まあ俺も嫌いな奴に進んで親切にしようとは思わない。
むしろ嫌がらせをしようとまではいかなくても、可能な限り会わないで済む様に心掛けるに違いない。つまり硝子にもそういう心理が該当するという事なのだろう。
わかりました。二人だけの秘密にしましょう
そうしてくれると助かる
思ったよりも理解が早くて助かる。
硝子は俺が想像するよりも遥かに物分りの良い。頭の良い子なのかもしれない。
そういえばもう一つ、頭が良さそうな要素があった。
所で武器解説、全部覚えているのか?
はい。私、説明書などは熟読する性質なんです
付き合いは短いが、それはなんとなく分かる。
説明は難しいが、外見とは違って携帯電話とかパソコンとか普段使わない知識まで知っていそうな、使いこなせている印象を受ける。
では、売却時には数を減らし、一部は保管して、あるいはお店に売ると良いのではないでしょうか
突然流通量が増えれば勘付く奴も出てくるだろうしな
しかし、私は幸運かもしれません
そうか?
むしろ二週間分の努力をボス戦で使い切り、仲間も失った所から不幸だと思うんだが。
俺だったら一回不貞寝するレベルだ。
数少ない同胞の方、しかも絆さんの様な方と知り合えたのですから。これは離脱を促した方々に感謝しなければいけませんね
硝子は実際はしませんが』と付け加え、柔らかな笑みを溢す。
なんというのか、こいつ天然のタラシ臭を感じる。ちょっとドキっと来てしまった。
ですが絆さん。女の子なのですから言葉はもう少し選んだ方が良いかと
はぁ。そこからか
俺は自分が訳あって外見は女の子だが中身は男である事を説明し、できれば男として扱って欲しい旨を伝えた。
結局話が付いた頃には陽は傾き、夕陽で辺りは紅に染まっていた。
補足だが、二人で狩りをしたという事もあるがエネルギー効率が今までとは比べ物にならない位上がったので硝子様々としておく。
第二都市
第二都市ラ・イルフィ。
では絆さんは紡さんのご兄弟なのですか
距離の関係で狩りを終えた俺達は第二都市に来ていた。
そして今日の戦利品を半分にしている最中にもしかして』と硝子が紡と俺の関係性について訊ねてきた。
普通気付くよな。名前的な意味で。
ああ、あいつ何か迷惑とか掛けなかったか?
いいえ、元気が良くてとても素晴らしい方だと思いますよ。都市解放戦では彼女がいなければもっと弱体化していたと思うので感謝してもしきれません
そりゃ良かった。紡はゲームとなると調子に乗る事があるからな。気に障る事があるかもしれないが、これから会う機会があっても気にしないでやってくれ
昼間の会話で同じ戦場にいたのだから接点はあるかもとは思っていたが硝子と紡が知り合いだとは。聞けば狩り場でも度々目撃していたらしいので、もしかしたら紡の方も硝子の事を知っているかもしれないな。
ともあれアイテム分配だ。
これはオンラインゲーム全体で言える事だが専用のシステムが無い限り、パーティーを組んだ場合、ドロップアイテムはメンバーで分けるのが基本だ。
ゲームによってはランダム分配で終わり、なんて事もあるので断言は出来ないが、どうやらディメンションウェーブは俺の良く知るアイテム分配形式の様だ。
残念ながらレアアイテムなどは入手していないので、普通に半分にして硝子に交換ウィンドウを表示させて渡す。
お手数を掛けてもらってすみません
何、戦闘ではかなり硝子に依存していたからな。これ位は任せてくれ
はい、ありがとうございます。絆さんのおかげで金銭的に恵まれそうです
そう言ってもらえると組んだ甲斐はあるな
解体武器様々だな。
ちなみに事前の打ち合わせ通り俺と硝子は意図的に解体武器の効果が分かる内容を口にしていない。いつ誰が聞いているか分からないからだ。
思ったがこれが普通のオンラインゲームなら攻略サイトとかで絶対に解体武器の効果が既に書かれているだろうな。
こういう所もセカンドライフって所なのかもしれない。
さて、硝子はこれからどうする?
そうですね。あれから二時間程経過しています。ですからマナを振って、もう一度行こうかと。もしよろしければ絆さんもご一緒にいかがですか?
言われて気付いた。
度々忘れるがスキル振りを俺は良く忘れる。
頻繁にステータスを開かないのも理由だが、これからは良く確認しよう。曲りなりにもスピリットというエネルギー&マナが重要な種族だしな。
そうだなそろそろ陽も落ちるが、理由でもあるのか?
八時、こちらでは20・00から翌朝に掛けてまでしか出現しない場所がありまして、エネルギー効率が大変よろしいんです
なるほどな足を引っ張るかもしれないが、硝子さえ良ければ一緒させてもらうか
私は絆さんとなら喜んで同行しますよ
そうして一時間の休憩を挟んで、もう一度狩りへ出掛ける事になった。
俺は一時解散の際に忘れないうちにステータスを確認する。
マナの振り忘れは困るからな。
エネルギー/19740。
マナ/1650。
セリン/109230。
スキル/エネルギー生産力Ⅷ。
マナ生産力Ⅴ。
フィッシングマスタリーⅣ。
解体マスタリーⅢ。
未取得スキル/エネルギー生産力Ⅸ、マナ生産力Ⅵ、フィッシングマスタリーⅤ、夜目Ⅰ、舵マスタリーⅠ、船上戦闘Ⅰ、クレーバーⅠ、高速解体Ⅰ。
取得していないスキルは七つだ。
舵マスタリーと船上戦闘は思い出すまでも無い。
夜目は名前の通り夜間に置ける視力低下を抑える効果と夜間戦闘における戦闘力に補正を掛けられる。取得条件は24時間以上夜に行動をしているだったか。
後ろ二つは昨日載っていなかったので、今日条件を達成したのだろう。
効果は。
クレーバーⅠ。
解体武器の初級攻撃スキル。
骨や関節を切断する際に大きな追加ダメージを与える。
一回の使用に50のエネルギーを消費する。
取得に必要なマナ200。
獲得条件、解体武器によるモンスターの討伐数が100体を超える。
ランクアップ条件、解体武器によるモンスターの討伐数が500を超える。
高速解体Ⅰ。
解体武器の自己支援スキル。
一定時間、解体に掛かる時間を早める効果を自身に付与する。
一回の使用に100のエネルギーを消費する。
取得に必要なマナ300。
獲得条件、解体武器でモンスターを100体以上解体する。
ランクアップ条件、解体武器でモンスターを500体以上解体する。
どちらも戦闘やフィールドで使うスキルだ。
クレーバーは言うまでも無く戦闘スキルなので狩りには必須と言える。