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 香月家は、室町時代から続く家だという  資産の量も、家の品格もとんでもなく突き抜けた名家だ

でも、松下さんのお祖父様はご自分の資産を、全てご自分が一人で稼いで貯めたものだと思っていらっしゃるわ

だから面倒なんだよ

 ミナホ姉さんとキョーコさんの声がそう言う

とにかく今夜のことは、あたしとミナホに任せなちゃんと、お嬢ちゃんたちの望む方向に落とし込んでやるからさ

 それなら良いんだけれど  キョーコさんとミナホ姉さんのペアが、しくじるとは思えない

うん任せます心配ないですよ大丈夫です

 オレは松下姉妹に、そう言う

ええ、大丈夫大丈夫だから

 茉莉花が、松下真樹さんにニコッと微笑む

今の松下さんたちの様子をよく覚えておきなさい

 松下姉妹  オレの視界にある松下さんたちはまだ安心できないらしく、困惑した表情のままだ

それが、わたしたちと接触した普通の人たちの反応よ

 普通の反応

普通の人たちが、いきなり、わたしたちの世界を見たらすぐには何も理解できないわただただ、びっくりして怖くなる

 そうだ松下真樹さんは、さっき怖いと言っていた

わたしたちが、普通ではない世界に生きていることだけは何となく理解できるけれどその普通じゃない世界が、きちんと成立しているから怖くなるのよ

 今日の午後最初に学食で会った時には  オレはただの男子高校生だった学園祭で、パンを売っているだけの  それからトリイ電子の社長の娘のまり子とか  ちょっと怖いアメリカ人のマルゴさんとか  レイちゃんとか  段々、普通じゃない人が現れて  そのまま、オレたちのお屋敷に連れて行って

いきなり、美少女しかいない家に連れて行かれたのは驚いただろしかも、可愛すぎるアニエスが、その子たちの相手をしていたし

 キョーコさんの言う通りアニエスは、茉莉花が松下姉妹を家族にしたがっていると知って、一生懸命、姉妹に話し掛けていたと聞いた  オレたちには、もうアニエスの美しさは当たり前のことだけど  松下姉妹にとっては何で、金髪ハーフの超美少女が、親しげに話し掛けて来るのか理解できない

そんでクリトの一件だあんたが、クリトのお尻をひん剥いて叩いたのは、あたしはモニターで見て大爆笑したけれど普通の子はドン引きだろう

 クリトが松下美樹さんのヴァイオリンを勝手に持ち出そうとして  アンネ・ロゼたちがクリトを殺そうと、ドリル槍を持ちだしたところからすでに普通じゃない  もちろん、オレがクリトの生尻を叩いたのも普通じゃないんだろうけれど

でも、普通じゃないことがあの屋敷の中では、問題なく成立している誰も、あんたがクリトの尻を赤く腫れ上がるまで叩いたことを責めないしむしろ、アレであの場は上手く治まったそういう状況を見ているから普通の子は、怖く感じる

 普通じゃないことが普通に受け入れられているから、おかしいとも言えない  自分の知っている常識と違う世界が成立していることに、恐怖を覚える

で最後が、そのリムジンに、香月セキュリティサービスの護衛車あんたと瑠璃子ちゃんは、高そうな服に着替えている瑠璃子ちゃんが、香月家のご令嬢だっていうのも嘘じゃないと感じるあんたたちが、それを当然のこととして話していてその話が、成立しているから嘘なら、どこかが破綻しているはずだけれどあんたたちの言動には、何一つ迷いが無いきちんと成立しているだから、怖い

 キョーコさんは、そう分析してくれた  改めて松下姉妹を見る  確かに怖がっている  オレたちみたいな存在が、成立していることが怖いんだ

怖くないです

 茉莉花が真樹さんに言う

どんなものも、どんなことも、どんな人もそういうものなんだって判ったら、怖くなくなるの

わたしは自分のことも、妹のことも、公くんたちのことも突然、驚くことがいっぱいあったんだけど全部そういうものなんだって呑みこんだら受け入れられたよ

 茉莉花はお屋敷に居た娼婦の娘だ  引退した後の娼婦を茉莉花の父親は孕ませた  エリカという妹がいたことを知ったのもほんの少し前だ  茉莉花は自分の出生の秘密も、妹の存在も突然、知らされた  そして、その夜のうちに妹と同時に、オレの女になった

大事なのは、眼の前で起きていることをそのまま呑みこむこと怖がっているだけじゃ、前に進めないから

 真樹さんの手を握ったまま茉莉花は言う  真樹さんが、茉莉花の眼を見る

もう茉莉花でいいわわたしも、今からは真樹って呼ぶから

 優しく微笑む茉莉花

ドキドキしてるわたしも、ドキドキしてるわドキドキしている自分を受け入れてるドキドキしている真樹のことも、受け入れてるこれは吊り橋効果とかじゃないわ真樹にはあたしが付いてるあたしには、公くんが付いてる大丈夫、何も心配はないわ

大丈夫すべて上手くいくから公くんや、わたしのお姉さんたちが、全部解決してくれるから

 真樹さんは

高畑さんを茉莉花を信じる茉莉花が信じている人たちを信じるわわたし

 今度は、真樹さんの方から茉莉花の手を握りしめた

ね怖くない怖くないわ真樹

はーい、まもなくご到着でーす

 前を見ると目的地の駅前ホテルが見えた

公、最後に言っておくけれど

 ミナホ姉さんからの通信が続く

松下さんのお祖父様も松下さんたちと同じだから

わたしたちとは違う普通の人なのよ常識や考え方、センスが

 オレたちとは違う世界の人間

今夜は普通の人と、どう向き合うべきなのかそれを学びなさい

あたしとミナホの特別講義さ

 キョーコさんの声は、楽しそうだった

それじゃあレッスン・スタートだよ

 オレたちの車列は駅前ホテルの地下駐車場へ下りて行く  先頭が香月セキュリティサービスの護衛車  2台目が、ミナホ姉さんとキョーコさんたちの乗るベンツ  3台目が、オレたちのリムジン  その後ろに、さらに護衛車が2台続いている  車列は地下2階で停まった  このフロアには、ほとんど車が停まっていない

ああもう、いらしてるみたいですね

 木下さんの言う方を見ると駐車場に1台の外国車が停まっていた  オレたちの車から、7メートルぐらい離れている

お祖父様の車です

 松下美樹さんが呟く

BMWの1シリーズですね

 木下さんがそう言った

どういう車

BMWの中で一番安い車です

 つまり大手ドラッグストア・チェーンの社長だから外車ぐらい乗らなきゃいけないと思っているけれど  高価過ぎる乗用車を買う気はないという人か

あ、御名穂さんが降りますね

 見ると前のベンツのドアが開いて、ミナホ姉さんが出て来る