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そうだな打ち合わせのためだけに、ミナホ姉さんにお屋敷に来てもらうのも悪いし

 芸能プロの受け取りにミナホ姉さんも来て欲しいとお願いしたのはオレだ  打ち合わせぐらいは、オレの方から行くべきだ

待ってあたしが連絡するからっ

 寧は自分のスマホを取り出して、ミナホ姉さんに電話を掛けた

渡哲也さんが亡くなりましたが

某テレビ局のニュースで刑事ドラマへの出演で人気が出て大スターになったと言っているものがありまして

石原プロに入る前の日活の映画で主演映画が山ほどあることはスルーなのかと驚きました

簡単に調べれば判ることさえ調べないというか、調べる手間を嫌がる

最近のテレビは本当にダメになっていると思います

1467.芸能界編 写真が2枚

・木下涼子/香月セキュリティサービスのトップエリート警護人元、バンバルビー3いつもニコニコしているが、粉砕フレイルで誰でもブッ倒す怖い人最近、主人公の専任警護人になったまだ処女ボス

はーい、着きましたー

 運転席から、木下さんが言う  車のフロントガラスの向こうにいつもの駅前ホテルが見えた  寧がミナホ姉さんに電話してから約30分  昨夜は、黒いリムジンで来たけれど今朝は白い、業務用のバンだ  木下さんは車を昨夜と同じ、地下駐車場に車を停める

はいっ、みんな降りてっ忘れ物ないようにねっ

 寧を先頭に、オレたちはバンを降りた  松下美樹さんは、大事そうにヴァイオリンのケースを抱えて車の外へ出る  この子にとって、このヴァイオリンは亡くなったお父さんとの思い出のある大切な物だからお屋敷に置いておかずに、ここまで持ってきた  オレたちのことを、まだ完全に信用していないということもあるし

ええっと602号室に行くよっ

 このホテルの地下には黒い森の娼館の別館があって、ミナホ姉さんはそこで美里たち娼婦候補生たちの研修をやっているんだけれど  イズミや松下美樹さんを、極秘施設に連れて行くわけにはいかないから  昨夜に続いて、今朝もホテルの上階の部屋を用意してくれたようだ  まあ、このホテル全体がミナホ姉さんの所有物だからセキュリティは完璧なので、心配は無い  オレ、寧、木下さん、イーディ、月子、イズミ、松下美樹さん、黒瀬安寿の8人でエレベーターに乗って、6階へ上がった  指定された部屋に行って、ドアをノックするとミナホ姉さんが、オレたちを出迎えてくれた  いつものごとくオレたちの車が、ホテルの敷地内に入った時から、監視カメラで観ていたんだろう

ご苦労様中に入りなさい

 602号室は、小規模のパーティ用の個室のようだ  大きなテーブルの周りに、すでにオレたちり人数分の椅子が用意されていた

好きなところに座りなさいお腹が空いていたら、ルームサービスで何でも注文すれば良いわメニューは、そこにあるから

 木下さんが、早速メニューを開く  オレたち全員が椅子に座るとミナホ姉さんは

どうだった松下美樹さんあなたの音は、昨日と変わったのかしら

 14歳のヴァイオリン少女に尋ねる

どういうお話ですか

 美樹さんは質問に質問で答えた

ほら音楽物の映画やマンガなんかで、登場人物がつらい人生体験をすると演奏が上手くなるっていうような展開があるじゃないよりつらい思いを経験して来た人の方が、演奏の中身が濃くなるみたいな話わたしはああいうのが大嫌いなのよ

才能というのは、そういうものではないから才能のある人は、どんな小さな体験でも自然に自分の演奏に生かしていくし才能の無い人は、どんな感動的な体験をしても自分の演奏に反映させることはできないわ

 美樹さんはミナホ姉さんの話を、真剣な眼で聞いている

逆にあまりにもつら過ぎる体験をしてしまった人間は、感覚がマヒしてしまって、芸術的な活動なんてできなくなるわ人間の感受性には限界があるから強すぎる刺激のせいで壊れてしまうと、甘いのも塩辛いのも判別できなくなるのよ

 ミナホ姉さんは白坂創介によって誘拐され、無理矢理、娼婦に墜とされた  妹さんを殺され自分は、子供の産めない体にされて  16年間娼館という地獄の中で生きて来た

わたしはあなたが自分の経験して来たことを、自分の演奏の向上に昇華できる人であって欲しいと思うわ

 美樹さんがこの2日間で体験したこと  祖父との和解と、ヴァイオリンを続けることができるようになったこと  姉の真樹がオレとのセックスで処女を失う様子を全て観たこと  そして、姉が変わっていく様子も、逐一見た  さらに、今朝の交際相手との決別  美樹さんが恋だと思っていたものが恋でも何でもないものでしかなかったと、気付いたこと

わたしは自分が状況に流されやすい、馬鹿な娘だということを心の底から、思い知りました

 彼女は男に交際を迫られて、自分が相手のことを好きなのかどうか確認できないまま交際することを受け入れてしまった

そうねあなたは愛していない男とお付き合いを続けて、男の求めるままセックスも体験していたでしょうね公に出会わなかったら

 ミナホ姉さんは率直に言った

そうですね多分、わたしは流されて、そうしていたと思います

 美樹さんも素直に答える

そして、今公に身を任すことになるたとしたらそれは、それで、やっぱり今の状況に自分が流されているだけだではないかと感じているのかしら

 ミナホ姉さんの言葉に、美樹さんは狼狽する  今の美樹さんは、サクラギ・ケンイチとの交際を流されるまま受け入れてしまったことを恥じて猛烈に反省しているから  このまま、オレの女になることもまた、自分が流されているだけではないかと不安になっているんだ

わたしは自分という人間が信用できなくなっています自分の愚かさを、とことん思い知ったので

 美樹さんは、そう答えた

自分という人間が判らなくなってしまった時は自分の音楽に聞いてみるという方法もあるわよ

 美樹さんの音楽ヴァイオリンの演奏

自分のカ撫でる音が、過去と現在で、どう変わったかそれが感じられたら、あなたがこの先進むべき道も見えて来ると思うわ

今は演奏することが、怖いんです

 ヴァイオリンケースの表面を撫でながらそう言った

変わってしまった自分を知るのが何だか恐ろしくて

 それからもう一度、真っすぐにミナホ姉さんを見る

でもわたしが進むことのできる道は、一つしかないということも判っていますですからもう少しだけ、心を整理する時間をただけませんか

 美樹さんももうオレの女になって、オレたちの家族になるしかないということは、理解している  それしかヴァイオリンを続ける道はないし拒絶したら、姉とも離れ離れになってしまうということも判っている  ただ頭が理解していることに、心が追い付いていない  美樹さんは、まだ14歳の幼い少女だから  ミナホ姉さんが今度は、オレに尋ねる