ただいまネ
愛ちゃん、お邪魔するよーっ
イーディと寧が、先に入る それから、アーニャがドリル姉妹に中に入るように言った 姉妹はドリル槍をドアに潜らせて中に入る アーニャとオレも中に入って鍵を掛ける パン工房はパン技能士コースのために作られた施設だから、15人くらいは研修できるような広さはある 実際、今でもここで、女子生徒たちにパン作りの講習会をしたりしているし この前も、テニス部の女子たちに学園祭でやる喫茶店用のパンの作り方をマナが教えた ドリル槍姉妹は、今入って来たドアに一番近い椅子に座る もちろん、槍を握ったまま 何かあった時には、槍の先端のドリルを使ってドアをブチ抜いて、外に逃げるという発想なんだろう 常に自分が生死の間に居ると思っている 行動に余裕が無い ああ、愛がパン作りの材料を出しておいてくれた
ありがとう、愛
オレは手洗いをして、作業に入る準備をする
オレ、ちょっと作業をするからみんなはお茶でも飲んでてよ
ドリィとアナに見せるために、ゼロからパン作りをするんだけれど 姉妹には、そう感じさせたくない オレはあくまでも、いつもやっていることをしているだけだと思わせないといけない 食べ物ができていく様子をドリル槍姉妹の方から、関心を持ってくれないと意味がないんだ
Darlingとアイは、お昼の準備に忙しいノネアタシがコーヒーを入れるヨ
あ、待ってせっかくだからさ、もうちょっと面白いものを飲もうよっ
寧は、そう言うとさっきとは反対側の学生食堂に繋がっている方のドアに向かう
ちょっと待ってて、今、買って来るからっ
寧は、そう言ってドアの鍵を開け学食へ行った その間にオレは作業用のエプロンや、髪の毛落下防止用の帽子を被る
うーんと吉田くん
ああ、生地を寝かせている時間が取れないからパイみたいなのしか作れないよな
普通のパンなら、イースト菌で発酵させる時間が必要だけれど
そういう時間があると、ドリル姉妹の集中が途切れると思う
この姉妹の関心を惹き続けるためには、ささっと作れるパンじゃないとダメだ 愛が、克子姉から習ったパンの作り方を自分でまとめたレシピ・ノートを持って来る 愛は何でもゆっくりだけれど、こういうことはキチッとやる子だ
これかこれ
じゃあ、こっちを作ろう
オレは、見た目が派手な方を選んだ 愛が、コクッとうなずく 2時間目が終わった後のいつもの時間からはオレは、今日の昼休み用のパンを焼かないといけない だから、このドリル槍姉妹に見せるためのパン作りは作業に支障が出ないように、てきぱきとやらなくちゃ
はーい、お待たせっ
寧が学食の自販機から何やら買って来た
イーディ大きめのグラスがあったでしょっ出してっ
イーディがグラスを戸棚から取り出す
オレと愛は、今はいいからな
オレたちは作業に入らないといけない
うん、判ったあたしたちだけねっ
寧とイーディ、アーニャとドリル槍姉妹にグレースさん6つのグラスが並ぶ
何なの
アーニャが寧に尋ねる
ああ、アーニャさんも一緒に飲んでねみんなで一緒に飲まないとこの子たち、口を付けないと思うから
寧は、買って来た500ミリのペットボトルを開けると 鮮やかな緑色の飲み物を並べた人数分のグラスに、均等に少しずつトクトクと注いでいく
これはメロン味のソーダ水ですっ
寧は、1本目のボトルが空になると、2本目のペットボトルを開けグラスに足していく2本目が終わったら、3本目 特定のボトルの飲料だけを決まったグラスに注ぐと、ドリル槍姉妹が警戒するからか 全てのグラスに、複数のボトルの飲み物が注がれている様子をドリィとアナに見せている
これにバニラのアイスクリームを浮かべますっ
ああ、アイスの自販機もあったんだな 寧はスプーンで、カップ入りのアイスを丸く掬い取るとメロンソーダの上に浮かべた
はーい、クリーム・ソーダの完成ですっ
寧がそう言うと、イーディがそれぞれのグラスにストローを指していく
はーい、好きなのを取ってっ
寧の言葉をアーニャが、ドリィたちに通訳する 命令口調で言ったんだろう 姉妹は恐る恐る、グラスを選んだ
じゃあ、アタシはこれネ
アーニャさんは
わたくしは、これにするわ
それぞれが自分のグラスを手に取る
アイスクリームを浮かべるなんて、変わっているわねメロンの炭酸飲料なの
アーニャが、寧に尋ねる
うん、日本だとクリーム・ソーダは、こういうのが主流なんだよねメロン・フロートとも言うけれど
さあさ、飲んでみるネ
イーディと寧とアーニャが、先にクリームソーダに手を付ける ドリル槍姉妹は、他の子たちの様子をジッと見つめている
あら、面白い味ね
そうでしょっそうでしょっ
この子たちにも勧めてみるネ
イーディが、ドリィたちに何か言う 多分、美味しいから、飲んでごらんというようなことだろう 姉のドリィがアーニャや寧が美味しそうに飲んでいる様子を見てから 自分のグラスを飲む それから妹のアナに、何か言った 飲んでも大丈夫そうだという話だろう アナも飲む ああ、驚いている
浮いているアイスはねスプーンで掬って食べてもいいんだよっ
寧がそう言って、実際にプラスチック製のスプーンで掬って食べる
はい、スプーンネ
イーディが、ドリィたちにスプーンを配る 妹のアナが、寧の真似をして浮いているアイスを食べようとするが 片手で槍を握りしめているから、食べにくそうだった
それ、後ろに置いたら大丈夫だよ誰も盗ったりしないからっ
寧の言葉をイーディが翻訳する ドリル槍姉妹は、顔を見合わせてちょっとだけ躊躇したが 言われた通りに、槍を後ろの壁に立てかけて両手でクリームソーダに向かって行った
やっぱり、一緒に何かを飲み食いすると違うね
寧が優しい笑顔で言う
みんなで同じモノを飲んでいるからいいのネ1人でも違うモノを飲んでたらこうは
ならないヨ
そうねこういう機会でも無ければわたくしは、こういうモノは飲まないわね
アーニャがそう言う
あ、そうだこんなのもあるんだけど、食べてみてっ
寧が、ポケットから何かの小袋を取り出し開けて、アーニャに勧める