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 オレは素直に自分の失点を認めた

覚えておきなさい世の中には本当に愚かな人たちもいるけれど、愚かな人たちの愚かな行動にも、何かしらの意味や理由があるのよだから自分が関わる人間については、どんな相手でも、相手のことを知ろうとする努力を怠ってはダメなのよ自分の思い込みだけで、相手について調査する努力を疎かにしてはいけないのよ

 ミナホ姉さんの言葉が心にしみる

そうだねオレが間違ってたごめん

 オレはミナホ姉さんに聞けば、昨夜の段階でもイズミについての詳しい情報を教えてもらえたはずなのに  オレは、イズミについて知ることを怠っていた

では、教えてあげるわ五十嵐イズミさんはねお祖父様が、世界的に有名オーケストラ指揮者なのよ五十嵐ハジメさんと言ってね

 祖父の名前が出た途端イズミの顔が真顔になる

お父様は、五十嵐キヨシさん日本で活躍なさっているオペラ歌手よお母様の五十嵐ヒデミさんも、若い頃はオペラ歌手をなさっていたわ現在は、音楽大学で声楽を教えていらっしゃるわつまり、五十嵐さんの家は日本の音楽界では、知らない人はいない音楽一家なのよ

 イズミのファイルを広げてミナホ姉さんは、そう言う

そんなこと茉莉花も真樹も教えてくれなかったよ

 イズミの家族が、音楽の世界では有名な人たちだなんて

それはそうよあの子たちの通っている音楽科高校には、そういう家の子は何人もいるんですもの

 ミナホ姉さんは、苦笑した

むしろあの子たちみたいに、両親が音楽関係の仕事ではない子の方が珍しいはずよイズミさんのご家族よりも、さらに有名な音楽家の娘さんたちが何人も居るのよ

ああ音楽科の高校に子供を通わせている家となると、お父さん、お母さんどころかお祖父さん、お祖母さんの代から音楽家なんていうのは、よくあることなんだねっ

 真樹や茉莉花にとってはイズミの祖父や両親が音楽家だということは、わざわざオレに話すようなことではなかったなだろう  オレが、イズミについて詳しく二人に聞いてないんだから二人が話すわけがない  特に茉莉花は最初からイズミを、自分と真樹のペットにするつもりで連れてきているし  そうする前に、ミナホ姉さんにイズミのことを相談して許可を得ているから  オレが聞かない限り、茉莉花の方から話すことはない  イズミの家族についての情報が、オレたちにとって有益なものならミナホ姉さんが、機会を作ってオレに話すはずなんだから

あ、あの祖父や、両親には迷惑が掛からないようにして欲しいですいえ、して下さいですニャン

 困惑した顔で、イズミがミナホ姉さんに言う

判っているわあなたのお祖父様やご両親には何の問題も生じないようにするから安心なさい

 ミナホ姉さんは、イズミにそう告げる

というよりイズミさんは、公と朝から一緒に行動してみて判ったでしょ公が身内には絶対に危害が及ぶようなことはしない子だってことは

 イズミはオレが美樹さんのために、美樹さんの中学へ乗り込んだ様子を見ている  オレが家族になる子のためには、どんなことでもするということを  そしてイズミもすでにオレたちの家族の一員だ  ペットという身分だけど

それが理解できたからこそそろそろ学校へ行かせてくれなんて、公に甘えてみたんじゃないの

それはそうかもしれませんですニャン

 イズミは、暗い顔でちらりとオレを見る  そうか、こいつは空気が読めないのでなく今なら、多少甘えたことを言い出しても許されるんじゃないかと感じて  それで突然、あんなことを言い出したのか

心配しなくても、大丈夫よイズミさんが昨日、寮に戻らなかったことも茉莉花たちと一緒に学校に戻らなかったことも、今日の午前中の授業に出ていないことも全て、わたしたちの方で正当な理由を作って、学校側に話すからこの件でイズミさんのお祖父様やご両親に迷惑が及ぶことは無いしイズミさんが、お祖父様やご両親から叱られるようなことにもならないようにするわ

イズミお前、それで早く学校へ戻りたかったのか

 オレは、ようやくイズミの心を理解した

昨夜や今日の朝は公くんさんが怖くて、言い出せなかったですニャンでも、できれば早く学校に帰して欲しいですニャン

 イズミが言う

わたしが寮に戻らなかったことや、授業に出てないことで変な噂になって、お祖父様や両親の名前に傷をつけるようなことになるのが怖いですニャン

 イズミは、昨夜の無断外泊や現在授業をサボっていることが問題になることを恐れている  特にそれが祖父や両親に知られることを

大丈夫よあなたの学校は今は、真樹さんが香月家の奨学生に選ばれたことで大騒ぎになっているわあなたはショックで体調を崩したことになっているし医師の診断書も付けてあげるわもう香月セキュリティサービスを通して、香月記念病院に話してあるから

 ミナホ姉さんは、そういう

それにね今から学校に行って、授業の途中に教室に入る方が目立つわよ最初の予定通りお昼前までは公と居て、お昼休みに学校に戻りなさいその方が自然に入り込めるから

 ミナホ姉さんは、イズミの心配をどこまでも理解して、事前に手を打っている

とにかく、祖父と両親には心配を掛けないように、お願いしますニャン

 イズミは、ミナホ姉さんに深く頭を下げた

イズミさんはお祖父様とご両親のことを、心から尊敬しているのね

はいもちろんですニャン

 イズミは困惑した表情で、そう答えた

イズミさんのお祖父様は、幾つかの音楽財団の理事もなさっているのよねだからイズミさんは、今が奨学生に選ばれる時期じゃないってことを知っていたのよ

 ミナホ姉さんの言葉に、寧が

ああだから、イズミちゃんは茉莉花ちゃんが真樹ちゃんたちに香月家の音楽奨学生になれるかもしれないって話したことを、変だと思ったんだねっ

 なるほどとうなずく  今回のことの発端はお父さんが突然亡くなった松下姉妹が、経済的な問題で、音楽の勉強を続けられないかもしれなくなったことだった  それで、茉莉花がオレに松下姉妹を紹介して、何とか経済的支援を得られるようにならないかと頼もうとしたこと  そして、オレが動く前にミナホ姉さんと瑠璃子が、松下姉妹が香月家の文化財団の奨学生になれるように働きかけてくれていた

普通はどこの奨学金制度のある団体でも、今は来年度からの奨学生を選定する時期であって年度の途中なのに、松下さんの姉妹を特別に奨学生にしてくれるところなんて有り得ないものね