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 松下姉妹の才能はオレにも、もう判っている

それでだからわたし松下さんたちに音楽を続けてもらうためならわたし何でもしますどんなことでもしますだから、公くん松下さんたちを助けてあげて下さいお願いしますお願いですから

 茉莉花はパイプ椅子から立ち上がり校長室のカーペットの床に手を付いて  オレに土下座をする

待って、そんな高畑さん

 松下真樹さんは、慌てて茉莉花に駆け寄り自分も絨毯の上に正座する  妹の美樹さんも、姉に習って大切なバイオリンケースを抱えたまま、姉のすぐ隣に正座した

わたしたち姉妹は高畑さんに、こんなことまでしてもらって良いような才能は無いわ

いいのよわたしはいいから、だから、松下さん

ううん自分のことは、自分でお願いするわ

 松下さんは、正座したまま真っ直ぐにオレを見上げて

わたしは黒森さんが、どういう方でどんな力を持っていらっしゃるのか、まだ良く判らないですけれどでも、高畑さんがここまで信頼なさっている方なのですから、わたしも信頼致します

どうか、わたしたち姉妹をお救い下さいいえ、美樹だけでもどうにか美樹がバイオリンの勉強を続けられるように、ご援助下さいわたしのことは、どうなっても構いませんですから、お願い致します

 松下真樹さんも、オレに土下座をする額を床に擦り付けた

姉さんわたしは

美樹このままでは、あなたのバイオリンはお祖父様に売られてしまうのよそれでもいいの

 美樹さんは、ビクッと震えて腕の中のバイオリンを見る

それは嫌ですそれだけは、絶対に嫌ですお父さんのバイオリンを獲られるのだけは、絶対に嫌

だったらあなたもお願いなさい

 姉の言葉に、美樹さんはバイオリンケースを自分の横に置いて、床に手を付く

わ、わたしもううんわたしこそ、どうなっても構いませんお願いします助けて下さい

 茉莉花と松下姉妹3人並んで美少女たちが、オレに向かって土下座する

正直、松下さんのお祖父さんを説得して、バイオリンを売るのを諦めさせたり真樹さんが、今の高校を辞めないでいられるようにするのは簡単にできます

 そんなの巫女の力のある子を連れて行って、松下さんのお祖父さんに孫娘のことは忘れろと命じれば済む

そうよね今、法的にはそのバイオリンは、お父様からの遺産ということで、美樹さんの所有物になっているはずよお祖父様が手出しできないようにするのなら美樹さんが、そのバイオリンを公に売却したことにしてそれを改めて、公から貸与されているって形にすればいいのよそして、その事実を弁護士を通じて、松下さんのお祖父様に通告すればもう、どうやっても勝手に売り飛ばしたりはできなくなるわ

 まり子は、オレの発想よりももっと現実的な提案をする

真樹さんの学校の件だってようは学費を払う人がいればいいんでしょあなたたちの保護者は、お母様でお祖父様ではないんだから問題なのはお金のことだけなんだから、どうにでもなるんじゃないの何なら、本当にわたしがトリイ電子の音楽家養成奨学金を出して貰えるように頼んであげましょうか本当は音大生向けのものだけれどあなたたち姉妹は特別な才能があるから、特例で認めてもらえるように、わたしのお祖父様に掛け合ってあげるわよ

 奨学金さえあれば真樹さんも、音楽科の高校を続けられる

いや、それだけでいいのか

まり子オレ、音楽の世界のことは本当に知らないんだけれど

 オレは頭を整理して考える

松下さんの姉妹たちの場合はただ普通に、音楽の勉強をしてるだけでは足りないんじゃないのか

 オレは茉莉花と最初に会った夜のことを思い出す  ミナホ姉さんは、茉莉花にピアノを弾かせてピアニストになりたいのなら、援助をしても良いって言った

今の松下さんたちが、凄い才能の持ち主なことは判っているけれどその才能を磨いて、ピアニストやバイオリン奏者になるためにはただ音楽の学校へ通うだけじゃ足りないんじゃないのか

ああそうね本気でプロを目指すのなら、学校の勉強だけじゃダメなのよね良い先生に個人レッスンをして貰ってコンクールに入賞しないと

 そうだそういうことを、ミナホ姉さんは話していたはずだ

個人レッスンっていうのはやっぱり、お金がかかるんだろ

そうでしょうね良い先生に教えていただかないと意味がないしそういう先生はレッスン費用も高いと思うわコンクールだって、日本国内だけじゃないし最終的には、外国の有名な音大に留学して、外国の伝統のあるコンクールで入賞しないと

 外国へ行くのなら、さらにお金が掛かる

そうね公の言う通りだわ美樹さんのバイオリンを守って、真樹さんが今の音楽科の高校を続けられるようにするだけでは全然足りないのね

 まり子も、納得する

松下さんたちの才能ならプロの演奏家を目指すところまでいかないと、もったいないもの

 でも、その道を進むなら莫大な費用が掛かる  松下姉妹のお祖父さんは、大きなドラッグストア・チェーンの経営者だというからお金はあるだろう  だけど音楽には興味の無い人だし、心の底から孫娘たちを支配したいと思っている  そういう人間に、巫女の力で命じて金を出させたりしたら後々で大きくコジレルような問題になってしまうかもしれない  美樹さんのバイオリンや真樹さんの学校のことは現在の状態を、自分の思ったように変えることをあきらめさせるだけだから、心の改変としては大したものではないけれど  自分の金を自分が望んでいないことに、しかも莫大な額を支払わせ続けるという改変は心への負担が大きすぎる  巫女の力で相手の心の奥深くまでイジッてしまうと心が壊れる  特に、個人の性格に影響が及ぶようなことは、避けた方が良い  オレの心を読んで月子がうなずいた

つまりこれから、10年以上、松下さんたちが演奏家として大成するまで、ずーっと費用を援助してくれる人が必要なんだ

 そこまでする人間が現れないと現状維持だけでは、意味が無い

お、お金ならわたしたちが、大人になってから返します一生懸命、働いて返しますから

 妹さんの美樹さんが床に正座したまま、必死に訴える

きっとプロの演奏家になってそれで演奏してお返ししますから

 今まで黙っていたミナホ姉さんが口を開く

あなたは、今は同じ年齢のバイオリンをやっている日本人の中では、確かに優れた才能を持っているわそれは認めるけれど5年後も、10年後も同じ様に高い才能を示し続けられるかは、誰にも判らないんじゃない

子供の頃は神童と呼ばれた才能の持ち主が、成長の途中で挫折してただの人になるなんていうのは、よくある話だわそれに外国へ留学してみたら、自分よりも優れた才能の人たちに圧倒されて、ダメになってしまう人も多いそうだし