お昼は、そっちの冷蔵庫の中にあるわ
克子姉が、予備の冷蔵庫を指差す
朝、パンと一緒に車に乗せてきたから出してちょうだい
ああ、オレは今日は搬入に立ち合って無いから、知らなかったけれど 昨夜は、可奈センパイたちもお屋敷に泊まったんだから弁当とかの準備ができているはずがない
今流行りの冷たくても美味しいスープ・スパゲティとポテトサラダだから、そのまま食べて
お皿出そっスプーンやフォークとかはああ、お屋敷から持ってきてあるんだねっ
これ克子さんが作ったんですか
違うわよマナちゃんたちよマナちゃんとありすちゃんと、双子ちゃんたちが、早起きして作ってたわ
マナとありすとリエとエリか
自分たちはまだ学校が始まらないからって
アニエスたちは、今日から超お嬢様校に通っているが マナたちが新しい中学に通い始めるのは、水曜日からだ
あなたたちの分も、ちゃんとあるわよ
克子姉が、アーニャやドリル姉妹、グレースさんに言う
あたし、お茶入れます日本茶でいいかしら
メグが、外国人のアーニャに尋ねた
わたくしは平気よこの子たちもアジアの子だから大丈夫だと思うわ
アーニャは、そう答えるが一応、ドリル槍姉妹に尋ねる
うん、平気だってていうか食べ物には無頓着なのよねこの子たち
狂った女ボスの組織で少女暗殺者としての教育しか受けていないからか
あたしが、よそうわ月子ちゃん、みんなにお皿を回してくれる
ミタマとイーディの分は多めに取っておいてよ
判っているわよあの2人は、ホントに良く食べる子たちだものね
そっちの姉妹が、どれぐらい食べるか判らないから大目に作ってあるわアーニャさんは、前にも来ているから知っているし、グレースさんは、昨夜と今朝、一緒にご飯を食べたから大体の分量は把握しているけれど
も、申し訳ない
グレース・マリンカさんは、自分が大食いであることを自覚しているらしい
さあ、さっさと食べるわよあたしもお腹ペコペコなんだからっ
何もしていない雪乃が平然とそう言う オレは学食に通じる方のドアを開け
イーディ、ご飯だぞ
あ、判った、今、行くネミタマも行くヨ
うむそれでは諸君、わたくしたちも食事を摂らねばならぬので、これで失礼する
ミタマが、集まっている生徒たちに言う
ミタマさーん
ミタマには、男女ともすっかり固定ファンが付いたらしい
また会おう、諸君
男装のミタマは、颯爽とパン工房内に入ってくる イーディも、中に入るとカチャリとドアの鍵を閉めた これで、パン工房内は密室となる 完全防音だから、ここの声は一切、外には漏れない
ミタマさん、そこへ座ってイーディは、こっちにどうぞ
メグが2人の席を用意した
さあ食べようぜ
オレたちの昼食が始まる
ンッグ、ンッグンンッ
モグモグハムッ
ドリィとアナのドリル槍姉妹は、スープスパゲッティが気に入ったらしい わっせわっせと掻き込んでいく オレたちも、どんどん食事を進めていく
ホント日本に来る度に思うんだけれど、あなたたちのところを食事が美味しいわね
アーニャが、笑顔でそう言った
マナちゃんと瑠璃子ちゃんは、もう免許皆伝してあげたいぐらい上達しているんだけれど双子ちゃんも、お料理に関しては良いセンスをしているのよ
あの子たちは、料理人を目指したらいいのよっ双子のシェフとかって、面白いでしょ
雪乃が、そんなことを言う
ああ、いいかもねまり子や、まり子のお姉様に出資してもらって、フレンチ・レストランとか開業したらいいわよ
可奈センパイは、まり子とすっかり意気投合しているから香月家でなく、トリイ電子の創業家の令嬢であるまり子や、歌晏桃子姉ちゃんの名前を出す
あたしは、まり子と何のビジネスをやろうかしらまだ、コレっていうのが見つからないのよね
そんなことを言うまり子に、グレースさんは
あなたたちは、本当に金持ちなんだなあの屋敷といい、学校の中にこんな私的な施設を持っていたり
あら、最初からお金があったわけじゃないわよお金持ちの家に生まれた子は、あたしたちの中でも一部だけよ
そうそう、恵美の実家なんてホントに貧乏だったものね
今は、昔とは違うわお義父さんもお義母さんも今は、白坂家から離れて、香月グループの会社で働いているのよ
雪乃が、そう言って口を閉ざしたのは自分の実家のことを思い出したからだろう 白坂家は当主が、変わってからずっと迷走状態だし テレビ局は、香月グループに獲られて本業の新聞社は低迷している 雪乃の母方の祖父は、白坂創介の事件のせいで引退するしかなくなり東京にも居られなくて、今は地方で暮らしているらしい 雪乃の母親も、料理評論家としての活動ができなくなり今は、不倫していた男の家に転がり込んでいると聞いた 香月家やミナホ姉さんに雪乃やマナの様子を問い合わせることも無い 雪乃の祖父や母親にとっては雪乃とマナは、白坂創介とともに死んだという認識になっている
あたしたちの家族には、本当に色々な事情を抱えている子たちが集まっているわ
克子姉が、グレースさんに言う
でも、あたし自身は自分の身体で稼いでもので、今の生活を得ていると思っているわかつて、あたしは悪い男たちに色々なものを奪われたわそれを今、取り戻して失ったものに見合った報酬を得ているのよ
よく判らないな
グレースさんには、克子姉が娼婦に堕とされていたという過去は想像できないだろう
わたしにはあなたたちが、この学校の一角を借りてパン屋ごっこをやっているようにしか見えない
オレはスーッと立ち上がって 克子姉が店頭から持って来た売り上げの入った手提げ金庫を持って来る
これを見てくれこれのどこがごっこなんだ
オレは、金庫を開いて中を見せる パンは完売した金庫の中には、千円札とコインがたんまりと入っている
そんなの大した金額じゃないだろう
グレースさんは、そう言う
ああ、パンなんて安いし客はみんな学生だからね見ての通り、1万円札なんて1枚も無い昼休みだけの営業だし、そんなに儲かっているとは言えないよな
だからごっこだと言っているんだ
グレースさんは、強い目でオレを睨む