奥から眼鏡を掛けた三つ編みの上級生が出て来てオレたちに言った レイちゃんを先頭にオレたちは、ゾロゾロと音楽室の中へ入る 部屋の中では、15人ぐらいの女生徒たちが居た
うわっ、ホントに藤宮さんだ
本物なの
部屋の中でも、歓声が上がる
あ、そこの女の子までです後ろの人たちは、わたしたちとは関係ないですから
最後尾に居た黒瀬安寿が部屋に入った瞬間に、まり子が大崎さんに言う
おい、大崎オレたちも入れてくれよ
ヤジウマの一人の男子が、大崎さんにそう言うが
嫌よ関係無い人は入れません
そう言って、大崎さんはドアをピシャリと閉めた
合唱部部長の大崎善子です
大崎さんは、レイちゃんにそう挨拶した
こんにちは香月セキュリティ・サービスの藤宮麗華です
知っていますわ藤宮さんのことは
そりゃあ、今や日本中でレイちゃんのことを知らない人はいない
それで音楽室に、どんな御用ですか
大崎部長は、キッとした眼でオレたちに尋ねる
ええと説明して下さいますか
レイちゃんから、オレにバトンタッチだ
あのちょっと、込み入った理由があってピアノを貸して欲しいんです
ピアノを
驚く、大崎部長
そのここに来てもらっている松下さんの演奏を、みんなで聴かないといけないことになって
うちの生徒でない人に、音楽室のピアノをなぜ貸さないといけないんですかっ
大崎部長は、キツイ口調でそう言うが
大崎さん、演奏してもらいましょうよその人の制服って
あ、あたしも知ってる有名な音楽科の高校の制服だよ
わたしの従姉が、受験して落ちたとこだよね
演奏のレベルは、かなり高い学校ですよ
茉莉花たちの高校は、音楽をやっている高校生たちには、良く知られているようだ
こちらの松下真樹さんは、ピアノ科で学年一番の腕前だそうよ
まり子が、自慢げに言う
ほんのちょっと1曲だけ演奏してもらうだけですから、お願いします
オレは、大崎さんに頭を下げる
1曲だけですね判りましたどうぞ
大崎部長は、不承不承、納得してくれた
お借り致します
松下さんのお姉さんも、合唱部の皆さんに頭を下げる
美樹も一緒に演奏しましょう
妹に、そう告げる ずっと大事に抱えていたバイオリンケースとともに、松下美樹さんも姉と一緒にピアノの方へ向かった 松下真樹さんは、ピアノの蓋を開けて演奏の準備をする 美樹さんの方も、ケースを開けて中からバイオリンを取りだした
うわ、高そうなバイオリン
合唱部の一人が、美樹さんのバイオリンを見て声を上げる 真樹さんは鍵盤を叩いて、音を確認した 美樹さんの方も、軽く弓を弾いてバイオリンの調整をする
ピアノは調律できていますわ
真樹さんの鳴らす音を聞いて、茉莉花がオレに言う 茉莉花もピアノ科だから、聴いただけで判るんだ
いい美樹
姉妹は、演奏の準備ができたようだ
それで何を演奏してくれるのかしら
まり子が、松下姉妹に尋ねる
それではクロイツェル・ソナタの第1楽章を美樹、良いわね
姉妹の言葉に
クロイツェル・ソナタってあなたたち
大崎部長は、驚きの声を上げる
お静かに始まりますよ
レイちゃんが、大崎さんを制した 松下姉妹の演奏が始まる キュゥゥゥンッ いきなり音楽室に響いた美樹さんのバイオリン その音だけで、オレたちは演奏に引き込まれる ただの中学生の演奏じゃない この子凄い
タン、タタントトゥン、トゥン
バイオリンに続く真樹さんのピアノも
音の質からして素人ではないことが、オレにも判る
そのまま演奏は、少しずつ激しさを増していく
凄すぎる
松下姉妹は、完璧に息が合っていると同時に
ピアノとバイオリンの音が、高いレベルで競い合い、闘い合っている
音楽室の中は、姉妹の発する激しい音の洪水に包まれていく
トゥトゥトゥ、タン、ターンッ やがて演奏は終わった 余韻でしばらく、オレたちは動けなかったが
凄い、凄かったですっ
ドアを開けてくれた合唱部の人が、立ち上がって拍手すると 他の人たちも、みんな立ち上がって松下姉妹に、拍手を送る
こんなに凄いとは思ってなかったわ
10分以上もある大曲を演奏仕切っちゃうんだもん
うん、驚いたわ
10分以上 合唱部の人たちの言葉を聞いて、オレは驚いて音楽室の時計を見上げる 確かに10分以上、経過している 聴いている時は、そんなに長い曲だとは思わなかったのに
素晴らしかったわ松下さん
まり子も、姉妹に拍手する
うん、凄い演奏だった感動したよ
オレがそう言うと茉莉花が、嬉しそうに微笑む
予想以上の演奏だったわ
合唱部の大崎部長も、松下姉妹の腕前を認めてくれる
クロイツェル・ソナタは、ベートーヴェンの作曲だけれどトルストイの小説のタイトルにもなってるわね
オレたちの背後音楽室の入り口のドアの辺りから 良く知っている声が聞こえてきた
ロシアの公爵が、奥さんと友人が演奏するクロイツェル・ソナタを聴いて2人が不倫関係にあると確信するっていうストーリーだったわ
工藤父とアグリピーナさんと車でどこかへ向かったはずのミナホ姉さんが、なぜ、ここに
久しぶりにクロイツェル・ソナタを聴きました
相変わらず、コミケ会場まで電車で30分の距離に住んでますが今年は行きませんでした(夏も)
うーん、どうも体調があまり良くありません
今年は、なんとか更新が再開できるようになりましたが個人的には、色々と問題山積みの1年でした
御名穂の登場で年越しとなります
皆様、よいお年をお迎えください
1396.学園祭2日目 / ピアノの連弾
あれっ、あの人って
夏までうちの高校の先生だった人よね
合唱部の女生徒たちが、ミナホ姉さんに気付く
ええと確か、どこのクラスの担任もしていなかった先生だよ
ああ、そうだええっと
確か弓槻先生だったと思う
ミナホ姉さんはお母さんの家の弓槻を名乗って、担任クラスを持たないどころか、一切、授業を行わない謎の教師だった まあ、ミナホ姉さんは本当は教員免許を持っていないから、仕方ないんだけれど
あら辞めた教師が学園祭に来るのは、そんなに変なことかしら
ミナホ姉さんは、いつもの冷たい微笑で合唱部の人たちに言う いや、そんなことより どうして、今、ここにミナホ姉さんが居るんだ ミナホ姉さんは、駅前ホテルの地下の新しい娼館から、美里たち娼婦候補生を車でこの高校に連れて来た後