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ああ、あそこか

女子陸上部の人たちは全員グラウンドの入り口の辺りに集合していた

 気配に振り向くと  黒瀬安寿は、相変わらずオレの後ろを数メートル離れて追ってきている  あ無言で、木の陰に隠れた

これはあの子なりに、オレに気を使っているつもりということなんだろうか

よく判らない

おおーっ、パン屋くんだっ

恵美、王子様が迎えに来たわよっ

 オレの姿を見て、女子陸上部の人たちがそんなことを言う

やっぱり後夜祭では踊るんでしょ山峰ちゃんとパン屋くんも

 この高校ではホントに恋人同士の生徒は、後夜祭でフォークダンスを踊るというのが決まりになっているんだ  メグは、恥ずかしそうに下を向く

なんだい、山峰はフォークダンスに行きたいのかいっ

 もの凄く不機嫌そうな顔で陸上部部長の竹芝さんがやって来る  この人は、信じられないくらい硬派な性格だからそういうイベントは嫌いなのかもしれない

どうなんだい山峰

 ギロッとメグを睨む竹芝さん  グラウンドに集まった女子陸上部の他の部員たちも一斉にシーンと静まり返る

あ、あのキャプテン、申し訳ないんですけれどああああ、あたしも、フォークダンスに行きたいですっ

 一人の部員が手を上げる  その部員を竹芝キャプテンは、睨み付けるが

えっと、あのあたしは、もう3年生ですし、この学園祭で陸上部も引退しますそ、それであの

 その上級生の部員は、決死の覚悟で竹芝さんに言う

ゴメンなさい、今まで内緒にしてましたけれどあたし、今年の春から交際している相手がいましたぁぁッッ

 と、驚きの声を上げたのは女子陸上部員の3分の1ぐらいの人たちだけだった  つまり上級生を中心に、残りの人たちはこの人に恋人がいることを知っていたんだろう

そ、それであたしは、これが最後の学園祭でフォークダンスが踊れるチャンスも、今日だけなんですっですからなにとぞ、このわたしをアカマツ・アケミをアカマツ・アケミをダンスに送り出していただけるようお願い申し上げますっアカマツ・アケミですっ

 最後はテンパって選挙演説みたいになった

で、アカマツの相手は誰なんだい

 竹芝さんは、アカマツさんを睨んだまま尋ねる

あああ、あたしの彼は3組のキヨシバ・キヨシキヨシバ・キヨシでございますっどうぞ、温かいご支援をタマワりますよう、心からお願い申し上げますっ

 アカマツさんは、もはや失禁寸前だ

あ、あの済みません実はあたしも

 と別の部員も、口を開く

あたしも、実は3年2組のヨネヤ・ヨシオくんと付き合ってますッ

うええーっ

 今度は、竹芝さん以外の陸上部員全員が驚きの声を上げた

ちょっとマサミ、あんた、いつからよ

全然聞いてないわよっ、そんな話

ええっとあの実は、昨日から

 き、昨日  昨日は学園祭の初日だ

あの休憩時間に、ヨネヤ君に体育館の裏に呼び出されてコクられちゃったてへっ

てへじゃないわよっそれで、マサミ、あんたそのまま、オッケーしちゃったの

そうよ、そうよどういうことなのか説明しなさいよっ

 竹芝さんの恐怖よりも、好奇心が勝ったらしい  女子部員たちは、どんどんマサミさんに詰め寄る

いや、それがヨネヤ君が突然、STAPも解散しちゃったわけだしオレとマサミが、付き合うっていうのも悪くはないんジャネって言ってきて

うーん意味が判らないわよ

あたし判る話の流れとしてはあり得ることよ

あり得ないことが起きたんだから、あり得そうなこともあり得ちゃっていいっていうハイレベルな理論武装よ

ああ、肯定的な話題が続くと、ついつい話にうなずいてしまうっていう羽毛布団とかダマされて買わされるパターンの

ヨネヤ君は、そういう人じゃありませんっ

 マサミさんが、女子部員たちに怒る

それでこのまま、オレとマサミが付き合うっていうのは、アリかナシかどっちだと思う忌憚の無いご意見をオレに告げてミソなぁんて行ってくるからあははははは

 不意に笑い出すマサミさん

あたしはナシってことはないんじゃないかなぁなぁんて答えたんですけれどあははははははとりあえず

軽いな、お前

 竹芝キャプテンの重い声が響く

あす、済みませんキャプテン

 慌てて、マサミさんは小さくなる

別件で、自分もキャプテンにご報告しなくてはならないことがございますっ

 また別の短髪の部員が手を上げる

何だツカモト

はい、自分はいえ、わたくし、不肖、ツカモト・トモコは、現在、気になっている男子が若干1名存在しておりますーっ

 ツカモトさんは、胸を張って宣言する

そしてぇぇぇぇ、キャプテンのお許しがございましたらこ、こ、こ、これからその男子に、わ、わ、わ、わたくしと踊って下さいませぬかといえ、わたくしとフォークダンスを踊ってたもれいやいや、フォークダンスを踊ってくれなければ、このツカモトこの場で腹を切って死ぬと強要せねばなりませんっ

 告白でなく、強要なのか

ですので、どーかキャプテン不肖、ツカモトを、何も言わずに送り出して下さいっお願い致しますっ

 ツカモトさんは、その場で土下座をする  グラウンドに風が、ぴゅうううと吹いた

一応聞くが、ツカモト相手は誰だ

 竹芝さんは、静かに尋ねる

1年3組、アオバ・シゲアキ氏でございますっ

 ツカモトさんは、土下座の体勢から顔を上げ竹芝キャプテンを見上げて答えた

えツカモトさん、1年のアオバ君ならカノジョいるわよ

 部員の1人がポロリと呟く  ギョッとなるツカモトさん

いや、だからアオバ君でしょあの人は、中学の時から付き合っているラブラブのカノジョがいるから

うん、有名だよね体操部のアイカワさんだよね

あたしの中学の後輩だからよく知っているけど

あの2人は別れないよねー

うん、無理だよねー

すっとラブラブだもんねぇ

かくなる上は、この場で腹を

 おいおい、ツカモトさん

ツカモトのことは無視して他にも、この中にフォークダンスを踊りたいやつはいるか

 竹芝キャプテンは、女子陸上部員全員に言う

あ、は、はいわ、わたしも

ほら、ミホコも良い機会だから、公表しちゃいなさいよ

す、済みませんわたくし、スズキ・ミホコもカレシがおりますっ

 というわけでさらに2人、恋人のいる部員が手を上げた

他にはいないんだねっ

 竹芝さんは、1人1人の顔を睨み付けていく  もう手を上げる部員はいない

いいだろう陸上精神に則って、節度有る男女交際を心掛けろ道を外れたやつは、あたしと陸上の神がゼッタイに許さないからね覚えておきな