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 木下さんの声に、車窓の外を見るとああ、向こうに学校らしい建物が見える

一度停めまーす

 そしてオレたちを乗せたバンは、中学校の正門が正面に見える場所を探して道路の路肩に停車する

大丈夫です工事業者さんが、早朝に時間調整で道端に車を停めていることはよくあることですからー

 木下さんは、そう言いながら小さな双眼鏡を取り出す  正門の様子を見る

まだ早朝ですから登校する生徒は、そんなにいないですね監視カメラ、確認しました門の右上のポールに付いてますねそれから学校の敷地内の左奥にあるのも、カメラですね今、絵に描きます

 と木下さんは、スケッチブックを取り出し、正門の周辺の状況をさらさらと描いていく  松下美樹さんが口を開く

さっきから、ずっと思っているんですけれど

んー、何っ

 バンのシートの隣に座っている寧が、美樹さんを見る

わたしの中学校のことなのにどうして、あなたたちはわたしに聞かないんですか

 オレたちはこれまで美樹さんから、何一つ彼女の中学に関することを聞いていない

ああ、あんまり意味がないことだからだよっ

で、でもわたしが毎日通っている学校のことですよ

 美樹さんはすっかり不安になっているオレたちの心の底が見えないことに

それは、そうだけどっ美樹さん、この時間に登校したことって何回あるっ

今は朝練があるような部活の子しか、まだ登校していない朝の早い時間でしょっ美樹さん、この時間に正門通ったこと何回ある

 朝練があるのは運動部だろう  美樹さんは運動部員ではない

美樹さんから情報をもらってもそれで、逆に変な思い込みをしちゃうとマズイからさっだったら、何の情報も無しに、どんな状況にでも対応できるようにした方が良いと思うんだよねっ

 寧が、そこまで言うと

はい、できましたーカメラはこことここです変に意識する必要はありませんが、カメラにはっきり顔が映らないようにして下さい

 木下さんが正門の周囲の状況を描いたスケッチブックを、オレに渡してくれる  オレは、寧とイーディと見てカメラ位置を確認するとスケッチを最後部に居る黒瀬安寿にも見せる

イズミは見なくていいていうか、お前は顔を出すなオレが良いと言うまで隠れていろ

 イズミがスケッチを覗きこもうとするから、そう命じる

イズミさんしばらく隠れていて下さいね

 助手席から月子が振り向いて、イズミに巫女の力で暗示をかける  イズミはバンの荷室に伏せて隠れる

それと残念ながら、今は正門が、この車が通り抜けられるほど広く開いてませーん

 確かに今は、生徒が数人入れるぐらいしか開けられてない

やっぱり、カメラがある正門のところは、するするするーっと抜けちゃいたいので安寿ちゃん、出動でーすっ

 木下さんが黒瀬安寿を見る  中学校の体育ジャージを着ている黒瀬安寿が正門を車が通れる幅に開けてオレたちは、一気に車で学校の敷地に入り込む  そういう作戦で行くんだな

そんで安寿ちゃんは、悪いけれど徒歩で柔道場まで来て下さーい目立ちますから、走らなくていいですだけど、5分以内にわたくしたちに合流して下さーい

 黒瀬安寿はバンの荷室の後部から、スライドドアの方へ移動する  この子も警護役としての教育を受けてきているから中学校の中の建物の位置なんかは、すでに把握している

何かあればフォローするノネダカラ、落ち着いて行くネ

 イーディに気合を入れられて黒瀬安寿は、スライドドアを開けて車外へ  正門に向かって目立たないように、ゆっくりと歩いて行く  安寿の前にも、登校中の制服姿の男子生徒が一人歩いていた  後ろには生徒はいない

ウーン慌てないで、良いテンポで歩いているけれどアンジュの歩き方は、綺麗すぎるネ

 イーディの言う通り体育ジャージ姿なのに、黒瀬安寿の歩く姿には気品があり過ぎた

あの子、夏前まではスイスの上流階級向けの寄宿学校へ居たでしょっ

 寧の言う通り黒瀬安寿は、名家令嬢の石上瑞希のお付き兼警護役として、スイスの学校に居た

そういう学校だと綺麗に歩くためのウォーキングの授業まであるっていうからっ

歩きが綺麗なのは良いことだけど普通の中学生っぽくは見えないよな

 オレは黒瀬安寿の揺れる小さなお尻を見ながら、そう感じた

後で色んな歩き方について、アンジュにレクチャーしておくネ

 イーディはニューオリンズの暗殺教団の出身だからそういうこともマスターしている

ん、着いたね

 黒瀬安寿が中学校の正門に到着する

あの子きちんと、他の生徒が完全にいなくなるタイミングになるように歩きを調整してました感心感心でーす

 うんうまい具合に、前後の登校していく生徒が途切れた時に、正門に着いた  そのまま、黒瀬安寿は正門の端に手をかけ

足を踏ん張ってぐいいっと押して

 大きな門がゆっくりと、開いていく

こっちもスタートします

 木下さんがバンのエンジンをぶるるんと始動させ  ゆっくり、走り出す  低速で

黒瀬安寿が通れるぐらいに門を開けたところで

するりと正門を通り抜けようと

おいっ

 見ると門の左側外からは死角になっていた方から、中学校の教師らしい巨漢の男が黒瀬安寿に向かって、ドカドカっと走って来る

勝手に門を動かすなッ

生活指導の大谷先生です

 バンの車内で松下美樹さんが言った

あちゃー、登校してくる生徒が見えないところに隠れて服装とか持ち物とかチェックしてたんだねっ!

 怖そうな先生だマズイな

木下さんそのまま車を進めて、正門に入り込んだところで車を停めて下さいっ

 月子はそう言うと急いで、助手席の窓を開く

らじゃーっスっ!

 木下さんは、バンをグっと加速させて生活指導の教師と黒瀬安寿の間に、車を突っ込ませ

あらよっと!

キキキキキーっと急ブレーキをかけて停車させるッ!

なっ、何なんだっ

 大谷教師の注意が黒瀬安寿から、オレたちの車に移る

おはようございます水道の点検に参りました

 月子はそのまま、助手席の窓から大谷教師に話しかけた

す、水道

はい柔道部顧問の山下先生から、柔道場で水漏れが起きているかもしれないから点検するようにと

 月子の力が発動する

そのことは、大谷先生もご存じですね

 生活指導の教師は

ああ、ああ聞いてるうんそうだ柔道場の件はああ

 記憶を書き換えられていく

はいだから、この車が中に入ることは問題ありません点検は、ほんの30分で終わりますその間だけこの水道工事会社の車が、校内にありますけれど何の問題もありません