、この姉妹の本性は、警護役よりも芸人に近い
うちらもトークショーやりますわ
うん、残ってくれとるお客さんたちも、たくさんいますから
双子も、やる気満々だ
無理することはないからなだったら、エリとリエのトークショーを優先して、ミタマとキヌカはサポートしてくれハイジも付いててくれ
ミタマとキヌカは攻撃特化型だから、ちゃんと隙のない警戒ができるハイジにも行ってもらった方が良い ぞろぞろと双子たちが外へ向かう
どうして、あの子たちはパン屋くんの言うことをきくの
テニス部の子が、不思議そうにオレを見ている
それよりお客さんのピークが過ぎたんだから、あたしたちも今のうちに交代でお食事にした方が良いと思うわ
克子姉が、慌てて話を変えてそう言う
ええっと、テニス部の皆さんはどうするっ
それは、うーん星崎先輩の指示が出ないと、あたしたちは
テニス部の皆さんの司令塔は、可奈センパイだから
カフェ・テラスの方から指示が来ないと、手伝いの人たちは勝手に休憩することはできないんだ
で向こうも朝から大忙しだったもんな 休憩の順番とか、かなりメチャクチャになっちゃってるかもしれない
次のパンを持って行くからついでに、オレが可奈センパイに聞いてこようか
ちょうど焼き上がったパンを、パッドに詰めながらオレは言う するとその時パン工房の裏口のドアがガチャリと開いた
あなたたち交代よ休憩して
交代要員のテニス部が4人ほど入って来た
ああ、良かった
可奈が、新しい交代シフトを作ってくれたから、昨日の残りの時間はみんなそれに合わせるって
一度、カフェ・テラスに戻って、シフト表だけは見ておいて何か不都合なことがあったら、可奈に話してシフトをチェンジしてもらいなさい
交代要員のうち、上級生らしい2人が言う
はい、先輩それじゃあ、お先に失礼します
あ、このパン、向こうに持って行くのなら、あたしたちで運びますよ